東日本大震災に見る企業の危機管理と広報調査 

2012年03月09日
経済広報センターは、2012年2月、経済広報センター、経団連の主要会員企業(152社)に「東日本大震災に見る企業の危機管理と広報調査」を実施した。

 東北地方太平洋沖地震から、間もなく1年が経とうとしているが、東日本大震災は、地震や津波による未曾有の被害のみならず、電力供給の制約やサプライチェーンの寸断という新たな問題も惹起させ、企業にとって自らの社会的責任の重大さを改めて認識するとともに、危機管理体制の再構築を迫る契機となった。
 そこで経済広報センターでは、震災後1年間を振り返り、各企業の危機管理体制の変化と震災後の広報対応を調査し、その結果を取りまとめた。

【調査結果(要点)】

・8割以上が「当日の広報部門の体制は十分だった」と回答

・「海外メディアから取材があった」が4割

・半数以上が「震災後、広報に関し危機管理マニュアルを見直した/検討している」

・「ソーシャルメディアに関して対応した」のは2割弱

・「震災で反省点や教訓があった」が76%


【調査結果の概要】

1.8割以上が「当日の広報部門の体制は十分だった」と回答 
 東日本大震災当日の広報部門の体制は十分だったかを聞いたところ、平日昼間の発災だったこともあり、82%が「十分だった」と回答した。「十分でなかった」と回答した13社では電話など「通信手段の確保」を挙げた企業が目立った。また広報担当者が出張・外出等で不在のため、十分な体制を取れなかったとしている企業が4社あった。

2.9割以上の企業にメディアから問い合わせや取材
 メディアからの問い合わせや取材を受けた企業は、93%。震災直後は人的、物的被害など被災状況の確認だったものが、その後復旧時期や経営への影響へと変わっていった企業が多い。製造業では、計画停電や放射線量検査に関する問い合わせもあった。また復興支援活動に関する取材も挙げられている。

3.「海外メディアから取材があった」が4割
 「海外メディアから取材があった」企業は、39%。取材内容は日本のメディアと変わらなかったと答える企業が多いが、取材は1回あるいは少ない回数で被災状況の確認のみだったと答える企業も数社あった。製造業では原発事故の影響に関する取材があったとする企業が目立つ。

4.半数以上が「震災後、広報に関し危機管理マニュアルを見直した/検討している」
 震災後、危機管理マニュアルを「見直した」あるいは「見直しを検討している」と答えた企業は52%。見直した内容は「情報開示にあたっての事前協議」「公表是非の判断」など判断に関するものから具体的な備品まで多岐にわたる。

5.半数以上が「震災後、広報に関しBCPを見直した/検討している」
 震災後、BCPを「見直した」あるいは「見直しを検討している」と答えた企業は54%。見直した内容として、本社機能喪失時の対応に関するものが多いほか、在宅での業務実施や通勤の可否を考慮した体制なども目立つ。

6.「ソーシャルメディアに関して対応した」のは2割弱
 「ソーシャルメディアに関して対応した」企業は18%で、被災状況や復旧情報などを積極的に発信した企業もあったが、多くは風評や賞賛などの監視と情報収集にとどまっている。なお、一部の企業では社員の安否確認等に利用した事例もあった。

7.4分の1の企業で業界団体と広報で「棲み分けを行った」
 業界団体と広報で「棲み分けを行った」のは23%。生命保険や損害保険など金融業界では、業界団体が商品に関する説明を行い、個別企業が個別契約に関する問い合わせを受けるなど、企業と業界団体の棲み分けを明確に行っていた。
 その他、業界団体で集約した情報を基に、取材対応の資料を作成したケースもあった。

8.従業員に対し社内報やイントラネットを通じ情報発信
 広報部門として、社内報やイントラネットを通じ、従業員に対し情報発信しているケースが多い。内容としてはトップのメッセージや被災状況、復旧状況、社外からの問い合わせに対するQ&A、業界他社の動向、顧客の反応など多岐にわたっている。

9.広報部門が被災地支援、社会貢献に関与したのは78%
 自社の支援内容、貢献活動について広報を行うだけでなく、CSRが別の部門の担当である場合であっても、多くの企業で広報部メンバーが積極的に参加していた。

10.「震災で反省点や教訓があった」が76%
 震災対応が長期化したことにより、勤務形態や情報発信頻度、通常の広報業務との切り分けなど様々な問題が生じていた。その他、業界を挙げての情報発信、迅速な情報収集、発災直後の土日の対応、写真等の記録保管、他社状況の確認などそれぞれの企業ごとにできなかったことへの反省点や、問題とはならなかったものの脆弱性を認識したものもあった。


【調査概要】
・調査対象:経済広報センター、経団連の主要会員企業(152社)を対象に実施。
・調査期間: 2012年2月21日~3月1日
・有効回答数: 71社(46.7%)
・調査方法: eメールまたはファックスによる回答選択方式および自由記述方式

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[経済広報センター]
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