2013年度(第35回)「当面する企業経営課題に関する調査」 

2013年10月31日
日本能率協会は、企業の戦略立案や経営課題解決に役立つ情報を提供するため、1979年から、国内主要企業の経営者を対象に、企業経営課題に関する調査を実施しています。今年度は2013年8月に実施し、全国の上場企業・非上場企業、計662社の回答を得ました。

また、ASEAN地域3カ国(インドネシア、シンガポール、タイ)の日系企業269社にも調査を行い、現地拠点マネジメントの実態調査を行いました。調査結果の主なポイントは以下のとおりです。

<主な調査のポイント>

1.経営環境への関心は、大手企業でグローバル対応、中小企業で国内の経済動向

2.経営課題のトップに収益の向上、次なる戦略へ転換の兆し

3.正社員の採用は一定数を確保、女性管理職30%は遠く及ばす

4.ますます進むアジア地域への拠点展開、一方で国内生産の減少傾向に歯止めも

5.堅調に進むASEAN事業、課題は「現地社員の能力向上」


<調査結果主要ポイント>
 
1.経営環境への関心は、大手企業でグローバル対応、中小企業で国内の経済動向
 

・業績回復基調のなかで、リーマンショック前 2007 年との比較で業績をきいた。製造業は「回復した」が4割、「回復できず」が5割で、いまだ出口の見えない企業も多い。業績とともに営業利益も増加しているものの、大手企業は事業ポートフォリオが複雑なため収益改善がやや鈍い。非製造業の業績は、大手企業の 65%が「回復した」とし、中堅・中小はそれに続く。

・2015 年度の業績見通しは、製造業の大手企業が 90%と圧倒的に「増加する」と強気。製造業の中堅、中小は、ややポイントは低いが、大手企業に続く。

・こうした業績概況の中で、「経営環境認識(機会と脅威)」のとらえ方に、大手と中小企業では違いがみられる。機会として、大手は「新興国」「アベノミクス」「国内景気」がトップ3で、中小は「国内景気」「アベノミクス」「新興国」が挙がり、チャンスとして捉えている外的要因に大差は見られない。

・しかし、脅威に関して差が出ており、大手企業で「チャイナリスク」「為替」「資源・原材料調達」。中小企業で「消費税」「国内景気」「為替」。


2.経営課題のトップに収益の向上、次なる戦略へ転換の兆し
 

・2013 年現在の「経営課題」に対する認識は、1位に「収益性向上」、2位「売り上げ・シェアの拡大」。昨年と順位が入れ替わり、収益性向上のポイント数は例年とあまり変化がないが、売り上げ・シェアの拡大が 13.5ポイント減となった。3位に「人材の強化」、4位に「新製品・新サービス・新事業開発」が挙げられた。

・昨年よりポイントを上げたのが、「財務体質強化」「現場力の強化」「品質向上」「高コスト体質の改善」「企業ミッション・ビジョン・バリューの浸透や見直し」「適切なコーポレート・ガバナンスの推進」。昨年より、大きくポイントを下げたのは「グローバル化(グローバル経営)」。

・規模別にみた経営課題では、大手企業はグローバル競争下で「グローバル化」、「事業基盤の強化・再編」、「高コスト体質の改善」を挙げている。また、将来を見据え、人材については規模を問わず上位に挙げる企業が多く、大手はグローバル経営に向けて、中小は採用や育成・多様化に向けた「人材の強化」が挙がっている。

・業績別の経営課題を見ると、高業績企業は“事業、人材”関連の経営課題におしなべて取り組む。


5.堅調に進む ASEAN 事業、課題は「現地社員の能力向上」
 

・ASEAN 地域での事業展開の現状は、日本での回答では 54.7%、ASEAN3 カ国からの回答では 68.4%が、順調であると回答している。特に新興市場でもあるインドネシアでは、その比率がより高くなっている

・現地での事業展開における課題としては、国内回答では「優秀な現地人材の獲得・育成・登用」(「かなり問題である」「やや問題である」の合計が 77.6%)が最上位となり、次いで「現地ニーズに対する的確なマーケティング」(同 65.9%)、「現地市場向けの商品・サービスの開発」(同 64.3%)が挙げられている

・現地市場に適応した商品・サービス・事業の展開を実行するために、現地人材を確保することが課題となっているものと思われる。

・3 カ国別の回答をみても、いずれも上位3項目のうちに「現地拠点の一般社員の能力向上」「現地拠点のマネジャーの能力向上」が挙げられていることからも、現地社員の能力向上が最重要課題となっていることがうかがえる。

・そのほか、国別の現地での課題の特徴として、インドネシアでは「現地の法律・課税制度等の変更への対応」、シンガポールでは「現地営業社員・販売代理店の営業力強化」、タイでは「現地拠点の経営幹部の能力向上」が、残る上位 3 項目に挙げられている。それぞれ現地の事業展開に応じた課題に直面していることが浮かび上がっている。


【調査概要】

「2013年度(第35回)当面する企業経営課題に関する調査」概要
■調査時期:2013年8月
■調査対象:全国の上場企業および非上場企業の計5,000社の経営者
■調査方法:質問紙法(郵送配布、郵送および電子メールによる回答)
■回答数・回収率:回答数662社、回答率13.2%

「ASEAN地域3カ国調査」概要
■調査時期:2013年8月~9月
■調査対象:インドネシア…ジャカルタ・ジャパンクラブの法人会員536社、シンガポール…日本商工会議所694社、タイ…JMAグループが接点をもつ現地日系企業866社の計2,096社
■調査方法:電子メール調査法
■回答数・回収率:全体269社、回収率12.8%(インドネシア…77社、シンガポール…120社、タイ…72社)
■調査の主要内容:ASEANの現地拠点対象の設問と、「当面する企業経営課題に関する調査」の一部設問を比較設問とした

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[日本能率協会]
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