IT 組織の成功要因に関する調査 

2012年11月12日
クニエとNTTデータ経営研究所は、共同で「IT 組織の成功要因に関する調査」を実施。本調査は、経営に貢献する IT 組織となるための成功要因を明らかにすることを目的に昨年度より開始し、2回目の今回は特に「経営に貢献する企業のIT組織・IT要員の実態」と「親会社に貢献するIT子会社の役割の実態」に着目して調査を実施し、IT 組織運営における成功要因を明らかにしました。

【主な調査結果】

1.経営に貢献する企業のIT組織・IT要員の実態

組織が経営に貢献するためには、取り巻く環境変化や組織特性に応じて、要員(ヒト)・資産(モノ)・費用(カネ)を適切にマネジメントすることが肝要であると一般的に言われています。本調査ではその中で、IT要員(IT組織)に着目し、IT 組織が十分に経営貢献できている企業(以下、「先進企業」と称す)と十分にはできていない企業(以下、「途上企業」と称す)に回答企業を分類した上で、要員の充足状況や組織強化施策の実施状況の違いを分析しました。

① IT戦略 / 投資管理機能のIT要員の質(要員スキル)と量(要員数)の充足度合いと、ITマネジメント機能のIT 要員の質の充足度合いが、IT組織の経営貢献に大きく影響している
「IT 要員の質や量の充足が経営貢献に寄与する度合いは、機能区分により異なる」という初期仮説の基、「機能区分別※のIT要員の質・量の充足状況と先進企業の割合の関係性」について分析した結果、以下2点が明らかになりました。
※本調査では、IT組織の機能を「IT戦略/IT投資管理」、「ITマネジメント」、「システム企画」、「システム開発」、「システム運用・保守」、「ユーザサポート」の6区分に分類しています。

 1. IT 戦略/IT 投資管理機能における要員の質・量がともに充足しているグループでは、それ以外のグループと比較して先進企業の割合が高い

 2. IT マネジメント機能における要員の質が充足しているグループでは、要員の量の充足状況に関わらず、要員の質が不足しているグループと比較して先進企業の割合が高い

一方で、他の機能においては、要員の質・量の充足状況と先進企業の割合には顕著な関係性は認められませんでした。

② 先進企業になるためには、IT組織やIT投資の成果の測定/評価に関する施策に取り組むことが有効である
IT組織やIT投資における成果の測定/評価に関して、以下の施策が先進企業になるために特に有効である(先進企業における実施率が途上企業における実施率より有意に高い)ことが明らかになりました。

1. IT部門のミッション達成度の測定/評価
2. IT部門やIT投資に対するユーザ/顧客満足度の測定/評価
3. 継続的なIT投資の費用対効果の測定/評価

また、本調査では、先進企業と途上企業における施策の実施率を基に、IT組織やIT要員に関する16施策を「成功要因」、「必須事項」、「共通課題」に分類した上で、それぞれの分類の特徴や実施の優先度等について考察しています。

③ 本社IT組織にIT要員を多く配置し、開発を含む主要なIT機能を主管していることが先進企業の大きな特徴である
ユーザ企業各社にとり最適なIT要員配置の判断材料を提供するべく、「IT投資額あたりのIT要員数と機能別構成比」の観点から、回答企業のIT要員配置モデルを作成しました。
その結果、先進企業は途上企業と比較して単位IT投資額あたりのIT要員配置数が多いこと、特に情報システム開発機能に多く配置していることが明らかになりました。

先進企業では、本社 IT 要員のシステム開発への主体的な関与により、自社の業務やシステムに関するノウハウの蓄積と上流工程へのフィードバックを強化することで、適確な IT 投資判断やシステム企画の実践に繋げているものと考察しています。また、本調査では、IT組織の組織特性※の観点から、本社IT要員配置について詳細に分析しています。
※ 本調査では、「業種」、「企業規模」、「ソーシング志向」、「IT投資姿勢」の4つの組織特性の観点から分析しています。

2.IT子会社の役割の実態

昨年度に実施した「2010年度IT組織の成功要因に関する調査」において、IT子会社のミッションが定まっているグループと定まっていないグループでは、事業の差別化や業務の高度化・効率化における親会社への貢献度に大きな差異が生じていました。そこでIT子会社のミッションが定まっているグループにおいては、親会社とIT子会社間でミッションを一致させる取り組みと成果を創出し経営貢献に繋がる有効な取り組みを実施しているという仮説を設定し、IT 子会社の役割に応じたミッションと、ミッションを一致させるための施策、更に、成果創出に有効な施策について調査を実施しました。

① IT子会社の役割に応じて親会社から期待されているミッションに特徴がある
IT子会社を 3つの役割(コストセンター型、サービスセンター型、プロフィットセンター型)に分類し、各役割別に親会社と IT 子会社が期待するミッションを分析した結果、役割に応じて求めるミッションの特徴が浮き彫りになりました。またグループ競争力の強化については唯一役割を問わず期待しているミッションであることも明らかになりました。

・コストセンター:ビジネス要求に廉価で上質なサービスを提供するミッション
・サービスセンター:グループ競争力を高めるために攻めと守りを担うミッション
・プロフィットセンター:外販を拡大しグループ全体の成長を牽引するためのミッション
・役割共通:IT活用によるグループ競争力の強化への提案

② ミッション一致に向けて有効な施策は、計画策定時に多く存在し、特にはIT中期計画等での定義などである
親会社とIT子会社の両者でIT子会社のミッションの認識を整合するために有効な施策を分析しました。その結果、計画策定時に効果のある施策が多く、特にIT中期計画や年次計画などの資料に明確にIT子会社のミッションを記し共有することが有効であると判明しました。また実行時においては親会社とIT子会社の社員をお互いに出向することなどにより、人材を流動化する施策も有効です。また、本調査では IT 子会社の役割別に有効な施策を分析しています。
 
③ ミッション達成による成果創出には、開発・運用プロセスに属する施策の実行が効果的である
IT子会社のミッション達成による成果創出に有効な施策は何であるのか、企画、開発・運用、共通の3つのプロセスに分類して分析しました。その結果、開発・運用プロセスに有望な施策が多く属しており、特にコストセンターでは「IT資産管理」、サービスセンターでは「開発・テスト」、プロフィットセンターでは「サービスレベル合意」に属する施策が有効であると判明しました。


【調査概要】
1. 調査対象: 東証一部、二部上場企業(約2,300社)、IT子会社(約400社)
2. 調査方法: アンケート形式(所定調査票の送付、または所定Webサイト回答による)
3. 調査期間: 2011年10月28日(木)~2011年11月22日(月)
4. 有効回答数:
 第Ⅰ部 IT組織の強化に関するアンケート
  ① 東証一部、二部上場企業 : 231社(約10%)
 第Ⅱ部 親会社とIT子会社間のミッション整合性に関するアンケート
  ① 東証一部、二部上場企業 : 40社(約2%)
  ② IT子会社と想定される企業: 37社(約19%)
5. 回答者の属性:
 各企業のIT責任者および担当者
  役職ベース : 取締役、本部長、部長、次長、課長、係長クラス
  担当職務ベース : CIOクラス、IT企画者クラス、IT管理者クラス

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