2013年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査 

2014年02月27日
ジェトロは2013年11~12月にかけて、ジェトロのサービス利用実績があり、海外ビジネスに関心の高い日本企業(本社)9,800社に対し、海外ビジネスへの取り組みに関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)を実施(有効回答数3,471社〔うち中小企業は2,791社〕、回答率35.4%)。

円高修正や国内景気回復の流れにも関わらず、日本企業の海外事業展開に対する意欲は引き続き高い水準にあります。輸出の拡大に積極的な企業の割合が増加をみせたほか、海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)についても、依然として6割超の企業が拡大を志向しています。海外事業展開先では、中国に対する様子見の姿勢とASEANへのシフトが鮮明となってきています。

【調査結果詳細】

(1)輸出:中小企業でより鮮明な輸出拡大への意欲
大企業、中小企業とも9割がアジア大洋州に輸出。輸出先は中国が最多(61.4%)。次いで台湾(50.1%)、タイ(47.7%)、韓国(46.5%)。
今後の輸出方針は、「さらに拡大を図る」企業の割合が増加(70.1%→77.2%)。輸出拡大意欲は中小企業でより鮮明に(67.3%→76.4%)。輸出拡大の最大の理由は「海外需要の増加」(78.7%)、次いで「国内需要の減少」(52.7%)。
12年末からの円安傾向により、3割弱(28.8%)の企業の業績が改善。2割強(22.9%)は悪化。大企業ではほぼ半数(49.1%)に業績改善の影響あり。中小企業では改善(23.8%)と悪化(24.8%)が拮抗。

(2)海外進出:海外進出意欲は高水準、ASEANシフトが鮮明に
64.9%の企業が今後も海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)拡大を志向。大企業、中小企業とも、前回調査より拡大意欲は低下したが、引き続き高水準。中小企業の5社に1社(21.2%)が「今後新たに海外進出したい」と回答し、海外進出意欲は強い。また、海外の拡大を図る企業は、国内も拡大を志向。
「海外進出の拡大を図る」最多の理由は「海外での需要の増加」。同理由を挙げる割合は増加傾向(11年度72.4%→12年度75.6%→13年度85.2%)にある。他方、「為替変動の影響回避」を挙げる割合は減少傾向。
今後、海外進出の拡大を図る国・地域としては、12年以降、全体としてASEANを挙げる割合が中国を上回った(機能別では販売と汎用品生産)。13年には、高付加価値品の生産でもASEANが中国を逆転。なお、国・地域別では中国(57.0%)、タイ(47.1%)、インドネシア(35.1%)、ベトナム(29.6%)の順。
国内外拠点・機能の再編では、ASEANへの移管が移管件数全体の46.2%を占める。国・地域パターンでは、「日本→ASEAN」への移管が最多(24.2%)。中国からの移管では、半数(52.2%)がASEANを移管先に選んだ。
拠点・機能の再編動向を経年で比較すると、中国からの移管比率が増加傾向(06年度8.6%→10年度16.4%→13年度21.9%)にある。移管先では、中国が減少傾向にある一方で(49.4%→32.8%→22.9%)、ASEANの比率が増加傾向(30.0%→33.6%→44.5%)。

(3)有望市場:市場としてもASEANシフトが鮮明に
日本企業にとっての有望市場を5年前と比べると、ASEAN諸国を挙げる回答の比率上昇が顕著(タイ、インドネシア、中国、ベトナムの順)。中国を有望視する割合は1.1ポイント減の51.3%へと低下。半数を超えて依然高いが、ASEANシフトが鮮明に。
輸出や海外進出にあたっての課題には、現地ビジネスパートナーの確保を挙げる比率が最多。海外パートナー発掘の手段としては、約半数が展示・商談会を活用。

(4)中国ビジネス:不透明さ増すも、市場としての重要性は維持
中国での「ビジネスリスクが高まった」とする回答は、13年8月時点より上昇したが、反日デモ直後の13年1月時点よりは低下(69.8%→52.2%→59.3%)。一方、ビジネスへの影響については「影響はない」との見方が41.7%に拡大。
今後、「既存ビジネスの拡充、新規ビジネスを検討する」割合は、過去最低の水準(54.6%)に低下。「まだ分からない」との回答が過去最大の15.6%に。
中国ビジネスを拡大・維持する最大の理由は、「中国の市場規模、成長性」(73.0%)が依然として首位。中国ビジネスの縮小・撤退を検討する最大の理由は「生産コストなど製造面で他国・地域より劣る」が首位に浮上(49.3%)。「カントリーリスクの高さ」は低下(60.0%→42.3%)。

(5)新興国ビジネス環境:新興国ビジネスはリスクへの留意を
新興国のビジネス環境上の魅力・長所としては、全ての対象国で「市場規模・成長性」が最多。アジアでは人件費の高騰が指摘されるものの、「人件費の安さ、豊富な労働力」への評価も依然としてある。
新興国でのビジネスリスクについて、中国は「政情リスク」「知的財産」「人件費」など9項目で回答率が20%を超えた。「インフラ」「法制度」「政情リスク」は、多くの新興国で問題点として挙げられている。
新興国のビジネスリスクについて、前年度調査との比較では、「為替リスク」への認識が全般に高まる。中国は、「為替リスク」「人件費」「環境汚染」について、前年度調査との比較で、リスク認識が高まる。

(6)自由貿易協定(FTA):FTAの活用が進む
日本の発効済FTA利用率(輸出入)は年々上昇(42.9%)。他方、第三国間で締結されたFTAについては、タイ・インド、AFTA、ASEAN・インドの順に利用率が高い。インドを締約国とするFTAが多く活用されていることが特徴。
日本からの輸出では、チリやタイとの二国間FTAの利用率が高い。日本からの輸出における問題点は、「輸出のたびに証明書発給申請が必要であり、手間」が最多。

(注)本調査はジェトロメンバー企業(ジェトロの会員制度への加入企業)を対象に2002年度から開始し今回で12 回目。前年度調査に続き、今回も対象企業を拡充して実施(ジェトロメンバー企業3,397社に、メンバー以外でジェトロのサービスを利用した実績のある6,403社を追加)。

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[ジェトロ]
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