旭化成ホームズは、侵入窃盗被害リスクが比較的高いと言われる低層賃貸住宅について、特に女性単身居住者の防犯意識を把握して防犯設計の向上・促進に役立てるための調査を行い、結果を調査報告書「ひとり暮らしの安全・安心~匿名コミュニティによる低層賃貸住宅の防犯~」としてまとめました。

今回の調査では、当社が2008年に発売した女性専用防犯賃貸住宅「ヘーベルメゾン サフォレ」の入居者を中心に、単身居住者のコミュニティ意識や犯罪不安の把握に努めました。その結果、防犯カメラやオートロックなどの防犯設備が安心感を高めるということについては評価が高いものの、防犯設備だけで犯罪を防ぐことができるとは考えていないことが明らかとなりました。また、低層賃貸住宅に住む一人暮らしの女性の約6割が、シェアハウスのような居住者同士が会話をするほど密接なコミュニティ関係は望まないが「名前は知らなくても顔がわかる人がいるとなんとなく安心」と考える層と推測され、「顔を知っていれば何かの時には助け合える」と期待していることがわかりました。本調査では、このような匿名でつながる緩やかなコミュニティを「匿名コミュニティ」と名付け、その特徴を調査しています。

【調査結果概要】

(1)女性専用賃貸住宅の評価

◆現状の住まい全体の満足度では、当社防犯メゾンの評価は一般の低層・中高層賃貸に比べて高く、中でも女性専用サフォレが最も高い評価を得ました。

◆女性専用サフォレに住んでいる人は、フロア内の男女混合で暮らすことには半数超が抵抗感を示しますが、1棟全体ではなく女性専用のフロアという運用でもあまり抵抗感がありませんでした。

特に、隣人が女性であってほしいというニーズは9割以上と高く、自分の周囲の居住者は女性であってほしいという希望が強いことが判明しました。

◆一方、一般賃貸の女性居住者は男女混合フロアに対する抵抗感が1~2割と低く、逆に1棟全体女性専用の運営に対する抵抗感は3~5割と高くなることがわかりました。これらのことから、女性専用の運用については賛成派と反対派の両方が存在しており、ある程度限定された賛成派の人が女性専用賃貸住宅に集住していると言えます。


(2)住まいの安全・安心の評価、防犯設備の限界と誤解

◆現状の住まいの犯罪に対する安全性の評価は、男女共に当社防犯メゾンでは8割以上が安全と評価しましたが、一般低層では5割に満たない結果となりました。このような評価となった要因の一つとして、防犯設備の充実度の差が考えられます。当社防犯メゾンではほぼ100%設置されている設備が、一般低層では3割程度しか設置されていないからです。防犯設備が安心感を高めることについて、その設備が設置されている建物の居住者は概ね高く評価しています。特に、防犯配慮賃貸住宅の女性居住者によるカメラ付きインターホン、オートロック、住戸玄関の2ロックなど外部訪問者の接近防止設備に対する評価は高く、いずれも9割以上が安心につながると評価しました。

◆一方、多くの人が防犯設備で犯罪を防ぐことはできないと考えており、特にストーカーのような特定の意志を持った接近については、約7割の女性がオートロックやホームセキュリティでは防げないと回答しました。

◆防犯設備の効果については誤解が多いこともわかりました。例えば、ホームセキュリティの一般的な契約内容における通報後の到着時間が「25分以内」ということを認識している人は2割程度しかいませんでした。また、泥棒の侵入手段として最近あまり見られなくなったピッキングについて、現在も多いと誤解している人は6割近くに上り、2ロックに対する高い評価もこのような誤解から生じている可能性があります。


(3)建物の管理状態や防犯環境設計の評価

◆防犯設備以外の要素では、建物の管理状態の良さも安心感を高めるものとして高く評価されています。共用部の管理・清掃状態の良さは、女性の9割以上が安心につながると評価しています。

◆外構などの防犯環境設計についても同様に高く評価されています。例えば、道路からの見通しの良さについては女性の9割近くが、前面道路の人通りの多さは8割近くが安心につながると評価しています。

◆また、道路から室内が見えないことについては、女性の8~9割が安心につながると評価しました。これらのことから、外部からの見通しの確保と併せてプライバシーの確保が居住者の安心につながることがわかりました。


(4)コミュニティに対する志向性(匿名コミュニティ志向の特徴)
賃貸住宅の居住者同士がどのような関わり合いを希望しているかという「コミュニティに対する志向性」について調査しました。

◆シェアハウスのように共用部で居住者同士話ができるとよい、と考える人は男女ともに2割程度に過ぎませんでした。(このような考え方を対面コミュニティ志向と名付けました。)

◆しかし、残りの8割が居住者間の関係を否定しているわけではありません。名前は知らなくても顔がわかる人がいるとなんとなく安心、と考える人が女性では5割近く、男性でも4割超いました。このような考え方を匿名コミュニティ志向と名付け、それ以外をNONコミュニティ志向として、その差を分析しました。どちらとも言えない、とした回答者の半分を匿名コミュニティ志向と仮定すれば、匿名コミュニティ志向者は全体の約6割いると推測されます。

◆顔を知っていれば何かあった時に助け合える、と考える人は、対面志向・匿名志向層の女性では9割前後に上るのに対し、NONコミュニティ志向女性では2割弱と大きく異なる傾向が見られました。

◆匿名コミュニティ志向層の特徴として、直接的なコミュニケーションを避ける傾向があります。匿名志向女性の約7割が話しかけてくる居住者を嫌と感じ、部屋を訪ねてくる居住者については9割以上が嫌と感じています。

◆匿名志向女性の9割近くは住民同士の挨拶をすると回答しており、ゴミ出しなどのマナーを守る意識も高いことや、他の居住者にも同様のマナーを期待する傾向にあることがわかりました。また、犯罪と思われる非常時の通報に対しても協力的な傾向が見られました。


【調査概要】
1.調査名称
ひとり暮らしの安全・安心(匿名コミュニティによる低層賃貸住宅の防犯)調査。
2.調査目的
防犯リスクが比較的高いと言われる低層集合住宅における安全性や安心感の向上を実現するために、居住者の意識を把握し、低層集合住宅の特性に合わせた防犯手法を提案すること。
3.調査方法・調査対象期間・調査対象者など
※サフォレ=当社供給の女性専用防犯配慮賃貸住宅
(1)個別インタビュー調査
2010年8~9月 サフォレの単独居住者:女性4名
2011年12月~2012年2月 一般賃貸住宅(当社供給以外)の単独居住者:女性12名、男性10名
(2)グループインタビュー調査
2013年5月 サフォレの単独居住者:女性4名
2013年5月 一般賃貸住宅の単独居住者:女性5名
2013年5月 購入した分譲マンション(一般物件)単独居住者:女性6名
2013年5月 シェアハウス(一般物件)単独居住者:女性6名
(3)アンケート調査
2012年12月 防犯メゾン(サフォレおよび当社供給の男女混合防犯配慮賃貸)の単独居住者:女性196名、男性43名(内、サフォレ居住女性149名、男女混合物件居住女性47名、男性43名)
・調査方法は郵送アンケート(調査物件所在地は東京都39棟、神奈川県3棟)
2013年12月 一般低層(3階建て以下)集合住宅の単独居住者:女性150名、男性150名
・調査方法は、調査会社アンケートモニターへのウェブアンケート(調査エリアは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県(各都県とも一部の市区))
2013年12月 一般中高層(4階建て以上)集合住宅の単独居住者:女性150名、男性150名
・調査方法と調査エリアは一般低層集合住宅と同じ

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
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