成人の運動・スポーツライフに関する調査 

2013年02月26日
笹川スポーツ財団(SSF)は、『スポーツライフに関する調査~スポーツ活動に関する全国調査~』で、わが国の成人の運動・スポーツの現状を明らかにしてきました。1992 年から調査を開始して 11 回目、20 年目の節目となる今回、報告書の内容を改編し、新しい「スポーツライフ・データ」として発行することとしました。
2011 年のスポーツ基本法の施行、2012 年のスポーツ基本計画の策定を受け、わが国のスポーツ政策は大きく変わろうとしています。このような情勢の中、メイン・トピックは「健康・スポーツ政策の現在地」と題して、SSF が蓄積してきた運動・スポーツに関するデータから、国が計画に掲げた目標値を検証しています。
また、SSF スポーツライフ調査委員によるトピックとして「運動・スポーツを行う目的」「健康習慣と運動・スポーツの関係」「運動・スポーツを行う場所」「観戦型スポーツの現状から」「スポーツボランティアの現在地とその特徴」「スポーツとソーシャル・キャピタル」「世帯年収と運動・スポーツの関係」と幅広い視点から運動・スポーツの現状を明らかにし、今後の展開を考えるうえでの基礎資料としています。

<調査のポイント>

【SSF の視点 - 「スポーツライフに関する調査」からみる健康・スポーツ政策の現在地】
1)スポーツ基本計画に掲げられた「スポーツ実施率」 その目標値の問題点とは?
2)人々はスポーツ振興のために toto を購入しているのか? -宝くじの購入者との関係-

【調査結果】
1)「アクティブ・スポーツ人口」が初めて 20%を突破し、定期的な運動・スポーツ実施率も過去最高に
2)スポーツボランティアの実施率は過去 18 年間変化せず
3)「サッカー日本代表試合」の観戦者は1.5倍、観戦希望者は2倍に増加。なでしこジャパンも上位にランクイン


【結果の詳細:SSF の視点】

1)スポーツ基本計画「スポーツ実施率」の目標値の問題点とは?

スポーツ基本計画に掲げられた成人の「スポーツ実施率」の政策目標は、「週 1 回以上を 3 人に 2 人(65%程度)」「週3 回以上を 3 人に 1 人(30%程度)」である。
SSF 調査の結果をみると、2012 年は「週 1 回以上が 59.1%」「週 3 回以上が 40.7%」となっている。週 1 回以上の実施率は目標に迫っており、週 3 回以上の実施率は既に目標に達している。これは、スポーツ基本計画におけるスポーツ実施率の目標が内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」を根拠に設定されていることに起因する。内閣府調査(2009)では、過去 1 年間に運動・スポーツを実施したと回答した者に対して『その運動やスポーツを行った日数を全部合わせると,1 年間に何日くらいになりますか』といった質問で調査を行っているため、内閣府調査から判明するのは年間に「週 1 日以上」や「週 3 日以上」スポーツを実施した者の割合であり、「週 1 回以上」や「週 3 回以上」の実施率とは厳密には異なる。
たとえば、ある日の朝に「ウォーキング」、夜に「テニス」を実施した者は、SSF 調査では「2 回」とカウントされるのに対して、内閣府調査では「1 日」とカウントされる。この違いにより、内閣府調査を根拠に設定されたスポーツ基本計画の目標は、SSF 調査の分析では目標値を既にクリアしているという現象に繋がっている。しかし、スポーツ基本計画が「週 1 回以上」「週 3 回以上」という目標値を設定している以上、年間の実施日数で調査している内閣府調査を根拠とせず、年間の実施回数を把握する文部科学省独自のスポーツ実施率調査を行う必要があるのではないだろうか。
また、過去の SSF 調査から定期的な運動・スポーツ実施率が緩やかに増加してきた要因は「散歩」や「ウォーキング」といった運動の増加に起因しており、いわゆる競技系のスポーツ種目の実施率はほとんど増加していない。このことからも、実施率といった量的な目標に加え、どのような種目を実施するかといった質的な目標も検討するべきであろう。

2)スポーツ振興くじを買う人と宝くじを買う人の関係とは?

スポーツ基本計画には目標として言及されていないが「施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項」として、「スポーツ推進のための財源の確保と効率的・効果的な活用」が挙げられている。その中で、「スポーツ振興投票制度については、さらに助成財源を確保するため、売り上げの一層の向上や業務運営の効率化により収益の拡大に努め、スポーツの推進のための貴重な財源として有効に活用する」とある。
SSF 調査では、過去 1 年間の「スポーツ振興くじ(toto)」の購入経験を 2004 年と 2012 年にたずねている。購入経験が「ある」と回答した者の割合は 2004 年 4.4%、2012 年 6.5%とほとんど変わらず、わが国成人の 90%以上が過去1 年間に toto を購入していない。また、宝くじの購入経験と合わせて分析すると、toto も宝くじも購入していない者が全体の 56.8%、宝くじのみ購入している者が 36.8%、どちらも購入している者が 6.4%、toto のみ購入している者は 0.1%であった。つまり、toto の購入者は同時に宝くじの購入者でもあり、toto のみの購入者はほとんどいないと判断できる。toto の売り上げの多くを当せん金の高い「BIG」が占めている現状に照らせば、「宝くじの購入者が、高額当せん金目当てで toto を購入している」という図式が推察される。したがって、今後、宝くじの当せん金が上がれば toto の売り上げが落ちるといった反比例の図式も想定され、スポーツ推進の継続的な財源確保のためにも「toto だから購入したい」という独自の理念と販売促進策を創案・推進する必要があるのが現状ではないだろうか。

【結果の詳細:調査結果】

1)「アクティブ・スポーツ人口」が初めて 20%を突破し、定期的な運動・スポーツ実施率も過去最高に
「週 2 回以上、1 回 30 分以上、『ややきつい』以上」の条件で運動・スポーツを実施している「アクティブ・スポーツ人口」が、1992 年の調査開始以来、初めて 20%を突破した。「週 1 回以上」「週 2 回以上」の実施率もそれぞれ 59.1%、49.3%と過去最高を記録し、増加を続けている。わが国成人の積極的な運動・スポーツ実施状況が明らかとなった。

2)スポーツボランティアの実施率は横ばい
過去 1 年間にスポーツボランティアを行ったことが「ある」と回答した者は全体の 7.7%で、2010 年調査の 8.4%を 0.7ポイント下回った。1994 年から経年でみると、2010 年調査時に過去最高の 8.4%を記録したが、過去 18 年間 1 割以下にとどまり、ほぼ横ばいの状態にある。

3)「サッカー日本代表試合」の観戦者、観戦希望者が大幅に増加。なでしこジャパンも上位にランクイン
過去 1 年間にテレビで観戦したスポーツ種目は、「プロ野球(NPB)」が 61.5%で 1 位、「サッカー日本代表試合(五輪代表含む)」が 56.7%で 2 位、「バレーボール(日本代表試合)」が 52.1%で 3 位、「フィギュアスケート」が 50.8%で 4 位、「サッカー日本女子代表試合(なでしこジャパン)」が 49.5%で 5 位であった(表 2)。2010 年調査では 38.3%であった「サッカー日本代表試合(五輪代表含む)」が 18.4 ポイントの上昇、今回の調査から項目に追加した「サッカー日本女子代表試合(なでしこジャパン)」が 49.5%で 5 位にランクインし、サッカー日本代表の人気の上昇が見て取れる。
また、今後の直接スポーツ観戦希望種目をみても、1 位は「プロ野球(NPB)」31.0%であるが、2010 年調査では 10.8%(6 位)であった「サッカー日本代表試合(五輪代表含む)」が 23.0%(2 位)と倍増し、「サッカー日本女子代表試合(なでしこジャパン)」も 14.7%と 5 位にランクインした。



【調査の概要】
・調査目的 :本調査はわが国成人の運動・スポーツ活動の実態を総合的に把握し、スポーツ・フォー・エブリワンの推進に役立つ基礎資料とすることを目的としている。
・調査対象
 1)母 集 団 : 全国の市区町村に居住する満 20 歳以上の男女
 2)標 本 数 : 2,000 人
 3)地 点 数 : 市部 190 地点、郡部 20 地点、計 210 地点
 4)抽出方法 : 割当法
・調査時期 :2012 年 6 月 22 日~7 月 22 日
・調査方法 :訪問留置法(調査員が回答者を訪問して調査票を配布し、一定期間内に回答を記入してもらい、調査員が再度訪問して調査票を回収する方法)による質問紙調査
・回収結果 :2,000 人(男性:990 人、女性 1,010 人)

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[笹川スポーツ財団]
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