シニア社員に関する調査 

2014年11月17日
クレイア・コンサルティングは、2012年に引き続き、ビジネスパーソンを対象としたインターネットの意識調査を実施。

大企業に勤務する正社員を対象に、当社が提供している従業員満足度調査の項目に沿って意欲や満足の状態を聞くとともに、今年度は特に「女性管理職」と「中高齢者」「M&A」をテーマにした質問を加えて調査を行いました。その第二弾となる「中高齢者」については、特に「60代のシニア社員」に関して調査を行い、その結果、60代のシニア社員はそれまでに培った経験に基づく判断や実務能力に対して高い評価が行われる半面、割り切って仕事をしたり、過去に固執したりしてしまうケースが見られました。また、その背景として60代に対して以前ほどの十分な人事マネジメントが行われなくなっていることが明らかになりました。不本意な職務を低賃金で行わざるを得ないシニア社員自身と、難しいかじ取りをせまられる上司の姿が垣間見えます。

【調査の背景と問題意識】

2012年に成立し2013年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法により、企業において希望者全員を順次65歳まで継続雇用することが義務付けられるようになりました。それを受けて、一部の企業では定年の年齢を65歳やそれ以降に延長する動きも出ていますが、多くの企業では人件費の増大を抑えつつ、いかに高齢者を継続的に受け入れるか、試行錯誤を続けています。このような状況において、「シニア世代は周りからどのように認識されているのか」「シニア世代に対して人事マネジメントは適切になされているのか」「シニア世代による貢献やモチベーションを維持・向上させていくためにはどのような施策が有効か」といった問題意識に立脚し、企業組織の実態を洗い出すべく調査を行いました。

【調査結果サマリ】

・シニア世代は「経験に裏打ちされた判断」や「業務の着実な遂行」に高い評価を受けている

・一方で、シニア社員が仕事を「割り切って行って」いたり、「過去の経験に固執」する様子も見られる

・シニア社員が仕事を割り切る背景には、シニア社員に対する公正な評価の実施や評価結果の処遇への反映がなされず、個人への責任の付与が不足するなど、上司の工夫不足と希薄な人事マネジメントが存在

・仕事を割り切って行う社員は、貢献実感や希望が持てず、働きがいも十分には感じられていない

・適切な人事マネジメントがシニアの割り切りを打開する鍵に。シニアの働きがいを高めるためには、「公正な評価と処遇への反映」や、「仕事への責任と負荷の付与」、「適材適所の実現」が必要


【調査結果ハイライト】

■シニア社員のポジティブな実像
4割弱がシニアの経験に裏打ちされた判断に高評価、仕事の着実な遂行もほぼ半数が認識

職場にいる60代以上のシニア社員について、「明確に伝えなくても、過去の経験から適切に判断してくれる」という設問に肯定の回答をした社員は38.4%、「与えられた仕事は着実に遂行してくれる」という設問に肯定の回答をした社員は46.3%にのぼりました。シニア社員が過去培ってきた経験や、経験に裏打ちされた実務遂行について、高い評価が伺えます。また、「気軽に話しかけたり依頼しにくい雰囲気がある」という設問については否定回答のほうが多く、年齢は重ねていても話しやすい雰囲気を醸し出していることがわかります。

■シニア社員のネガティブな実像
シニア社員の半数が「割り切って」仕事をしている印象を与えており、過去に固執したり指示されたこと以外をやらない傾向も

ネガティブな面を見ていくと、シニア社員について「割り切って仕事をしている印象がある」という設問に肯定的な回答をした社員は54.9%と過半数を超えています。また、「過去の情報や経験に固執するところがある」の全体での肯定回答が34.2%、「指示されたこと以上のことはやろうとしない印象がある」の全体での肯定回答が41.5%、「仕事のゴールや進め方を勝手に判断してしまうところがある」の全体での肯定回答が32.9%と、それぞれ否定回答よりも大きく出ており、シニア社員を扱いかねている一面も見られます。

■シニア社員が「割り切る」背景
60代のシニア社員に対しては、それまでの人事マネジメントが従来ほどは徹底されず希薄化してしまっており、

「割り切って」働くシニア社員に対する人事マネジメントの実態を見ていくために、別の設問である「無理にがんばらなくてもいいと思う」という設問を用いてさらに詳細を見ていきます。

この設問に肯定回答をしたシニア社員(無理にがんばらなくたっていいと思うシニア社員)を「仕事を割り切っても良いと考えるシニア社員」とし、否定回答をしたシニア社員(無理にがんばらなくたっていいとは思わないシニア社員)を仕事を割り切っても良いとは考えないシニア社員」として比較していくと、仕事を割り切っても良いと考えるシニア社員が40.7%、割り切っても良いとは考えないシニア社員が19.3%存在することがわかりました。シニア社員自身、仕事を割り切って行おうとうする層が、そうでない層に比べて多く存在することがわかります。

そして、割り切って働くシニア社員において、「がんばってもがんばらなくても評価が変わらない」への肯定回答が44.1%、割り切って働かない社員の肯定回答が10.7%と、公正な評価の有無によって割り切り感に大きな差が生まれていることがわかります。

同様に、割り切って働くシニア社員において、「(上司に)ビジョンや構造が無い」への肯定回答が44.1%、割り切って働かないシニア社員の肯定回答が10.7%となっており、上司によるビジョンの提示もシニア社員の割り切りに影響を与えていることが判明しています。

また、「割り切る」シニア社員が発生してしまう背景として、50代から60代にかけてのマネジメント上の変化を見ると、50代に比べて60代の社員に対する人事マネジメントにおいては、評価による処遇の変動や個人に対する責任の追及、業務量などの負荷の割り振りが減少し、マネジメントが弱体化していることが明らかになりました。

シニア社員が働きがいを持って成果を上げていくために、「上がり」の年齢だからとマネジメントの手を緩めることなく、しっかりと成果に報い、能力を伸長させていく人事マネジメントが求められています。

■「割り切る」シニア社員の実態
割り切って仕事をし、無理にがんばらないシニア社員は、意欲も希望も少なく、望ましい働きが出来ていない

さらに「割り切って」働くシニア社員の実態を見ていくために、再び「無理にがんばらなくてもいいと思う」という設問に対して、肯定回答(割り切って働くシニア社員)と否定回答(割り切って働かないシニア社員)とを比較していくと、割り切って働くシニア社員において、「今の仕事では、新しいことに挑戦したり、新しいものを生み出そうとする気持ちがわきにくい」、「自分の仕事が世の中に役立っていると感じることは少ない」、「今の会社では将来の生活や仕事に対して希望を持ちにくい」といったネガティブな感情が蔓延しているのがわかります。

そして、働きがいある仕事を指し示す、「今の仕事に前向きなやりがいを感じている」「負担が大きくても大きな責任を担う仕事がしたい」「今後も地道な努力を積み重ねることによって持続的に成長していけると感じる」という3つの観点についても、割り切っているシニア社員においては働きがいを大きくは感じられていないことが判明しています。

■シニア社員の働きがいを高める①「実力主義的な処遇」
シニア社員に対しても、それまでの世代と同様、固定的な一律の処遇ではなく、成果や実力に見合った処遇によりインセンティブを提供することが必要

シニア社員が高いパフォーマンスで一生懸命に働き続けるための理想的な働き方を探るために、さきほどの「割り切り」で見た、「今の仕事に前向きなやりがいを感じている」「負担が大きくても大きな責任を担う仕事がしたい」「今後も地道な努力を積み重ねることによって持続的に成長していけると感じる」という「働きがい」に関する3つの観点から見ていきます。

「人事評価の結果によって年収が大きく変動する」、「数字に表れない貢献も評価されている」、「業績や成果に対して個人の責任を問われることが多い」といった、実力主義的な評価を行いその結果を処遇に反映した人事マネジメント体系が整備されているほど、シニア社員が働きがいを感じていることがわかります。

シニア社員に対しては人事評価を行わずに昇給も無く、賞与は一定額を毎回支給するといったケースも散見されますが、これではシニア社員のモチベーションアップは図れません。人件費コントロールのために賃金の昇給幅を小さくしたとしても、毎期の業績や個人の人事評価が反映される賞与を適切に変動させることによって、魅力あるインセンティブの機能を持たせることが、シニア社員の働きがいの向上につながります。

■シニア社員の働きがいを高める②「責任ある仕事」
加齢に伴う影響を考慮しつつも、シニア社員には単純業務をあてがうのではなく、責任があり負荷の高い仕事をアサインする必要がある

「組織にとって重要かつ責任ある仕事を任されている」「実力以上の仕事を割り振られることが多い」に肯定的な回答をしたシニア社員は、否定的な回答をしたシニア社員より、より働きがいを感じて仕事をしています。

シニア社員に対しては、年齢や他の社員との関係性などを考慮し、定年前の職務と異なる職務を割り当てるケースも少なくありませんが、シニア社員が理想的な働き方をするためには、与えられる権限の範囲内で責任があり負荷の高い仕事を任せることが必要です。

■シニア社員の働きがいを高める③「適材適所」
人事マネジメントを適切に行っていくためにも、シニア社員にただ仕事をあてがうのではなく、可能なかぎり「適材適所」を実現することが必要

「今の仕事は、自分の経験や能力が発揮できる仕事である」に肯定的な回答をしたシニア社員は、否定的な回答をしたシニア社員に比べ、より働きがいを感じていることが判明しました。また、「今の会社にいれば自分のやりたい仕事ができる」に肯定的な回答をしたシニア社員も、否定的な回答をしたシニア社員よりも、働きがいを強く感じています。能力や志向にあった仕事を割り振ることも有効であることがわかります。


【調査概要】
調査期間: 2014年6月28日~29日
調査方法: インターネットによる調査
回答方法: 多肢選択式
対象者: 従業員300名以上の大企業に勤めている正社員計1,600名

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[クレイア・コンサルティング]
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