40・50代の不安と備えに関する調査(親と同居する 40・50代のシングルの実態と課題) 

2014年12月18日
第一生命保険のシンクタンク、第一生命経済研究所は、全国の 40代・50代の男女 3,376 名を対象にマネー・ヘルス・タイムのそれぞれの分野でどのような不安を抱き、どのような備えをしているのかアンケート調査を行いました。この調査を元に、本稿では親と同居する 40・50 代のシングルに焦点をあてて分析しています。

【調査結果のポイント】

本人年収
● 自分・親世帯の1割強が「収入なし」

世帯の金融資産残高
● 自分・親世帯の金融資産高が自分・子世帯よりも多いのは親に資産があるケースもあるから

就労形態と無職者の割合
● 自分・親世帯における「正社員・正職員」は 35.7%、4人に1人が「無職」

支出項目の見直しに関する意向
● 自分・親世帯の消費に対する意識は自分・子世帯と比してあまり高くない

親の介護に対する不安
● 自分・親世帯の人は自分が親の介護をすることになるとの意識が高い

生きがい
● 自分・親世帯の人は「趣味」が生きがい 親と同居でも「家族だんらん」は生きがいにならず
● 自分・親世帯における男性の無職者は「生きがい」としてあげる項目数が少ない

生活満足度
● 世帯形態別にみた生活満足度は自分・親世帯で最も低い

【調査実施の背景】

総務省の資料によると、2006 年以降、親と同居する若年未婚者は減少傾向にあるのに対し、近年は親と同居する壮年未婚者が増加しています。若年未婚者・壮年未婚者ともに、親と同居している未婚者は女性より男性で多いのが特徴です。この 20 年で生涯未婚率も急上昇しましたが、これについても男性が2割を超えて女性の倍を占めているのが実態です。
このようなライフスタイルは、1999 年頃に山田昌弘氏によって「パラサイト・シングル」と表現され、「学卒後もなお、親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者」とされました。当時、パラサイト・シングルは食住を親に依存することで可処分所得が多く、消費に積極的なライフスタイルとしてとらえられましたが、2002 年頃からニートが急増し引きこもりが問題視されるようになるなど、今日親と同居している未婚者、特に壮年未婚者の事情は様々です。
親の高齢化が進み、介護の問題等が発生する時期を迎える壮年者において、親と同居するシングルの生活実態はどのようなものなのでしょうか。当研究所では、全国の 40・50 代男女 3,376 名を対象に、「マネー」「ヘルス」「タイム」の3つの側面から「生活リスクへの不安と備えに関する調査」を行い、この結果から、親と同居するシングルの男女に焦点をあてて分析・考察をしました。
なお、本リリース中では親と同居する 40・50 代のシングルを「自分・親世帯」、子どもと同居する 40・50 代のシングルを「自分・子世帯」と表記して扱っています。

【調査結果】

本人年収
自分・親世帯の1割強が「収入なし」

自分・親世帯、自分・子世帯、単身世帯(別居子無)、単身世帯(別居子有)別に本人の年収をみました。自分・親世帯の年収についてみると、「収入はない」とする人が 12.6%いることがわかりました。また、「103 万円未満」とする人が 19.4%と約2割を占め、年収が300 万円未満の合計で 54.8%と過半数を占めています。
自分・子世帯、いわゆる「シングルファザー(父子世帯)」「シングルマザー(母子世帯)」とされる世帯の年収についてみると、300 万円未満とする人で 62.0%を占めており、自分・親世帯より年収が低くなっています。厚生労働省の全国母子世帯等調査では、現在、父子世帯数は 22 万 3,300 世帯で、1983 年に比べ 33%の増加、母子世帯が 2011 年に推計約 123万 7,700 世帯と 1983 年に比べ約 1.7 倍に増加するなど、自分・子世帯は自分・親世帯同様、近年増加しています。
単身世帯においては、別居子の有無にかかわらず、自分・親世帯、自分・子世帯より収入が高くなっていました。

世帯の金融資産残高
自分・親世帯の金融資産残高が自分・子世帯よりも多いのは親に資産があるケースもあるから

金融資産についてみると、自分・子世帯では「わからない」とする割合が 20.7%であるのに対し、自分・親世帯では 40.1%が「わからない」としており、世帯の金融資産額を把握していない人が多いことがわかりました。
「わからない」とする人を除いて再集計すると、金融資産が1千万円以上とする人が自分・親世帯では 38.1%(13.1%+15.9%+9.1%)を占め、自分・子世帯(17.8%)の倍以上に及びます。
「わからない」とする割合の高さや、1千万円以上の金融資産保有者の多さは、それらが同居している親の保有資産というケースがあることによるものと推察されます。

就労形態と無職者の割合
自分・親世帯における「正社員・正職員」は 35.7%、4人に1人が「無職」


就労状況についてみると、自分・親世帯では正社員の割合が 35.7%と自分・子世帯に次いで低くなっていました。
性別に比較すると、男性の無職者の占める割合が自分・親世帯では 23.8%と、他の世帯に比べて高いことがわかりました。

支出項目の見直しに関する意向
自分・親世帯の消費に対する意識は自分・子世帯と比してあまり高くない


支出項目の見直しに関する意向について、「今後経済的ゆとりができたときに支出を増やしたい」項目と、「今後支出を減らそうと思っている」項目についてそれぞれたずねました。
これについては、全体値と自分・親世帯、自分・子世帯の結果を比較しています。
まず、「特にない」とする割合は、「増やしたい項目」「減らしたい項目」ともに自分・親世帯で最も多くなっていました。自分・子世帯は「増やしたい項目」「減らしたい項目」ともに具体的な回答項目が多く、支出項目の見直しに積極的であるといえます。一方で、自分・親世帯では特に食費・外食費についての意識がいずれも高くないことから、食事に関して親に依存するなど、自ら関与していないケースもあるものと推察されます。

親の介護に対する不安
自分・親世帯の人は自分が親の介護をすることになるとの意識が高い

一方、親の介護についての不安についてみると、親と同居する 40・50 代のシングルにおいては、「介護施設を希望しても入れないこと」(75.5%)、「介護を必要とする期間がどのくらいになるかわからないこと」(72.5%)に続いて、「自分以外に家族や親戚で介護できる人がいないこと」(72.2%)が続いています。
また、「自分の時間が減ること」についても、全体で 60.4%であるのに対して、自分・親世帯では 65.0%となるなど、親が介護状態になった際の自分の関与を意識している様子がうかがえます。
一方で、「親に何かあった時にすぐにかけつけられないこと」についての不安は、全体で55.6%であるのに対して自分・親世帯では 29.6%となっており、不安感は高くありませんでした。

生きがい
自分・親世帯の人は「趣味」が生きがい
親と同居でも「家族だんらん」は生きがいにならず


生きがいについてみると、男女ともに自分・親世帯の人では「趣味に熱中しているとき」に生きがいを感じている割合が高く、それぞれ全体値を上回りました。
一方で、親と同居しているにもかかわらず、「家族だんらんのとき」については生きがいを感じている割合が全体値より大幅に低くなっています。また、「旅行に行っているとき」「食事やお酒を楽しんでいるとき」などについても、全体値と比べて差が目立ちました。
さらに、生きがいが「特にない」とする人が全体値と比してやや高いこともわかりました。

生きがい
自分・親世帯における男性の無職者は「生きがい」としてあげる項目数が少ない


自分・親世帯のうち、男性の無職者の結果をみると、「趣味に熱中しているとき」が7割を超えて高くなっていました。
また、「テレビを見たり、ラジオを聞いているとき」「勉強や教養に身を入れているとき」なども、自分・親世帯全体の値を上回っていました。
そのほかについては回答割合が低く、平均回答項目数も 2.84 と最低値でした。

生活満足度
世帯形態別にみた生活満足度は自分・親世帯で最も低い


「家庭生活」「職業生活」「余暇・レジャー」「友人・知人やサークル・団体との交流」「生活全体」の5つの領域の満足度について、「満足している」から「不満である」に5~1点をそれぞれ付与し、平均値を比較しました。
この結果、自分・親世帯は全体的に他の世帯に比べて低い値を示しており、生活満足度が非常に低いことが明らかとなりました。
自分・親世帯のうち無職者のみの平均値をみると、いずれの満足度も自分・親世帯全体と比べてさらに低くなっていました。


【調査概要】
調査対象 全国の 40・50 代男女 3,376 名
調査方法 株式会社クロス・マーケティングのモニターを用いたインターネット調査
調査時期 2013 年 11 月

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[第一生命経済研究所]
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