第18回世界CEO意識調査 

2015年01月21日
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)が1,300人以上のCEOを対象に「第18回世界CEO意識調査」を実施。
世界経済の成長が今後12カ月間に改善すると考えるCEOは昨年より減少したものの、自社の売上拡大の達成に対する自信に変化はありませんでした。調査結果は、スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の開催に合わせ発表されました。

【調査結果】

世界経済の見通し

CEOは、世界経済の成長見通しについて1年前ほど楽観視していない結果になりました。2015年に世界経済が改善すると回答した割合は全体の37%となり、昨年の44%から減少しました。重要な点は、CEOの17%が世界経済の成長が鈍化するとみていることで、この割合は1年前(7%)の2倍以上に増加しました。44%は、経済状況は概ね横ばいで推移すると予想しています。

地域別では大きな差が出ました。アジア太平洋のCEOの45%が世界経済の改善を見込んでおり、最も楽観的にみています。その次に楽観的なのは中東(44%)と北米(37%)でした。対照的に中・東欧のCEOは、経済の改善を見込む割合がわずか16%でした。インド(59%)、中国(46%)、メキシコ(42%)などの新興国のCEOは、米国(29%)、ドイツ(33%)などの先進国のCEOより経済について楽観的でした。

今後の売上の見込み

世界経済全般は減速すると予測しているにもかかわらず、CEOは自社の見通しには引き続き自信を示しています。今後12カ月間に自社の売上が拡大する見通しについて、CEOの39%が「非常に自信がある」と回答しました。これは昨年と同じ割合ですが、2013年の36%をやや上回っています。

今後の売上の見込みについて最も強い自信を見せたのがアジア太平洋のCEO(45%)で、割合は昨年と同様でした。中東は、CEOの44%が売上の拡大に「非常に自信がある」と回答し、引き続き最も楽観的な地域に含まれますが、昨年の69%からは大幅に減少しました。北米では、成長への自信を示したCEOの割合が33%から43%に増加しました。西欧(31%)と中・東欧(30%)のCEOは、自社の成長見通しについて最も悲観的でした。

国別では、インドのCEOが最も強い自信を示し、62%が短期的な成長見通しに「非常に自信がある」と回答しました。以下、メキシコ(50%)、米国(46%)、オーストラリア(43%)、英国および南アフリカ(39%)、中国(36%)、ドイツ(35%)、ブラジル(30%)のCEOも強い自信を見せています。一方、自信を示す割合の低い国はフランス(23%)、ベネズエラ(22%)、イタリア(20%)、アルゼンチン(17%)と続きます。最下位のロシアでは、2015年の売上拡大について「非常に自信がある」と回答したCEOの割合は16%にとどまりました。昨年は53%と最も高い割合であったことと比べると大幅な減少です。

成長を達成するための戦略

CEOは、今後12カ月間で自社の成長にとって最も重要な市場として米国を挙げました。5年前にこの質問を開始して以来、初めて中国を抑えての首位となりました。自社が成長するうえで、本拠地以外で最も重要な3カ国はどこかという質問に対して、米国を挙げたCEOは38%で、中国の34%、ドイツの19%、英国の11%、ブラジルの10%を上回りました。

CEOは、今後12カ月間に自社の経営基盤を強化するために、さまざまな戦略を実施すると述べています。全体の71%がコスト削減、51%が戦略的提携や合弁事業、31%がビジネスプロセスや業務のアウトソーシング、29%が国内M&A(昨年の23%から増加)を実行するとしています。

CEOが最も懸念すること

前回調査同様、今回も、CEOの懸念事項のトップは過剰規制でした。これを挙げたCEOの割合は78%と、昨年からさらに6ポイント上昇し、調査開始以来で最も高い水準となっています。過剰規制への懸念が特に強い国は、アルゼンチン(98%)、ベネズエラ(96%)、米国(90%)、ドイツ(90%)、英国(87%)、中国(85%)でした。

懸念事項の上位にはこの他に、鍵となる人材の調達(73%)、財政赤字と債務負担に対する政府の対応(72%)、地政学的な不確実性(72%)、租税負担の増加(70%)、データ保全の欠如を含むサイバー脅威(61%、昨年の48%から大幅に増加)のほか、社会不安(60%)、消費者の嗜好や消費行動の変化(60%)、技術進歩のスピード(58%)が挙げられます。

エネルギーコストの高さまたは変動(前回よりやや低下して59%)を除くと、CEOの懸念は、すべての項目で昨年から増加しています。

競争をめぐる経営環境

CEOの3分の1が、自社が過去3年間に一つまたは複数の新しい業界に参入したか、参入を検討したことがあると回答しています。また、過半数(56%)のCEOが今後3年間に新しい業種で競争するようになると考えています。さらに、重要な競合企業が現れつつあるか、今後現れる可能性がある業種として、テクノロジー(32%)、小売・卸販売(19%)、通信・エンタテイメント・メディア(6%)を挙げています。

また、CEOはサプライヤー(41%)、顧客(41%)、学界(32%)と連携し、合弁、戦略的提携、非公式な形での協業を競争力の強化に活用しています。協業の理由に挙げられたのは、新規顧客、新技術や未来技術、新しい市場およびイノベーションの獲得です。

政府との連携

CEOの67%が、政府の優先課題は、国際競争力のある効率的な税制の維持であると回答しました。しかし、自国の政府がそうした税制を構築できていると回答したCEOはわずか20%でした。同様に、適応力の高い熟練労働力の確保を重視するCEOは60%にのぼりますが、自国で十分な熟練労働力が確保できているという回答は21%にとどまりました。CEOが政府が優先して実施すべきと考えるその他の政策は、適切な物的インフラストラクチャーの構築(49%)、資金調達面での制約の回避(29%)、適切なデジタルインフラストラクチャーの構築(28%)でした。注目すべきは、政府の優先政策として気候変動のリスク低減を挙げた割合が6%にとどまったことでした。

デジタル時代への対応

デジタル技術の台頭は、企業のビジネスの在り方を一変させました。技術革新のスピードに懸念を感じるCEOは全体の58%と、昨年の47%から増加しました。モバイル技術はCEOの81%が自社にとって最も重要と見なしており、以下、データマイニングと分析(80%)、サイバーセキュリティ(78%)、ソーシャル化したビジネスプロセス(61%)、クラウドコンピューティング(60%)と続きます。企業がデジタル技術の恩恵を最も受けている分野は、業務効率(88%)、データとデータ解析(84%)、顧客体験(77%)です。

デニス・ナリーは次のように締めくくりました。「CEOは、テクノロジー分野と各市場における混乱を伴う変化に適応しなければならないことを理解しています。CEOはテクノロジーをビジネスの中心に据え、顧客価値を創出する必要があります。この新しい競争環境の中で新しい考え方と働き方を見出すことが成功にとって不可欠です」

人材の多様性と適応力

CEOの半数が今後12カ月間で自社の従業員数を増やすとした一方、21%が減少を見込んでいます(概ね昨年並み)。CEOは適切な人材の確保という課題をクリアしようとしており、81%がより幅広いスキルを求めるようになったと回答しました。各CEOの企業の3分の2近く(64%)がダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)戦略を定めていますが、残りの3分の1近くは定めていません。そうした戦略を持つ企業のうち85%が、それによって企業の利益も改善したとしています。


【調査方法】
PwC「第18回世界CEO意識調査」では、2014年第4四半期に世界77カ国において1,322人のCEOにインタビューを実施しました。地域別の内訳は、アジア太平洋459人、欧州455人、北米147人、中南米167人、アフリカ49人、中東45人となっています。

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[PwC]
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