中小企業の法務対応に関する調査 

2015年03月12日
東京商工会議所は、「中小企業の法務対応に関する調査」結果をまとめた。

中小企業は経営資源の制約から法務体制の十分な整備は難しい状況にありますが、民法を始めとした経済関連法規が相次いで改正されること等を背景として、法務面の管理体制の重要性はますます高まっており、中小企業も対応を検討する必要があります。
そこで、当所では中小企業の法務対応に関する実態調査を実施し、調査結果をとりまとめました。

【】

1.法務に関する基本的な認識について

(1)注力すべき事項、分野

〇「日常の準備として注力すべき体制・運用」(複数回答)としては、多くの企業が「法令遵守意識の徹底」(68%)、「従業員への教育・浸透」(52%)を回答した。

〇「日常の準備として注力すべき分野」(複数回答)では、「契約・取引全般」(81%)、「労務・雇用・安全衛生」(57%)、「個人情報保護」(40%)への回答が多い。

(2)困ったこと・解決が難しいこと

〇「困ったことや解決が難しいことの経験」(複数回答)では、「回収できなかった(取引先倒産、経営破たん)」(49%)、「回収できなかった(取引先が行方不明)」(22%)、「取引先の事情で回収を断念した、一部しか回収できなかった」(28%)などの売掛金回収に関する経験が最も多い。次いで、取引打ち切り、返品・作り直し、契約内容についての理解の違い、など取引および契約に関係する回答が多い。
また、「従業員の解雇や雇止めに関してトラブル」(13%)、「取引とは関係のない付き合いや協力」(納入先関係9%、仕入先関係9%)に関する経験も多い。

〇これらの問題に対する「利用したことのある解決策」(複数回答)としては、「相手との話し合いで解決した」(納得できた18%、相手の言い分を飲んだ16%)が最も多く回答された。次いで「弁護士に依頼して和解」(29%)が多く回答された。
なお、法務担当者がいない企業では、法務担当者がいる企業と比べると、「相手の言い分を飲んだ」の回答比率が高くなっている。また、何も手を打たなかった(回答「特になし」)も高い比率となった。

〇「日常の取引を問題なく円滑に行うための取り組み」(複数回答)では、多くの選択肢が回答された中で、「取引先の信用調査を実施する」「契約書に記述する契約条件をできるだけ細かく定める」が比較的低い回答となった。

2.法務体制について

(1)社内の体制

〇法務担当者を置いていない企業が全体の約3分の2(65%)を占めている。

〇その理由(択一)は「担当者を置くほどの問題がないから」(43%)、「その都度最適な人が対応すればよいから」(34%)などとなっている。法務担当者を置いていない企業では、契約内容のチェック等を社長が行っているものが最も多い(58%)。

〇法務担当者を置いている企業においても、「専任の担当者がいる」との回答は少なく(5%)、「兼任の担当者」によって対応していることが多い(31%)。

〇兼任の担当者は「総務業務」(70%)を中心に、「経理業務」(38%)、「人事業務」「営業業務」などを兼務している(複数回答)。なお、「総務業務」のみの兼務(26%)よりも、「総務+経理」「総務+経理+人事」などのように、複数の業務を兼務している場合が多い。

〇法務担当者を置いている理由(択一)は、「法令遵守の徹底」(31%)、「その他大きなリスクの発生予防」(25%)といった幅広いリスクの予防と対応を理由とするものが過半数(計56%)を占めている。一方、「契約書の数が多いから」(23%)、「複雑な取引が多いから」(10%)、「海外との取引が多いから」(6%)などの取引関係を理由とするものは計39%となっている。

〇従業員の教育(複数回答)については、「特に取組みをしていない」が50%となっている。取組みをしている企業では、有料・無料含め、外部セミナーへの参加が多い。

〇法令情報の入手先(複数回答)としては、「税理士」が最も多い(57%)。次いで「業界団体」(31%)、社会保険労務士(23%)、商工会議所(21%)などとなっている。

(2)外部専門家等

〇様々な法的課題や疑問が生じたときの外部相談先(複数回答)は、「税理士」(72%)、「弁護士」(58%)、「社会保険労務士」(28%)が回答上位となった。
なお、顧問弁護士がいる企業では9割を超える企業が「弁護士」を相談先とした一方、顧問弁護士がいない企業では「弁護士」は38%に止まり、「税理士」に頼っている傾向が見られる(78%)。また、顧問弁護士がいない企業では商工会議所や区役所・官公庁への期待も比較的高い。

〇顧問弁護士の有無については、「いる」(37%)、「いない」(63%)となっている。従業員が1人~5人、6人~10人というような規模の小さい企業でも顧問弁護士を置いている会社は相当数あるが、全体としては従業員数が多い企業ほど、顧問弁護士を置いている傾向がある。

〇法務担当者(専任・兼任)と顧問弁護士ともに置いている企業は全体の18%であり、両方とも置いていない企業は全体の44%である。

〇顧問弁護士を置かない理由(択一)では、「法務案件の内容に応じてその都度弁護士を依頼すればよいから」が最も多い(27%)。

〇顧問弁護士を置いていて最も良かったと思うこと(択一)としては、日常での活用と、非常時への備えが、ほぼ半々となっている。
日常での活用・・・・「契約書など日常の相談に乗ってくれる」(49%)
非常時への備え・・・「トラブルが生じた時に迅速に対応してくれる」(37%)、
「いざという時の安心感」(10%)

〇支援機関等への期待(複数回答)では、「契約の基礎知識や留意事項の提供」(38%)、「契約書のひな形の提供」(38%)、「契約に関するセミナーの開催」(23%)など、契約に関することが多い。また、「法令改正動向に関する情報の提供」(31%)への期待も多い。

(3)現状への自己評価


〇「概ね実施できている」(42%)、「十分実施できている」(3%)に対して、「やや不十分である」(37%)、「不十分である」(18%)となっており、「実施できている」よりも「不十分」の方が多い。


【調査概要】
・調査期間:平成26年9月30日~10月31日 
・調査方法:郵便による質問票の配布・回収
・調査対象:23区内の中小・小規模事業者 5,085件 
・回答数:1,113件 (回収率21.9%)

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[東京商工会議所]
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