「食器洗い」の際の行動と生理・心理状態を科学的手法により解析 

2015年03月31日
ライオンリビングケア研究所は、青山学院大学理工学部 野澤 昭雄准教授と共同で、「食器洗い」の際の行動(姿勢、全身の動き)および生理・心理状態を科学的手法により解析しました。

その結果、食器洗いに伴う「姿勢」や「心理状態」は、洗浄中に食器と手指の間に生じる“ヌルつき”の程度によって影響を受けることを確認し、“食器を洗っているときにヌルつかない”台所用洗剤を使用した「食器洗い」では負担を感じにくくなることが分かりました。

※食器を洗っているときのヌルつき:
食器を洗っているときに、油汚れと水と台所用洗剤が混ざったものにより生じる、食器と手指の間の滑りやすさのこと

1.研究の背景

当社は、洗剤などの日用品を通して生活者に「より快適に家事」を行っていただくために、家事における行動やストレスなどの心理的状態を、感性工学的な手法を用いて評価する研究を行っています。
「食器洗い」は毎日行う家事の中で最も嫌いな家事の第1位であり、食事の後片付けに伴う一連の作業の中で、生活者は台所用洗剤で食器を洗う工程を最も負担と感じています(当社調べ)。
そこで当社は、“食器を洗っているときにヌルつき”を感じると無意識のうちに食器をしっかり支えるような行動変化が起こり、その変化が「食器洗いの疲労感」と関連しているのではないかという仮説を立て、“食器を洗っているときのヌルつき”に差のある台所用洗剤を用いて、「食器洗い」時の身体の動きや心理状態に及ぼす影響を調査しました。

2.研究結果

実験は20~40代の成人女性20名で行いました。

2-1.“食器を洗っているときにヌルつく”台所用洗剤を使って食器を洗うと、姿勢は「前かがみ」になりやすい

まず、食器を洗う時の「行動」を科学的に観察するために、頭や肩・腕・手など10カ所を計測ポイントとして、それぞれの部位が3次元でどの位置にあるかを、時間を追って計測しました(時系列関節座標)。
その結果、「食器洗い」中は体が前傾姿勢となり、“食器を洗っているときにヌルつく”台所用洗剤を使うと、頭の位置が前方にずれるなど、被験者の50%で食器洗い中の姿勢がより「前かがみ」になることが分かりました。
さらに、“食器を洗っているときにヌルつく”台所用洗剤を用いて食器を洗っている場合には、「体の動きが制限されている」ことが観察されました。特に、頭・肩中央・左ひじの3カ所で、動きの範囲が顕著に狭まっていることが分かりました。
このことから、“食器を洗っているときにヌルつく”台所用洗剤を使用した場合には、食器を落とさないように姿勢が「前かがみ」になり、食器を支えて持っている左ひじや、頭・肩中央の動きが制約されたと考えています。

2-2.食器を洗う時に「前かがみ」になるほど「疲労感」は大きくなる

「食器洗い」行動による心理状態の変化を調べるために、主観的感覚量※1 (VAS)を評価しました。「疲労感」を測定するために、「とても疲れている」と「とても元気」を結ぶ直線間に、現在の気持ちの程度をプロットして得られた測定結果について、食器を洗う時の前傾姿勢との関係性を検証しました。その結果、「食器洗い」中の姿勢と「疲労感」とは相関関係にあり、姿勢が「前かがみ」になるほど食器を洗ったあとの「疲労感」が大きくなることが分かりました。

※1 主観的感覚量(VAS:Visual Analog Scale)
「とても疲れている」と「とても元気」を結ぶ直線間に、現在の気持ちの程度をプロットすることで、被験者の気分変化を検出。「疲労感」「快適感」などを評価しました。

2-3.食器を洗う時の心理状態の変化

また、食器を洗う時の心理状態の変化を評価するために、緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6因子が同時に測定できるテストである気分尺度※2 (POMS)評価も行いました。“食器を洗っているときにヌルつく”台所用洗剤を使った場合には、特に食器洗い後の「活気※3」の項目が有意差を持って低下することが分かりました。つまり、“食器を洗っているときにヌルつかない”台所用洗剤を使うと、「食器洗い」をしても気持ちがマイナスに変化する程度が少ないことを確認できました。

※2 気分尺度(POMS:Profile Of Mood States)
「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の6因子を、被験者の最近の気分や感情の状態を質問紙法(設問数30)で調査しました。

※3 「活気」
POMSにおける活気の判定は、「生き生きする」などの項目から構成されます。数値が低いと活気が失われていることを示唆します。

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