NTTデータ経営研究所はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、「働き方に関する調査」を実施。

昨今、「高度プロフェッショナル労働制」が議論されています。政府は労働時間規制を外し、成果主義に基づき報酬を支払うホワイトカラー・エグゼンプションを「高度プロフェッショナル労働制」と呼び、アベノミクスの「3本の矢」の一つである成長戦略における労働規制改革の目玉として打ち出していますが、インターネット上では労働者側の立場として反対意見もみられます。
そこで、実際に、従業員一人ひとりが「労働時間の長短によらず、成果に基づいて報酬が支払われる働き方」について、層別にどのように考え、どのように感じているかを調査しました。
現在でも、管理職(管理監督者)や裁量労働制等のみなし労働時間制で働いている方には、労働時間の長短によらず、成果に基づいて報酬が支払われる働き方の人がいます(深夜・休日労働等一部を除く)。本調査では現在そういった働き方をしている人の実態や、今の働き方での勤続意向も調査しました。
加えて、「働き方変革」の運用状況とその効用を検証し、「女性活躍推進、高年齢者活躍推進」「社会の多様化」「グローバル化」を進める中で、求められる日本の社会についても考察しました。

【調査結果】

1. 働き方変革への取り組み

1-1. 働き方変革への取り組み企業の割合
◆働き方変革に取り組んでいる企業は、約2割(22.2%)にとどまる。
自社が働き方変革に取り組んでいるかどうかを尋ねたところ、約2割(22.2%)の従業員が「働き方変革に取り組んでいる」と回答している。
※なお、本調査では、働き方変革は多様な使われ方をしているので、本調査では、「働き方を変えて、(1)情報の扱いを変える、(2)コミュニケーションスタイル等の組織風土を変える、(3)作業手順を変えること」と定義し、回答していただいている。

1-2. 働き方変革に取り組んでいる企業の変化
◆働き方変革に取り組んでいる企業の半数以上(50.6%)の従業員が「生産性向上」を実感している。次いで、やらされ感が減少している(48.5%)。
働き方変革に取り組んでいる企業の従業員を対象に、「働き方変革」に取り組む前と比べて、どのような変化があったかを尋ねたところ、半数以上(50.6%)の従業員は「生産性が向上している」と回答している。
次いで、「やらされ感が減少している」(48.5%)、「気持ちの余裕が生まれている」(46.4%)や「家庭との両立が容易になっている」(46.4%)が続いている。
一方で、「健康状態が良くなっている」(41.7%)、「労働時間が減少している」は、約4割(40.9%)にとどまっている。

1-3. 施策の運用状況
◆働き方変革に取り組んでいる企業の従業員が最も継続してほしいと回答した取り組みは、「休暇取得の推進」(37.9%)である。

◆現在、制度等はないが最も取り組んでもらいたい施策は、「全従業員を対象とした働き方に関する意識改革研修の実施」(27.7%)である。
働き方変革に取り組んでいる企業の従業員に取り組み状況を尋ねたところ、「現在取り組んでおり、継続して行ってほしい施策」の上位は、「休暇取得の推進」(37.9%)、「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」(36.2%)、「生産性を向上するための業務改善の実施」(34.5%)である。
「現在取り組んでいる施策で中止してほしい」取り組みの上位は、「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」(12.8%)、「育児・介護中の従業員が短時間勤務で働きやすい人材配置」(11.1%)である。
「制度はあるが、形骸化している施策」は、「ノー残業デーの厳格な実施」(31.9%)、「休暇取得の推進」(30.6%)、管理職を対象とした意識改革やマネジメント研修の実施」(29.4%)である。
また、「制度がないので取り組んでもらいたい施策」の上位は、「働き方に関する意識改革研修の実施」(27.7%)、「ノー残業デーの厳格な実施」(22.6%)、「管理職を対象とした意識改革やマネジメント研修の実施」(22.1%)である。

1-4. 効果的な施策
◆働き方変革に取り組み、生産性が向上したと回答している従業員が、最も継続してほしいと回答した取り組みは、「休暇取得の推進」(47.9%)である。

◆「働き方変革に対するトップのメッセージの発信」も41.2%の従業員が継続してほしいと回答している。
働き方変革に取り組み、「生産性が向上した」と回答している従業員が最も継続してほしい取り組みは、「休暇取得の推進」(47.9%)、「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」(43.7%)、「生産性を向上するための業務改善の実施」(43.7%)や「働き方変革に対するトップのメッセージの発信」(41.2%)である。

1-5. 働き方変革に取り組んでいる企業の特長
◆働き方変革に取り組んでいる企業の従業員の7割以上(71.5%)が、「自分の仕事は一生懸命取り組む価値がある」と感じ、半数以上(52.3%)が自組織の業績はこの2~3年良好であると感じている。

◆女性の活躍推進について、6割の従業員が「職場の女性従業員が活躍している」と回答し、半数以上(51.9%)の従業員が「職場の50歳以上の従業員が活躍している」と回答している。
「自分の仕事は一生懸命取り組む価値があるか」と尋ねたところ、働き方変革に取り組んでいる企業の従業員は、7割以上(71.5%)の従業員が「取り組む価値がある」と回答している(「当てはまる」(21.3%)「どちらかと言えば当てはまる」(50.2%))。
一方で、「取り組んでいない、わからない」と回答した従業員は、「当てはまる」(12.3%)「どちらかと言えば当てはまる」(47.7%)をあわせて53.9%にとどまっている。
「今の会社で5年後10年後も働いていたい」といった勤続意向について尋ねたところ、働き方変革に取り組んでいる企業の従業員の6割以上(60.4%)が、5年後10年後も今の会社で働いていたいと回答している(「当てはまる」(20.4%)「どちらかと言えば当てはまる」(40.0%))。
一方で、「取り組んでいない、わからない」と回答した従業員は、「当てはまる」(9.7%)「どちらかと言えば当てはまる」(30.9%)をあわせて4割程度(40.6%)にとどまっている。
「職場の業績がこの2~3年良好である」といった業績について尋ねたところ、働き方変革に取り組んでいる企業の従業員は、半数以上(52.3%)が自組織の業績は良好であると感じている(「当てはまる」(15.3%)「どちらかと言えば当てはまる」(37.0%))。
一方で、「取り組んでいない、わからない」と回答した従業員は、「当てはまる」(6.8%)「どちらかと言えば当てはまる」(29.0%)をあわせて4割(35.8%)を下回っている。
働き方変革に取り組んでいる企業は、女性の活躍推進について、6割(60.0%)従業員が「職場の女性従業員が活躍している」(「当てはまる」(22.6%)「どちらかと言えば当てはまる」(37.4%))と回答し、半数以上(51.9%)の従業員が「職場の50歳以上の従業員が活躍している」(「当てはまる」(17.4%)「どちらかと言えば当てはまる」(34.5%))と回答している。
一方で、「取り組んでいない、わからない」と回答した従業員は、職場の女性従業員が活躍していると回答した従業員は、35.7%にとどまっている(「当てはまる」(9.1%)「どちらかと言えば当てはまる」(26.6%))。
続いて、職場の50歳以上の従業員の活躍についても、「当てはまる」(10.2%)、「どちらかと言えば当てはまる」(30.9%)を合わせても過半数に満たない(41.1%)。

2. 労働時間と成果に基づく報酬

2-1. 成果に基づく報酬による働き方の実態
◆現在、労働時間の長短によらず、成果に基づいて報酬が支払われる働き方をしている従業員は、約4分の1(24.6%)である。
現在、管理職(管理監督者)や裁量労働制の適用等により、労働時間の長短によらず、成果に基づいて報酬が支払われる働き方で働いているかについて尋ねたところ、成果に基づいた報酬で働いている従業員は、約4分の1(24.6%)であり、約6割(58.4%)が成果に基づく報酬による働き方で働いていない。

◆現在、年収が900万円以上の従業員の半数以上(52.1%)は、労働時間の長短によらず、成果に基づいて報酬が支払われる働き方をしている。
成果に基づいて報酬が支払われている働き方で働いている従業員を報酬(年収)別にみると、年収が300万円以下では15.4%、300万円以上500万円未満は、23.4%、500万円以上700万円未満は25.3%、500万円以上700万円未満は30.7%、900万円以上は52.1%となっている。

※年収について、年俸制以外は平均的な残業時間を含めている。

◆労働時間別にみると、1カ月の労働時間の平均が200時間を超えている従業員のうち、30%以上の従業員が成果に基づいて報酬が支払われる働き方をしている。
成果に基づいて報酬が支払われている働き方をしている従業員を現在の労働時間別にみると、1カ月の労働時間が120時間未満では23.9%、120時間以上140時間未満では29.0%、140時間以上160時間未満では21.8%、160時間以上180時間未満では19.2%、180時間以上200時間未満では27.4%、200時間以上220時間未満では32.1%、220時間以上では31.1%となっている。
1カ月の労働時間の平均が200時間を超えている従業員のうち、30%以上の従業員が成果に基づいて報酬が支払われる働き方をしている。

◆職種別にみると、「販売・営業職ならびに研究・開発・デザイン・設計職、システムエンジニア」の約3分の1(33.3%)は、成果に基づく報酬による働き方をしている。
職種別にみると、成果に基づいて報酬が支払われている働き方をしている従業員は、「事務職」は21.8%である。
「研究・開発職、デザイン・設計職、システムエンジニア」は、「販売・営業職」の30.1%を上回り、3分の1(33.3%)、が成果に基づいて報酬が支払われている働き方をしている。

2-2. 成果に基づく報酬による働き方の継続意向
◆成果に基づいて報酬が支払われる働き方で働いている従業員のうち、約8割(78.1%)が同じ働き方を続けたいと回答している。
労働時間によらず、成果に基づく報酬による働き方で働いている従業員のうち、「働き続けたい」(40.4%)、「どちらかと言えば働き続きたい」(37.7%)と回答した従業員は、あわせて約8割(78.1%)に達する。
「働き続けたくない」と回答した従業員はわずか3.5%であり、「どちらかと言えば働き続きたくない」(8.8%)をあわせても、12.3%である。

◆成果に基づく報酬による働き方で働いている従業員を報酬別にみると、300万円以上500万円未満と900万円以上の従業員は、8割を超える(81.2%、81.6%)従業員が同じ働き方を続けたいと回答している。
労働時間によらず、成果に基づく報酬による働き方で働いている従業員のうち、300万円以上500万円未満と900万円以上の従業員は、働き続けたい(46.5%、42.1%)、どちらかと言えば働き続きたい(34.7%、39.5%)と回答し、あわせて8割を超えている(81.2%、81.6%)に達する。
「働き続けたくない」と回答した従業員は、300万円以下では、「どちらかと言えば働き続きたくない」(16.2%)、「働きたくない」(2.7%)をあわせて18.9%であり、500万円以上700万円未満は15.8%である(働き続けたくない(7.0%)、どちらか言えば働きたくない(8.8%))。

◆成果に基づいて報酬が支払われる働き方で働いている従業員を現在の労働時間別にみると、120時間以上140時間未満の従業員と200時間以上220時間未満の従業員は、いずれも3割が成果による報酬で働き続けたくないと回答している。

◆一方で、現在の労働時間が220時間以上の従業員は、「働き続けたくない」と回答している従業員は、わずか4.3%である。
労働時間によらず、成果に基づく報酬による働き方で働いている従業員のうち、120時間以上140時間未満の従業員と200時間以上220時間未満の従業員は、いずれも3割が成果による報酬で「働き続けたくない」と回答している。
220時間以上働いている従業員は、成果に基づく報酬による働き方で「働き続けたい」(39.1%)、「どちらかと言えば働き続けたい」(39.1%)と回答しており、あわせて約8割(78.2%)に達している。
一方で、働き続けたくないと回答している従業員は、「働き続けたくない」(4.3%)、「どちらかというと働き続けたくない」(8.7%))をあわせても、わずか13.0%である。

2-3. 成果に基づく報酬による働き方を継続したい理由と継続したくない理由
◆成果に基づいて報酬が支払われる働き方を継続したい理由として、6割を超える従業員が「重労働になることは少なく、報酬が割に合っている」、「成果が適正に評価され、報酬に反映されている」、「ワーク・ライフ・バランスが実現できている」を挙げている。

◆わずかな人数(32名)であるが、成果に基づく報酬による働き方を継続したくない従業員の約7割(71.9%)が、「成果が適正に評価され、報酬に反映されていない」ことを理由に挙げている。
成果に基づく報酬による働き方を継続したい理由は、6割を超える従業員が「重労働になることは少なく、報酬が割に合っている」、「成果が適正に評価され、報酬に反映されている」、「ワーク・ライフ・バランスが実現できている」を挙げている。
一方で、わずかな人数(32名)であるが、成果に基づく報酬による働き方を継続したくない従業員の約7割(71.9%)が、「成果が適正に評価され、報酬に反映されていない」と回答し、「過重労働になることは少なく、報酬が割に合っている」(62.5%)を上回っている。

2-4. (現在は時間に基づく報酬)成果に基づく報酬による働き方への志向
◆現在は労働時間に基づいて報酬が支払われる働き方(通常の働き方)で働いている従業員のうち39.4%が成果に基づく報酬で働きたいと回答し、働きたくないと回答した従業員は、35.8%である。

◆働きたくないと回答した従業員の約8割が、「過重労働になることが多く、報酬が割に合わなくなると思う」、「成果が適正に評価され、報酬に反映されないと思う」、「ストレスが高まると思う」と回答している。
現在は労働時間に基づく報酬で働いている従業員のうち39.4%が、成果に基づく報酬で働きたいと回答している。働きたくないと回答した従業員は、35.8%である。
働きたいてみたくないと回答した従業員の約8割が、「過重労働になることが多く、報酬が割に合わなくなると思う」(82.4%)、「成果が適正に評価され、報酬に反映されないと思う」(81.4%)、「ストレスが高まると思う」(80.1%)と回答している。

3. 理想の労働時間と10年後20年後に求められる社会

3-1. 理想の労働時間
◆現在の労働時間が理想であると回答した従業員は、35.3%であり、現在よりも労働時間を減らしたいと考える従業員は、約6割(58.1%)に達している。
現在の報酬と同じ単価を前提として、現在の労働時間を100%とした場合の理想の労働時間を尋ねたところ、現在の労働時間が理想であると回答した従業員が35.3%と最も多く、次いで、34.0%の従業員が現在の労働時間と比べて70%以上100%未満の労働時間が理想と回答している。
現在の報酬と同じ単価を前提にした場合、現在よりも労働時間が増加すると収入が増えることになるが、現在よりも労働時間が増加することを理想とする従業員は、わずか6.5%である。一方で、現在よりも労働時間の減少を理想とする従業員は、約6割(58.1%)に達する。

◆報酬別、労働時間別に理想の労働時間をみても、どの層も90%以上の人が現在と同じもしくは現在よりも労働時間が減少することを理想としている。
報酬別に理想の労働時間をみても、現在と同じ報酬(32.0%~47.9%)と70%以上100%未満(32.0%~38.2%)が各層の6割以上を占め、どの層も9割以上の従業員が現在と同じもしくは現在よりも労働時間が減少することを理想としている。
現在の労働時間別に理想の労働時間をみても、現在と同じ報酬(17.6%~41.1%)と70%以上100%未満(23.6%~52.6%)が各層の約6割を占め、どの層も9割以上の従業員が現在と同じもしくは現在よりも労働時間が減少することを理想としている。
 200時間以上220時間未満の従業員は、その半数以上(52.6%)が70%~100%未満の労働時間を理想としている。

3-2. 10年後20年後に求められる社会
◆10年後20年後に求められる社会として、57.0%の従業員が「労働時間によらず、成果・パフォーマンスによって高い報酬が得られる社会」と回答している。
「10年後、20年後の日本がどのような社会になっていてほしいか」と尋ねたところ、「男女が共働きであるとともに、共同で家事・育児・介護等が担える社会」の肯定回答が最も多く、「そう思う」(18.4%)、「どちらかと言えばそう思う」(44.8%)であり、あわせて約6割を超える(63.2%)。
一方、「男は仕事、女は家庭を担う役割分担が明確な社会」を肯定する回答は、21.5%と少ない(「そう思う」(4.6%)、「どちらかと言えばそう思う」(16.8%))。
「労働時間によらず、成果・パフォーマンスによって高い報酬が得られる社会」を求めている従業員は、57.0%(「そう思う」(13.3%)、「どちらかと言えばそう思う」(43.7%))であり、「成果・パフォーマンスによらず、長く働けば働いた時間だけ高い報酬が得られる社会」を求めている従業員は、34.3%(「そう思う」(7.6%)、「どちらかと言えばそう思う」(26.7%))にとどまっている。


【調査概要】
・調査対象:NTTコム リサーチ クローズド調査
・調査方法:非公開型インターネットアンケート
・調査期間:2015年3月13日~2015年3月17日
・有効回答者数:1,058人
・標本設計:従業員規模10名以上、経営者・役員を含む雇用者(正社員)、20歳以上のホワイトカラー職種を対象。なお、男女は均等に割り付け、役職は、一般社員と管理職が7:3で割り付け。

本調査では、一般社員クラスと係長・主任クラスを「一般社員」、課長クラス、事業部長・部長クラス、経営者・役員クラスを「管理職」という。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[NTTデータ経営研究所]
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