ロシア進出日系企業実態調査 

2015年12月15日
ジェトロは2015年10~11月にかけて、ロシアに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施。

【調査結果概要】

(1)営業利益改善が増加するも、黒字見込みは半数に届かず。「為替変動」が要因。

・2015年の営業利益見込みは「黒字」が最も多かった(49.5%)が、前回(2014年度調査)と比較して3.7ポイント減。過去3回の調査で初めて半数を割った。他方、前年比での改善・悪化の割合は、「改善」が前回調査よりも微増し35.5%となった。

・営業利益の改善要因として、「現地市場での売上増加」は前回調査から大きく減少(63.3%から39.4%)。市場の冷え込みを反映した形だ。一方、コストの削減(「その他支出(管理費、光熱費、燃料費等)の削減」、「調達コストの削減」)が前回に比べ大きく回答数を伸ばした。また、値上げで営業利益の改善を図る声も聞かれた。

・悪化要因としては、「為替変動」が最も多かった(71.0%)ほか、「調達コストの上昇」など為替変動に関連する項目も回答企業が増加した。

・2016年の営業利益は2015年と比べて「改善」を見込む企業が最も多かったが、前回調査からは5.9ポイントの下落。ロシア市場の回復に対する見方は依然として慎重である。これに対し「横ばい」は前回調査から5.7ポイント増加した。「改善」要因は依然として「現地市場での売上増加」が最も多いが、「販売効率の改善」や「支出の削減」など、コスト削減も引き続き改善要因として指摘されている。「悪化」要因には、「現地市場での売上減少」や「為替変動」が挙がった。


(2)今後の事業展開は「現状維持」が大幅増。積極的な展開は難しく、我慢のとき。

・今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した企業は44.6%と、前回より減少。他方、「現状維持」は50.0%と大幅に増加した。

・拡大の理由は、「売上の増加」が最多の80.5%、「成長性・潜在力の高さ」も大きく伸びた。依然としてロシア市場の潜在性に対する期待が高いことがうかがわれる。


(3)経営現地化の取り組みは鈍化傾向。

・経営現地化の取り組みとして「現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化」、「現地人材の登用」が多く挙がったが、前回からはそれぞれ6.9ポイント、12.4ポイント減。他の取り組みも軒並み減少する一方、「現地化の取り組みはしていない」が前回より6.6ポイント増。現地化の取り組みの鈍化傾向が顕著となった。

・経営現地化の問題点では、依然として「現地人材の能力・意識」、「幹部候補人材の採用難」が多いが、それぞれ顕著に減少した。現地サイドの課題には一定の改善が見られる。


(4)経営上の主な問題は「不安定な為替」に起因。

・投資環境全般でのメリットは、「市場規模/成長性」の回答が最も多かった。前回、前々回よりは低下しているが、依然としてロシア市場の魅力は「潜在的市場性」であることが浮き彫りとなった。投資環境全般のリスクは「不安定な為替」との回答が最も多く、ルーブル安の進行に伴う影響を反映する結果となった。他方、「人件費の高騰」 はその割合を大きく下げるなど、逆の意味で為替変動の影響を受ける例も見られた。

・財務・金融・為替面でも、「現地通貨の対ドル/ユーロ為替レートの変動」が最も多くなったほか、「現地通貨の対円為替レートの変動」も前回より13.3ポイント増となり、ルーブル下落の影響が多方面で見られる。他方、金融システム、規制面では改善の兆しが見られる部分もある。

・現地生産の課題でも、「調達コストの上昇」が23.7ポイントの大幅増となり、為替変動の影響を反映している。

・貿易制度面の問題点では、「手続きの煩雑さ」、「通関に要する時間」を指摘する声が依然として多い。他方、「関税率」、「検査制度」、「非関税障壁」など、前回に比べ大きく改善の兆しが見られる項目もあった



【調査概要】
調査実施時期:2015年10月7日~11月6日
アンケート送付先:109社(回答企業数93社(うち製造業26社、非製造業67社)、有効回答率85.3%)
質問項目:(1)経営状況、(2)今後1~2年の事業展開、(3)経営現地化の取り組み、(4)経営上の課題など

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[ジェトロ]
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