2015年度 米国・カナダ進出日系企業実態調査 

2015年11月26日
ジェトロは、米国およびカナダに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施。
※米国は製造業のみ、カナダは製造業および非製造業を対象としています。

【調査結果】

米国進出日系企業実態調査の結果

1.15年の営業利益について黒字を見込む企業は8割を維持した。

・米国進出日系企業の営業利益は、15年は回答企業の81.4%が黒字を見込む。前年の82.3%より微減となったものの、好調さは維持している。南部企業では黒字比率が落ちたものの、設備投資や新製品開発に伴うコスト増を要因とする回答が多く、積極的な事業展開の表れとも言える。

・営業利益が前年比で「改善」するとの回答割合は47.7%となり、前年の49.8%からは減少した。また、営業利益が「悪化」するとの回答は4.0ポイント増えた。

・今後1~2年の事業の拡大を視野に入れる回答企業は56.7%と、前年から3.6ポイント減少した。拡大する機能として、販売、生産(高付加価値品)が主に挙がった。業種別では、医療機器、食品・農水産加工、化学品・石油製品において「拡大」とする率が高い。輸送機器や同部品では「拡大」とする回答は50%を切っており、一段落した模様。

・現地化の取り組みにおいては例年と同じく、「現地人材の登用や育成」に取り組むとする回答が多かった。現地従業員数については、過去1年間と今後の予定について「増加」と回答した企業数が4割強を維持し、日本人駐在員は総じて「横ばい」との回答になった。


2. 調達、生産、販売の三分野において米国での地産地消を強化する方向。

・原材料・部品の調達については、米国内からの調達比率は58.3%となった(現地日系企業18.4%、地場企業37.6%、その他外資企業2.3%)。次いで、日本(25.9%)からの比率が高かった。今後の方針としては、「米国地場企業」、「メキシコ」からの調達を拡大するとする回答数が多い。

・米国向け製品の生産地について、国別の割合をみると、米国は72.5%と前年と同レベルだった。今後の生産体制として日本は、拡大-現状維持-縮小が16.2-59.2-24.6(%)となった。前年の10.2-56.2-33.6(%)より日本国内回帰度合いが強まったが、米国向け製品は基本的に米国で生産する企業が大勢を占める。

・製品の販売先は79.8%が米国向けとなった。今後、販売を拡大する先としては、メキシコが53.9%と、米国(54.2%)とほぼ同率の回答を集めた。


3.「賃金の上昇」、「医療保険の負担増」など従業員に係る経費負担増は引き続いて課題に。

・コスト上昇要因となる経営上の課題については、「賃金(給与・賞与)の上昇」、「労働者の確保」、「医療保険の負担増」が上位3項目として挙がった。賃金上昇(64.1%)は引き続き筆頭要因ではあるが、前年(74.9%)と比べると目立って減っており、上昇ペースも少し落ち着いた可能性がある。原油安に伴い、「原材料・資源・コモディティ価格の上昇」を挙げる声は24.3%と少なかった。

・コスト上昇要因となる関連規制を挙げる声の中では、「環境規制」が31.3%と最も多かった。


4.環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への期待。

・前年と比較して、多くのFTAにおいて利用率が上昇した。特にカナダ、メキシコ、韓国との輸出入においては高い利用率が示された。米韓FTAの利用率は輸出(34.5%)、輸入(52.9%)となった。

・TPPを利用しての日米間の貿易については、未発効ではあるものの、「利用を検討中」という段階の企業が4割を超え(輸出42.9%、輸入45.3%)、高い関心が集まった。ベトナム、マレーシアからの輸入に際しては「利用を検討中」の企業が5割を超えた(※本調査は、協定文は未公開の段階で実施された)。

・TPPの分野のうち何に期待するかについては、「税関当局および貿易円滑化」と「物品市場アクセス」を挙げる声が多い。


5.突発事項の影響(原油安、西海岸の港湾騒動)。

・原油安の影響については、「プラス」(48.4%)が「マイナス」(12.0%)を大きく上回った。「原材料価格の低下」、「燃料費の低下」、「輸送費の低下」の3点に回答が多く集まった。

・2014年秋から2015年にかけて続いた西海岸の港湾騒動は73.1%の回答企業において「影響があった」結果となった。「航空輸送へ切り替え」、「貨物の前倒し」、「他港へのシフト」といった対応策が多く取られた。ただ騒動が終わった今、半分以上の企業は今後の体制について「特に検討していない」と回答しており、「他港へのシフト」や「現地調達の拡大」に至る見直しにはなっていない模様である。


6.市場拡大を見込む地域としてテキサス州とカリフォルニア州への関心が高い。

・今後2~3年で市場拡大を見込む産業分野は、「医療」、「環境」の上位2つは前年と同じながら、「石油・天然ガス」は回答数を大きく減らした。一方で、モノのインターネット(IoT)への関心の高まりからか、「IT・クラウド・モバイル」は順位を上げた。

・市場拡大を見込む地域では、テキサスとカリフォルニアの上位2州は同じだった。特にテキサスは、同州の回答企業数が42である中で239社が選択し、州外の企業の期待が多く表れている。これに続く第2集団(ジョージア、オハイオ、ニューヨーク、テネシーなど)は多少の順位変動はあるものの、概ね前年と同じだった。


カナダ進出日系企業実態調査の結果

1.黒字比率は微増。営業利益は「悪化」した企業が「改善」を上回る、資源価格下落の影響も。

・カナダ進出日系企業の営業利益は、15年は回答企業の76.0%が黒字を見込む。前年の74.4%よりも微増した。

・営業利益が前年比で「改善」した企業は4.0ポイント増えた(42.9%→46.9%)半面、「悪化」した企業も4.3ポイント増えた(21.1%→25.4%)。「販売数量は増えたが市況悪化で金額は減った」、「資源価格下落」、「特恵関税制度が使えなくなり仕入れコストが上昇した」などの声が挙がっている。

・今後1~2年の事業展開の方向性では、「拡大」が41.5%となった。業種別でみると製造業は35.3%のところ、非製造業は48.4%と高く事業拡大の意欲が表れている。


2.駐在員の語学力は米国ほど大きな課題とはならず。

・経営の現地化を進める上での課題としては、米国進出日系企業と異なり、「日本人駐在員の語学力(英語・現地語)」を挙げる声は18.0%と少ない。


3.現地調達比率は前年よりも上昇。

・原材料・部品の調達については、カナダ国内からの調達比率が43.0%となり(現地日系企業11.5%、地場企業29.0%、その他外資企業2.5%)、前年よりも4.5ポイント上昇した。

・製品の販売先は67.4%がカナダ向け、13.2%が米国向けという分布となった。


4.カナダは為替リスクが筆頭のコスト上昇要因に挙がる。

・コスト上昇要因となる経営上の課題については、「カナダドル/米ドル為替リスク」が筆頭に挙がり、「賃金(給与・賞与)の上昇」がその後に続いた。カナダも米国と同様、賃金上昇は主要課題ではあるものの、少しその度合いが緩和している表れと捉えられる。また関連規制を挙げる声の中では、「日本人駐在員のビザ」を挙げる声が26.8%で最も多かった。

・FTAの利用については、NAFTA(米国、メキシコ)との輸出入において前年と同様に50%を超える高い利用率が示された。1月に発効したカナダ韓国FTAは42.9%(7社中3社)の利用率となった。

・TPPは日本との輸出入で「利用を検討中」の企業が3割を超え(輸出30.8%、輸入37.8%)、米国進出日系企業同様に高い関心が集まった。TPPの分野のうち何に期待するかにおいては、カナダ進出日系企業も米国進出日系企業と同じく、「税関当局および貿易円滑化」と「物品市場アクセス」を挙げる声が多い。

・原油安の影響については、「プラス」と「マイナス」がそれぞれ32.0%となった。エネルギー産業が経済に占める割合が高いカナダでは、原油安をマイナスと捉える企業が米国より多い結果となった。

・今後2~3年で市場が拡大すると見込む産業分野は、「環境」、「医療」、「健康」、「クラウド、モバイル」の順に回答が集まった。「シェールガス・オイル」を挙げる声は24.8%と、前年比で半減した。



【調査概要】
調査方法・実施時期:アンケート調査、2015年9月11日~10月16日
アンケート送付先:
 米国進出日系企業(製造業のみ)1,137社(回答企業数639社、有効回答率56.2%)
 カナダ進出日系企業(製造業および非製造業)208社(回答企業数130社、有効回答率62.5%)
質問項目:(1)企業業績、(2)今後の事業展開の方向性、(3)変化するビジネス環境への対応等

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[ジェトロ]
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