2015年度中南米進出日系企業実態調査 

2016年02月15日
ジェトロは、中南米7カ国(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、アルゼンチン、ブラジル)に進出している日系企業を対象に、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。

【調査結果概要】

(1)自動車産業活況で際立つメキシコ。業況感と事業拡大意欲は世界の主要進出先で首位

メキシコの進出日系企業の業績が好調だ。2015年の業況感を表すDI値(注)および今後1~2年の事業展開の方向性について「拡大」と回答した企業の割合を、回答数30社以上の世界37カ国で比較すると、いずれもメキシコは首位となった。その背景として、第1に、メキシコに進出する日系企業の多くが自動車産業に関連する企業であること、第2に、メキシコは主に米国市場向けの自動車の生産、輸出拠点となっており、堅調な米国経済の恩恵を受けていることがあると考えられる。
(注)「改善」と回答した割合から「悪化」と回答した割合を引いた数値。

(2)中南米の業況感は原油価格、現地通貨安により産油国を中心に伸び悩む
他方、中南米全体を見渡すと、2015年は、中国経済の減速や米国の利上げ(観測)などを背景とする資源価格の下落、それに伴う中南米諸国の現地通貨安が、南米の資源国に進出している日系企業の景況感を悪化させた。資源ビジネスを行なっている企業のみならず、基幹部品を輸入しなければならない製造業、消費財を輸入して現地販売を行なっている企業など広い業種に影響は及んだ。メキシコも産油国だが、進出日系企業の多くが自動車産業などの輸出製造業に関連する企業のため、原油価格の下落や現地通貨安による景況感の減退はみられなかった。

(3)ブラジルのビジネス環境は一層厳しく
今年8月にオリンピック開催を控えているブラジルの投資環境面のリスク(問題点)をみると、国営石油会社ペトロブラスが絡んだ政界汚職問題を受けて「不安定な政治・社会情勢」(74.3%)が前年調査(37.5%)から増加したことが注目される。政治の混乱は、財政改革の遅れ、ひいては現地通貨レアルの大幅な下落につながった。その結果、「不安定な為替」(82.4%)が、前回調査(45.0%)と比べて急増した。通貨下落は、金利引き上げの背景となり、内需縮小にも影響している。輸入コストが上昇した分を販売価格に転嫁できない企業は特に苦しい状況にある。他方、通貨安を輸出増加に活かす動きもみられ、そうした企業は原材料のブラジル国内での調達に動いている。

(4)アルゼンチンのビジネス環境改善への期待が高まる
アルゼンチンにおける進出日系企業の2015年の業況感(DI値32.3)が前回調査(同マイナス10.7)から大きく改善し、業況感では中南米の中でメキシコに次いで2位となった。また、今後1~2年の事業展開の方向性についても、「拡大」(45.2%)が前回調査(21.4%)から大きく増加し、「縮小」と回答した企業が前回調査では14.3%だったのに、今回はゼロであった。
2015年もアルゼンチン経済の低迷は続き、外貨規制や輸入制限措置などが企業活動を制限したため、2015年の営業利益見込みが前年比で「改善」と回答した企業の多くは「人件費の削減」(53.3%)や「その他支出の削減」(33.3%)などリストラを断行、我慢の経営により営業利益を改善させたとみられる。こうした厳しい経営環境の中、進出企業が期待を寄せているのが政権交代による経済政策の転換だ。2015年11月、国内経済開放経済への転換による経済立て直しを主張してきた野党・マウリシオ・マクリ氏が当選し、12月10日に新政権が発足した。今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」する理由の中で「規制の緩和」(57.1%)という回答は中南米で突出して高い。実際に新政権は、為替や貿易面で新たな施策を次々に打ち出しており、進出日系企業のビジネス環境改善への期待は高まっている。


【調査概要】
調査方法・実施時期:アンケート調査、2015年10月26日~11月29日
アンケート送付先:在中南米進出日系企業776社(回答企業数400社、有効回答率51.5%)
質問項目:(1)企業業績、(2)今後の事業展開の方向性、(3)経営上の課題とその対応等

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[ジェトロ]
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