クライシスマネジメントに関する企業の実態調査2016(日本の上場企業対象) 

2016年03月23日
トーマツは、「クライシスマネジメントに関する企業の実態調査2016」の結果を公表。この調査は、日本の上場企業におけるクライシスマネジメントの認知・認識とその準備・対応策の現状を把握することを目的に実施し、440社から回答を得た。その内、247社については海外子会社に関しても回答を得た。

1.総括
クライシスマネジメントとは、組織の戦略目標、レピュテーション、その組織の存在をも著しく毀損させる可能性のある大規模な、もしくは複合的な事象(以下、クライシス)が発現した場合、損失を最大限抑えるように管理し、影響の低減を図る活動である。2回目の調査となる今回、日本の上場企業および海外子会社におけるクライシスの経験数とその準備・対応策について、以下のポイントが明らかとなった。

・日本の上場企業、海外子会社ともに、企業におけるクライシスの経験数は前回調査[1]から引き続き増加傾向
・日本の上場企業が直近で経験したクライシスで最も多かったのは「システム関連」(46件、複数回答)
・日本の上場企業の6割程度が全社的なクライシスマネジメントプランの策定に前向きである
・クライシスに備え、規程や対処手順を整備している日本の上場企業の割合は8割程度と高いが、訓練まで実施している企業の割合は6割程度である

[1] 2015年2月16日「クライシスマネジメントに関する企業の実態調査結果」を公表。2003年から2014年までのクライシスについて調査し、日本の上場企業、海外子会社ともに、クライシスの経験数は増加傾向にあること等が明らかとなった。​

2.クライシスの経験
2014年および2015年のクライシスの経験状況について聞いたところ、日本の上場企業では33%の企業が、また、海外子会社では18%の企業が、何らかのクライシスを経験したと回答した。

①   日本の上場企業におけるクライシスの経験
日本の上場企業が2014年および2015年に経験したクライシスの件数は、155件から201件へと3割程度増加した。中でも「システム関連」の増加が目立った。2014年において最も多かったのが「製品関連」(サプライチェーン寸断、リコール、品質不良、設備事故等)で、次いで「システム関連」(サイバー攻撃、情報漏洩、ウイルス感染等)、「自然災害関連」(地震、台風、疫病等)となった。2015年においては、「システム関連」が第1位となり、「製品関連」、「自然災害関連」と続いた。また、経験したクライシスの件数は、2003年から2014年までのクライシスについて調査した前回調査から引き続き増加傾向にあることが明らかとなった。

②   海外子会社におけるクライシスの経験
海外子会社が2014年および2015年に経験したクライシスの件数は、36件から53件へと5割程度増加した。2014年においては「経済・法律関連」(金融危機、訴訟被害、財政難、労使問題、知的財産の侵害被害、規制等)が第1位となり、「製品関連」および「政治関連」(国際紛争、テロ等)が同数で第2位となった。2015年においては、「製品関連」および「政治関連」が他を大きく引き離し、第1位および第2位となり、「自然災害関連」および「経済・法律関連」が同数で第3位となっている。「政治関連」は、日本の上場企業が経験したクライシスでは第7位であり、海外子会社における順位と大きく異なっている。また、経験したクライシスの件数は、2003年から2014年までのクライシスについて調査した前回調査から引き続き増加傾向にあることが明らかとなった。

さらに、クライシスを経験した地域は東南アジアに集中していることが分かった。前回の調査では東アジアおよび東南アジアが多かったが、変化が見られた。「経済・法律関連」および「環境関連」を除く全てのクライシスで、東南アジアがクライシスを経験した地域として第1位となった。また、「経済・法律関連」は、北米がクライシスを経験した地域として第1位となった。

3. 日本の上場企業がマネジメント対象としているクライシスの種類
日本の上場企業がマネジメント対象としているクライシスの種類は、「システム関連」(83.2%)、「不正関連」(77.5%)および「自然災害関連」(74.3%)の割合は高いが、「政治関連」(29.5%)の割合は低い。経験数の多いクライシスがマネジメント対象となっている傾向があり、企業は発生可能性の高いクライシスをマネジメント対象としていることがうかがえる。

4.日本の上場企業および国内・海外子会社におけるクライシスマネジメントプランの策定
日本の上場企業において、「全社的なクライシスマネジメントプランを策定」している企業(46.4%)、もしくは「全社的なプラン策定を検討中」(16.4%)の企業は6割程度であった。
また、クライシスマネジメントプランを策定をしていない、または不明の企業の割合は、海外子会社、国内子会社、日本の上場企業の順に高く、クライシスマネジメントプランの策定は子会社まで広まっていないことが分かった。

5.クライシスへの準備状況
日本の上場企業において、クライシスに備えるために、「クライシスマネジメントチームの組織構造に関する規程の整備」(78.0%)、「具体的な対処手順の整備」(80.6%)および「情報の収集、管理および伝達のプロセスの整備」(84.9%)をしていると回答した企業の割合は高いが、これと比べると「クライシスマネジメントを組織へ浸透させるための訓練の実施」(61.2%)をしていると回答した企業の割合はさほど高くはなかった。また、「クライシス発生時において利用する外部専門家の選定基準の整備」(27.3%)および「パブリック・リレーション(PR)会社およびコンサルティング会社等の外部専門家の利用」(31.3%)をしていると回答した企業の割合はいずれも3割程度という低い水準であった。

また、海外子会社についても、日本の上場会社と同様に、規程や対処手順を整備している割合と比べると、訓練や外部専門家の利用まで実施している企業の割合は高くなかった。


【調査概要】
本調査は、有限責任監査法人トーマツが2016年1月~2月までに日本の上場企業に対して実施したアンケート調査結果に基づくものである。有効回答数440社。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[トーマツ]
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