オリンピアンのキャリアに関する実態調査 

2016年01月07日
笹川スポーツ財団(SSF)では、2020 年東京オリンピック・パラリンピック開催およびその後の社会において、わが国のオリンピアンがより効果的にスポーツ界に貢献できる環境の整備に向けて、彼らのキャリアに関する基礎資料の収集が重要と考え、このたび報告書を取りまとめました。本調査には、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、特定非営利活動法人日本オリンピアンズ協会(OAJ)にご協力をいただき、OAJ 登録会員 965 人を対象に、473人から回答を得ました。

本『オリンピアンのキャリアに関する実態調査』報告書では、夏季・冬季オリンピアンの①基本属性(オリンピック出場回数、オリンピック出場年)、②競技経験(オリンピック出場競技の競技実績、オリンピック競技の開始と継続の要因など)③競技にかかる経費(経費の管理者、競技別の年間経費など)④引退後のキャリア(引退の理由、引退後の競技との関わりなど)の調査結果を示しています。

【主なポイント】

1.引退理由
オリンピアンの引退理由は、夏季大会・冬季大会ともに、「仕事を優先するため」の割合が最も高く、「年齢による体力的な問題」「自己の成績に満足したため」と続く。また、冬季大会出場オリンピアンの引退理由として「金銭的な問題」が比較的高い割合を示した。

2.競技にかかる経費の自己負担額
競技を継続するために 1 年間にかかる経費の自己負担額を、夏季と冬季の大会別・性別の平均でみると、夏季大会出場の男性が 206.2 万円、女性が 250.7 万円。冬季大会出場の男性が 245.4 万円、女性が460.9 万円であった。

3.引退後の競技との関わり
引退したオリンピアンの約 6 割が競技団体の役職員や強化スタッフまたは指導者として従事し、愛好者として続けている約 2 割も含めると、約 8 割のオリンピアンが、現在も競技との関わりをもっている。

【調査結果】

1.オリンピアンの引退理由は、夏季大会・冬季大会ともに、「仕事を優先するため」の割合が最も高く、「年齢による体力的な問題」「自己の成績に満足したため」と続く


図 14 に、夏季大会への出場経験をもつオリンピアンの引退理由を示した。全体で最も割合の高い回答は「仕事を優先するため」(46.0%)で、以下、「年齢による体力的な問題」(45.5%)、「その他」(18.6%)、「自己の成績に満足したため」(18.1%)、「けが」(14.1%)、「競技を楽しめなくなったため」(8.8%)、「金銭的な問題」(6.2%)と続く。ただし、「仕事を優先するため」では、男性の 57.1%に対し女性が 18.6%と大きな差があり、男性の割合が全体を引き上げたことがわかる。相対的に高い割合を示したのは「年齢による体力的な問題」で、男女とも約半数が引退理由に挙げた。一方、女性の引退理由で男性を大幅に上回った項目は、「自己の成績に満足したため」や「競技を楽しめなくなったため」といったいわゆる競技に対する完全燃焼感、あるいは成績の不振等から起こる心理的な要因がみられる。

2.競技を継続するために 1 年間にかかる経費の自己負担額を、夏季と冬季の大会別・性別の平均でみると、夏季大会出場の男性が 206.2 万円、女性が 250.7 万円で、冬季大会出場の男性が 245.4 万円、女性が 460.9 万円であった

表 21 に、競技を継続するための年間経費を夏季と冬季の大会別に示した。ここでは、対象とする年度に一定の統一性をもたせるため、オリンピックに出場した前年度に個人で負担した経費の総額を対象とした。なお、オリンピックへ複数回の出場経験がある場合は、最後に出場したオリンピックの前年度の経費をたずねた。夏季・冬季の両大会出場 1 人を除き、回答を得た 325 人のうち、夏季大会への出場者では、平均額が男性で 206.2 万円、女性で 250.7 万円と女性が男性を上回った。最高額は男性の 4,500万円(馬術)であった。冬季大会への出場者では、平均額が男性で 245.4 万円、女性で 460.9 万円と、女性が男性を 2 倍近く上回ったが、最高額は男女とも 3,000 万円だった。経費の高い順に競技をみると、前述の馬術に続き、スキー、スケート、セーリング、自転車、ウェイトリフティングで 1,000 万円を超える自己負担額があった。

3.引退したオリンピアンの約 6 割が競技団体の役職員や強化スタッフまたは指導者として従事し、愛好者として続けている約 2 割も含めると、約 8 割のオリンピアンが、現在も競技との関わりをもっている。

オリンピックに出場した競技との現在の関わりをみると、「競技団体役職員として」が 19.7%と最も多く、以下「愛好者として」(18.0%)、「地域スポーツ指導者として」(15.8%)、「強化スタッフとして」(13.5%)、「部活動指導者として」(10.6%)の順であった(図 20)。約 8 割のオリンピアンが、競技団体に従事して競技の普及や強化に携わったり、地域のスポーツ現場で指導者として活躍したり、自身も愛好者として競技を続けたりしている。一方、競技とは「関わっていない」オリンピアンは 2 割にのぼった。


【調査概要】
・本調査の目的:2020 年東京オリンピック・パラリンピック開催およびその後の社会において、オリンピアンがより効果的にスポーツ界に貢献できる環境の整備を進めるにあたり、オリンピアンの現状を包括的に把握することの重要性に鑑み、わが国のオリンピアンのキャリアに関する基礎資料の収集を目的とした。
・調査対象:(特非)日本オリンピアンズ協会に登録のある会員 965 人。
・調査期間:2014 年 10 月~11 月
・調査方法:郵送法による質問紙調査
・調査協力:(公財)日本オリンピック委員会、(特非)日本オリンピアンズ協会

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[笹川スポーツ財団]
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