熊本地震被災地における避難状況およびニーズ調査 

2016年05月17日
サーベイリサーチセンターは、東京大学総合防災情報研究センターの監修で、「平成28年(2016年)熊本地震被災地における避難状況およびニーズ調査」を実施しました。

【調査の背景】

平成28年(2016年)熊本地震では、2回の震度7に襲われ、また余震が多発し、多くの人的・物的被害が発生しております。
本調査では、益城町災害対策本部にご了承をいただき、町内の避難場所で生活されている皆様を調査対象として、4月14日の前震発生以降の被災と避難の状況、避難場所での生活ニーズ、今後の居住意向などを探ることを目的として実施しました。

【調査結果の概要】

▼人的被害は前震発生時に旧耐震基準で2割以上、家屋の倒壊は本震発生時に旧耐震基準で3割以上
・「家屋が倒壊した」は4月14日の前震発生時で8.0%であったが、本震発生時は19.3%と、10ポイント以上増加している。
・4月16日の本震発生時では、「家が倒壊した」が旧耐震基準である昭和56年5月以前の家屋で35.0%と、昭和56年6月以降の新耐震基準の家屋(12.6%)と比較して高くなっている。
・4月14日の前震発生時では、家屋の倒壊に新耐震基準と旧耐震基準で差はみられない。一方、「家が傾いた」は旧耐震基準である昭和56年5月以前の住居で32.0%と、昭和56年6月以降の新耐震基準の家屋(18.3%)と比較して高くなっている。
・「けがなどの人的な被害があった」は、4月14日の前震発生時に、旧耐震基準の住居(21.4%)で多くみられた。
・4月14日21時26分頃の前震発生時の被害状況は、「家の中のタンスや本棚が倒れた」(77.7%)、「高いところのものが落下した」(74.0%)が7割以上、「停電や断水、ガスの停止があった」(64.8%)が6割以上、「家の壁にひびが入ったりはがれ落ちた」(51.4%)が過半数と高くなっている。
・4月16日1時25分頃の本震発生時の被害状況についても、「家の中のタンスや本棚が倒れた」(44.0%)、「停電や断水、ガスの停止があった」(43.4%)、「家の壁にひびが入ったりはがれ落ちた」(40.4%)、「高いところのものが落下した」(38.2%)が上位に挙がっている。

▼地震発生後のつながりやすさは、SNSが有効
・4月14日の前震発生後に「利用しようとした」通信手段は、<携帯電話・スマートフォン(音声)>が59.3%、<携帯電話・スマートフォンのメール>が28.4%、<フェイスブックやライン等のSNS>が19.3%などとなっている。「利用しようとした」の内訳をみると、「常に利用できた」は<フェイスブックやライン等のSNS>で81.0%と高く、利用者は全体の2割にとどまるものの、災害発生時の有効な連絡手段となったことがうかがえる。
・4月16日の本震発生後についても、「利用しようとした」通信手段は<携帯電話・スマートフォン(音声)>(48.9%)、<携帯電話・スマートフォンのメール>(25.4%)、<フェイスブックやライン等のSNS>(18.3%)が高くなっている。「利用しようとした」の内訳をみても、「常に利用できた」は<フェイスブックやライン等のSNS>で81.7%と高く、14日の前震時と同様の傾向にある。

▼14日 夜は6割以上が屋外や車中。15日 夜間、16日 本震発生時には「自宅内」は約2割。15日 日中でも「自宅内」は33%にとどまっている
・14日の前震発生時の主な居場所をみると、8割以上の人が「自宅内」(81.3%)にいたと回答している。
・前震発生後の14日夜間の主な居場所をみると、「自宅外(敷地内・車中」が36.4%、「自治体が指定していない公園、空き地、駐車場(屋外・車中)」が16.2%、「自治体が指定する避難場所(屋外・車中)」が11.9%などとなっており、6割以上の人が屋外や車中で不安な一夜を過ごしていた。
・15日の夜間、16日の本震発生時の主な居場所をみると、「自宅内」に戻った人はいずれも約2割であり、15日の日中でも「自宅内」との回答は33.3%にとどまっている。

▼避難のきっかけは「余震で自宅にとどまることが危険」「家族で避難を決めた」「自宅の被害が大きかった」
・14日の前震発生後、避難した人は「屋内」「屋外・車中」を合わせて83.8%となっている。一方、16日の本震発生後では、避難した人は「屋内」「屋外・車中」「すでに避難していた」を合わせて95.1%となっている。
・「避難した」きっかけは、14日の前震後、16日の本震後ともに、「余震が続き自宅内にとどまることが危険だと判断したから」が4割以上、「家族で避難を決めたから」、「自宅の被害が大きかったから」が3割以上と高くなっている。

▼現在も屋外・車中に避難し続けている理由は、揺れへの不安と避難所での生活環境
・14日の前震発生後、屋外・車中に避難した理由については、時間の経過にしたがって減少しているものの、「屋内だと地震の揺れに対して不安だから」が最も高くなっている。
・「屋内の避難場所だとプライバシーが保たれないから」、「屋内の避難場所がいっぱいだったから」、「屋内の避難場所だと周囲に気兼ねして休まらないから」の割合は徐々に高まっており、地震の揺れに対する不安に加え、屋内避難場所の生活環境が、屋外・車中に避難し続ける要因となっている。

▼避難生活での不便・不満のトップ3は「洗濯」「風呂」「不眠」
・避難生活での不便、不満は、「洗濯」(55.4%)、「風呂」(45.6%)、「眠れない」(41.0%)が4割以上と高くなっている。

▼避難生活を通じて、健康状態の悪化を感じる人が約3割
・調査対象者の現在の健康状態については、「健康状態は悪くなった」が、もともと持病があった人、無かった人を合わせ30.0%にのぼっている。長引く避難生活のため、もともと持病もなかった人でも体調が悪化しているケースがみられる。

▼行政に望む支援は生活基盤の整備や住宅再建支援
・現在の不安については、「地震の終息の見通し」(70.0%)、「ライフライン(電気・水道・ガス・電話・交通機関など)復旧の見通し」(42.8%)のほか、「壊れた家や家財の処分方法や手続き」(41.0%)、「がれきの撤去」(30.3%)、「後片付けの人手不足」(27.2%)といった自宅やその周辺の後片付け、「仮設住宅の建設時期」(38.5%)といった住宅面に関して、不安の声が多くなっている。
・行政に望む支援策については、「ライフライン(電気・水道・ガス・電話・交通機関など)の復旧」(49.5%)、「仮設住宅の設置と入居」(47.1%)、「失った車や家財購入への補助や貸付」(40.4%)、「家屋の再建への補助や貸付」(37.9%)といった、当面の生活基盤の整備や住宅再建への要望が高くなっている。

▼当面の住まいは、自宅以外と考える人が5割以上。「わからない」との回答も約1割
・当面の住まいについて、「自宅で暮らす」は36.7%となっている。「公営住宅に入居したい」(8.0%)、「仮設住宅に入居したい」(23.9%)、「みなし仮設(民間住宅・公営住宅などの借上げ型)に入居したい」(8.9%)などを合わせた、自宅以外を希望する人は5割以上となっている。
・今後の当面の住まいについて「わからない」(9.2%)との回答が約1割となっている。
・仮設住宅を建てる際などに望むことについては、「早く建設してほしい」(86.9%)が8割以上と圧倒的に高く、次いで「半壊や一部損壊でも入居させてほしい」(28.0%)が3割近くとなっている。

▼自宅の建て直し希望者は3割、今後の居住地は益城町内居住希望者が9割
・ご自宅が「持家」の人の自宅再建意向について、補修希望者は「大きな被害を受けたが、補修して住む予定」(22.6%)、「被害が小さかったので、補修中または補修を終えている」(15.2%)を合わせて4割近く、建て直し希望者は「大きな被害を受けたので、今の場所に建て直したい」(24.0%)、「大きな被害を受けたので、別の場所に建て直したい」(3.7%)を合わせて3割近くとなっている。
・自宅の再建意向を年代別にみると、「大きな被害を受けたので、今の場所に建て直したい」と「大きな被害を受けたので、別の場所に建て直したい」を合わせた建て直し希望者は30代で35.5%、40代で33.4%と高くなっている。
・益城町居住者の今後の居住地に対する意向については、「町内の同じ場所に住み続けたい」が77.4%、「町内の別の場所に移りたい」が10.3%で、合わせて9割近くが今後も益城町内での居住を希望している。


【調査概要】
・調査地域:益城町
・調査対象:益城町内の避難場所で生活する20歳以上の男女個人
・調査方法:面接調査
・調査内容:避難行動把握
(前震から本震、現在までの避難行動)/被害の程度/避難場所での生活ニーズ/今後の居住意向 など
・有効回答:327サンプル(うち、益城町居住者は301サンプル)
・調査期間:平成28年4月29日(金)~5月1日(日)

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