内定・入社前後のトラブルに関する調査(学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女対象) 

2016年05月31日
日本労働組合総連合会(連合)は、連合「なんでも労働相談ダイヤル」に内定・入社前後のトラブルに関する相談が寄せられていることや労働条件明示のあり方が問題になっていることを踏まえ、内定・入社前後にどのようなトラブルがどのくらい発生しているのかを把握するため2016年4月4日~4月13日の10日間、「内定・入社前後のトラブルに関する調査」を、インターネットリサーチにより実施しました。大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力:上西充子教授(法政大学キャリアデザイン学部)、ネットエイジア株式会社)

【調査トピックス】

◆4人に3人が就職活動の中で対応に苦慮する要求を経験!

◆内定者研修や内定者アルバイト等を就職先の求めに応じて行った人が半数以上!

◆賃金など労働条件を「書面で渡された」のは3人中2人!

◆新卒入社した会社を辞めた理由において、労働条件の書面交付がなかった場合では、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」と半数強が回答。


【調査結果】

≪就活関連ハラスメント等の発生状況≫
◆4人に3人が就職活動の中で対応に苦慮する要求を経験
◆10人に1人が「他社の選考辞退を求められた」と回答

大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女1,000名(全回答者)に、対応に苦慮する要求を提示し、就職活動の中で経験したことを聞いたところ、「他の応募企業の選考状況を聞かれた」が最も多く55.8%、続いて「他に応募している企業名を聞かれた」が48.1%となっており、対応に苦慮する要求を経験した人の割合は74.3%でした。なかにはハラスメント行為を受けたと思われる人もおり、「内定時に、その企業に就職するという誓約書の提出を求められた」は18.4%、「内定を伝えられたあとで、他社の選考を辞退するように求められた」は10.8%、「他社の選考を辞退するなら、内定を出すと言われた」は7.4%でした。
「他の応募企業の選考状況を聞かれた」、「他に応募している企業名を聞かれた」は年々増加している傾向がみられました。また、就職活動の中で対応に苦慮する要求を経験した人の割合を卒業時期別にみると、2012年3月卒は66.8%、2013年3月卒は73.2%、2014年3月卒は78.0%、2015年3月卒は79.2%と年々増加しており、他社の採用動向を気にする採用側からの干渉が強くなっている様子が窺えました。

≪内定後の研修やインターンシップ・アルバイトなどの状況≫
◆内定者研修や内定者アルバイト等を就職先の求めに応じて行った人が半数以上!
◆“内定者は参加必須”のケースが約3割!内定者インターンシップ・アルバイトの実態とは?
◆内定者研修や内定者アルバイト等による影響
「かなりの費用の自己負担が必要であった」など悲痛な声や批判も

全回答者(1,000名)に、内定者研修等について聞きました。

内定から実際に就職するまでの間に、就職先の求めに応じて行ったものを聞いたところ、「通信教育・資格勉強」が最も多く25.3%、次いで、「研修参加」が21.2%、「内定者インターンシップ・アルバイト参加」が17.2%、「読書感想文やレポートなどの課題を提出した」が15.1%で続き、内定者研修や内定者アルバイト等を就職先の求めに応じて行った人の割合は55.9%と半数以上でした。
内定者研修や内定者アルバイト等の実施状況、内容は業種によって特徴がみられ、「通信教育・資格勉強」は金融業・保険業で最も高く63.7%、「内定者インターンシップ・アルバイト参加」は教育・学習支援業(40.5%)、学術・開発研究機関など(33.3%)、不動産業・物品賃貸業(32.4%)、小売業(30.9%)で他の業種に比べ高くなりました。

内定者インターンシップ・アルバイトに参加した172名に、その位置づけを聞いたところ、「必ず参加することが求められ、ほとんどの内定者が参加した」が27.3%、「参加を強く求められ、ほとんどの内定者が参加した」が26.2%となり、必ず参加することを求められたり、参加を強く求められたりして参加をした人が53.5%と半数以上だったことが明らかになりました。

同じく172名に、参加した内定者インターンシップ・アルバイトの延べ日数を聞いたところ、「1~5日」が22.7%、「6~10日」が20.3%、「11~20日」が19.2%となりました。他方、「31~50日」(7.6%)、「51~100日」(14.0%)、「101日以上」(6.4%)といった回答もみられ、『31日以上(計)』は28.0%となり、参加者の3割近くが1ヶ月以上の長期間に渡って内定者インターンシップ・アルバイトに参加したことがわかりました。

内定から入社までの間に、内定者研修や通信教育・資格取得、課題提出、インターンシップ・アルバイトなどに参加した559名に、それらの影響について聞いたところ、「時間的な拘束が大きかった」との回答が最も多く22.7%となりました。そのほか、「卒業論文・卒業研究に支障があった」(13.1%)や「授業・ゼミ活動に支障があった」(11.3%)といった学業に支障があったとする回答や、「かなりの費用の自己負担が必要であった」(11.1%)といった回答、また、「身体的・精神的な負担が大きく、体調を崩した」(8.1%)といった回答も挙げられており、内定者研修等の問題点が明らかになりました。
卒業時期別にみると、2015年3月卒では「授業・ゼミ活動に支障があった」(16.3%)、「かなりの費用の自己負担が必要であった」(16.3%)において、他の卒業時期に比べ高い傾向がみられました。

同じく559名に、内定者研修や通信教育・資格取得、課題提出、インターンシップ・アルバイトなどについての感想を自由回答形式で聞いたところ、「人手が足りない中で労働力として就労を求められた」ケースや「遠方での研修のために時間と費用の重い負担を強いられた」ケース、「睡眠時間も少なくパワハラ的な泊まり込み研修に参加させられた」ケースなどがみられました。また、「入社前に無給での参加を求められることへの不満」や「資格取得等に費用負担を強いられることへの疑問」、「資格取得が必要なら募集要項に記載してもらいたいという要望」も挙げられていました。

≪新卒入社した会社について≫
◆賃金など労働条件の明示 「書面で渡された」は3人に2人の割合にとどまる
◆入社後の新入社員研修や業務についての指導 「なかった」2割半
◆新卒入社した会社は「時間外労働が恒常的」4割半、「有給休暇が取得できない人が多い」3割半、「仕事に見合わない低賃金」3割、「賃金不払い残業がある」2割半、「セクハラ・パワハラが横行している」1割強
◆賃金など労働条件の明示方法と新卒入社した会社を離職した割合の関係性は?
◆新卒入社した会社を辞めた理由
労働条件の書面交付がなかった場合では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が半数強

全回答者(1,000名)に、新卒入社した会社についても聞きました。

新卒入社した会社では、入社時に、賃金などの労働条件を明示されたかを聞いたところ、「書面で渡された」は66.0%と3人に2人の割合にとどまり、「社内イントラネットなどに掲示されているので自分で確認するように指示された」が5.2%、「見せられただけで渡されず回収された」が3.0%、「口頭で説明された」が7.9%となりました。また、「書面の明示がないだけでなく、なにも説明はなかった」との回答も5.0%でした。労働基準法では、賃金や労働時間などの労働条件を明確に記載した書面を作成し、交付しなければならないことになっていますが、口頭で説明が済まされているケースや説明すらされていないケースがあるようです。
「書面で渡された」と回答した割合を従業員規模別にみると、従業員規模が小さい会社ほど低くなり、1~10人規模の会社では47.2%と半数を下回る結果となりました。また、労働組合有無別にみると、労働組合があった会社では75.4%、労働組合がなかった会社では59.6%となり、労働組合がなかった会社のほうが低くなりました。

入社後、新入社員研修や上司・先輩から業務についての指導・アドバイスはあったかを聞いたところ、「十分にあった」が32.8%、「ある程度はあった」が44.1%で、合計した『あった(計)』は76.9%となりました。一方、「あまりなかった」が16.9%、「まったくなかった」が6.2%で、合計した『なかった(計)』は23.1%でした。
研修、指導・アドバイスが「十分にあった」と回答した割合を従業員規模別にみると、従業員規模が大きい会社ほど高く、1000人以上の規模の会社では48.2%でした。従業員規模が大きい会社ほど新入社員研修や業務についての指導・アドバイスがしっかり行われているようです。
また、労働組合有無別にみると、労働組合があった会社のほうが、研修、指導・アドバイスが「十分にあった」と回答した割合が47.2%と高くなりました。

卒業後に最初に就職した会社について、職場の労務管理上の問題を提示し、あてはまるものを聞いたところ、「時間外労働(残業)が恒常的である」が最も多く46.0%、次いで、「有給休暇が取得できない人が多い」35.4%、「仕事に見合わない低賃金である」30.1%、「精神的に不調になり辞める人が多い」26.3%、「賃金不払い残業(サービス残業)がある」25.2%が続き、「セクハラ・パワハラが横行している」は11.0%でした。また、「あてはまるものはない」は21.4%と2割にとどまり、多くの会社で労務管理上の問題が存在している様子が窺えました。
入社時の労働条件明示方法別にみると、社内イントラネットなどに掲示した会社や回収された・口頭で説明・説明なしの会社では「仕事に見合わない低賃金である」(社内イントラネットなどに掲示した会社42.3%、回収された・口頭で説明・説明なしの会社39.6%)が全体に比べ10ポイント前後高くなり、また、回収された・口頭で説明・説明なしの会社では「賃金不払い残業(サービス残業)がある」(36.5%)、「募集要項や採用時の説明と実際の雇用条件・待遇が異なっている」(25.2%)も全体に比べ高い結果となりました。労働条件の書面交付がなかった会社において、低賃金、不払い残業、募集要項と実際の労働条件の違いという問題が大きいようです。

多くの会社で労務管理上の問題が存在している様子が窺えましたが、新卒入社した会社での就業継続状況は、どのようになっているのでしょうか。

全回答者(1,000名)に、卒業後に最初に就職した会社で、現在も働いているか聞いたところ、「最初の会社で働き続けている(育児休業中・休職中を含む)」は59.1%、一方、『離職した(計)』は40.9%でした。
入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導有無別にみると、離職割合(=離職した(計))は、新入社員研修や指導があった層では35.8%でしたが、なかった層では58.1%と6割近くになり、入社後の研修や指導の状況が離職割合に影響している様子が窺えました。
また、労働条件明示方法別に離職割合をみると、書面で渡された層では39.9%でしたが、書面交付がなかった層では、社内イントラネットなどに掲示された層で44.2%、回収された・口頭で説明された・説明がなかった層で47.3%となりました。入社2年目~5年目の若手社員の離職発生率は、労働条件を書面で渡された会社よりも書面交付がなかった会社のほうが高い傾向が窺えました。

卒業後に最初に働いた会社を離職した409名に、会社を辞めた理由を聞いたところ、「仕事が自分に合わない」が最も多く37.4%、次いで、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」34.0%、「人間関係がよくなかった」33.7%が続きました。仕事内容に対する入社後のギャップや労働時間・休日・休暇の条件、職場の人間関係が理由で退職している人が多いようです。
労働条件明示方法別にみると、回収された・口頭で説明・説明がなかった層では、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が53.3%で全体に比べて高く、「賃金の条件がよくなかった」44.0%も全体に比べて高くなりました。労働条件を書面で交付しないことが、労働時間・休日・休暇の条件や賃金の条件を理由とした離職につながっているケースも多いのではないでしょうか。


「連合調べ」

【調査概要】
調査タイトル:内定・入社前後のトラブルに関する調査
調査対象:大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女
調査期間:2016年4月4日~4月13日
調査方法:インターネット調査
調査地域:全国
有効回答数:1,000サンプル(性別×卒業時期が均等になるように割付)
実施機関:ネットエイジア株式会社
調査協力:法政大学キャリアデザイン学部・上西充子教授、ネットエイジア株式会社

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