世界13か国、各国の医療環境に対する患者、医療従事者の意識調査 

2016年06月09日
ロイヤル フィリップス(フィリップス)は、世界13か国において、各国の医療環境に対する患者、医療従事者の意識調査「The Future Health Index:How can connected care help answer the Global health challenge?」(未来の医療環境指数:コネクテッド ケアは医療課題にどう対応できるか?)の調査結果を発表しました。

この意識調査では、将来の医療課題に対する各国の準備状況として、医療アクセス、「医療の統合」に向けた現状、および「コネクテッド ケア技術」の導入状況に対する患者、医療従事者の意識を検証し、「評価指数」として算出しましたが、日本は調査対象となった13か国で最も指数が低いことが分かりました。
調査結果からは、患者と医療従事者における認識のギャップや、新しい医療技術に関する認知不足といった、超高齢社会を支えるための医療環境の整備における諸課題が明らかになりました。

■評価指数について

Future Health Index(未来の医療環境指数、略称:FHI)は、将来の医療課題に対する患者、医療従事者の意識をベンチマークしたものです。
具体的には、患者により良い医療と価値をもたらす(1)「医療アクセス」(2)「医療の統合」に向けた現状(3)「コネクテッド ケア技術」の導入―の3つのテーマへの意識を検証、数値化し、100点満点で評価しました。

その結果、13か国の評価指数の平均が56.5ポイントだったのに対し、日本の評価指数は49.0ポイントでこれを下回るとともに、13か国中、最も低い数値でした。
3つのテーマのうち、コネクテッド ケア 技術の導入に関する数値の低さが特に目立っており、最も高かったアラブ首長国連邦の63.9ポイントを約25ポイント下回る、38.4ポイントにとどまっています。

<各テーマの詳細>

(1)「医療アクセス」の意識について

・「一連のヘルスケアプロセス」(健康な生活、予防、診断、治療、ホームケア)において、医療に関する情報やリソースへアクセスできると考えている患者の割合はいずれの項目も4割を下回り、医療従事者との間にかい離が存在

・医療従事者は在宅医療へのリソースとアクセスの改善、患者は医療費のコスト削減を求める割合が高い

・提供されている医療の水準に対するコストについて、医療従事者と患者の意識が異なっている。

国民皆保険制度により、多くの国民が比較的低負担で医療にアクセスできることは、日本の医療制度の大きな特徴と言えます。
一方で、今回の調査結果によると、「一連のヘルスケアプロセス」(健康な生活、予防、診断、治療、ホームケア)において、医療に関する情報やリソースへアクセスできる(入手・利用ができる)と考えている患者の割合は、医療従事者を大きく下回ることが分かりました。

項目別に見ると、「家族/自らの病気に必要な医療リソース」については、患者、医療従事者ともに、アクセスできると考える割合が最も低く、それぞれ18%、38%にとどまりました。

また、その他の項目については、「健康的に生活する為の情報/リソース」(アクセスできると考える割合:患者27%、医療従事者52%)、「病気の予防を助ける薬や治療」(患者34%、医療従事者67%)、「診断の為の検査」(患者37%、医療従事者76%)、「現在/将来の病状に必要な治療」(患者30%、医療従事者68%)となりました。医療従事者はこれらの項目について、過半数がアクセスできると考えている一方で、患者は3割前後にとどまっており、意識に顕著な差が見られました。

また、患者の71%、医療従事者の90%は日本国内で急速に進む高齢化を日本の医療が抱える最大の課題と認識しています。この高齢化問題への対応について、医療従事者では「在宅医療へのアクセスの改善」を求める意見が最も多く、32%に上ったのに対し、患者では「医療コストの削減」が55%で最多でした。

患者と医療従事者の意識差は、医療費の自己負担においても顕著に表れており、患者の57%が、提供される医療の水準に比べて、コストが高すぎると回答。一方で、医療従事者の半数に当たる51%は提供する医療の内容とコストのバランスは「適正」と考えていました。

(2)「医療の統合」に向けた現状について

・患者、医療従事者の半数前後が、医療の統合が進んでいないとの認識

・医療の統合効果として、患者の医療費負担への影響については意見が割れているものの、質の改善については、患者、医療従事者の過半数が有効と考えている

医療界の関係者がそれぞれ独立して患者に対応するのではなく、効果的なコミュニケーションを行いながら、連携して患者の治療に当たる医療の統合の現状については、患者の46%、医療従事者の59%が「まったく統合されていない/あまり統合されていない」と回答しました。

こうした医療の統合については、患者、医療従事者ともに6割以上(患者:66%、医療従事者:60%)が重要と考えており、統合によって日本の医療の質が向上すると考えている患者は57%、医療従事者で68%に上りました。

一方で、統合がコストに与える影響については、患者と医療従事者の認識に違いが見受けられました。患者では、統合によりコストが「上昇する」と考える人の割合が39%で、「低下する」(32%)、「影響はない」(29%)を上回りました。
これに対して、医療従事者では「低下する」(46%)が最も多く、「上昇する」(29%)、「影響はない」(25%)と続きました。

(3)「コネクテッド ケア 技術」の導入について

・コネクテッド ケアは、患者、医療従事者ともに現状ではほとんど認知がないものの、将来的な技術の導入については半数以上が賛成

・海外においてはオンラインビデオ診断などのサービスが始まりつつある一方、日本においては患者、医療従事者の半数以上が対面診療を重視

・オンラインの活用については、対面診療に代わるサービスではなく、補完するものとして関心が寄せられている。

医療ICTなどを活用し、医療システムの関係者間(医師や患者、病院、保険会社、政府など)における医療情報の共有を可能にする医療技術である「コネクテッド ケア」については、在宅医療の推進や、医療の質の向上などに寄与すると考えられています。

評価指数の3つのテーマのうち、日本はこのコネクテッド ケア技術の導入に関する指数が38.4ポイントにとどまり、13か国の平均指数(47.8ポイント)を大きく下回り、結果として日本のトータルでの評価指数を引き下げる要因となっています。

調査結果によると、コネクテッド ケア技術の認知度については、患者の84%、医療従事者の80%が「よく知らない」と回答。さらに、「まったく知らない」と答えた人も半数(患者:53%、医療従事者:49%)に上り、認知度の低さが浮き彫りとなりました。一方で、こうした技術の導入については、半数の患者(56%)、医療従事者(50%)が賛成しています。

また、コネクテッド ケアに関連して、オンラインを活用した患者と医療従事者のコミュニケーションのニーズについても質問しました。その結果、過半数に当たる患者(54%)、医療従事者(59%)が対面診療によるコミュニケーションを希望しました。その一方で、こうした対面診療をサポートするオンラインサービスの活用法については、「診察予約」(患者:69%、医療従事者55%)、「検査結果の受け取り」(患者:56%、医療従事者48%)、「医学的な質問」(患者:56%、医療従事者44%)に関心があることが分かりました。


【調査概要】
・対象国:13か国 ※アルファベット順
(オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、日本、オランダ、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、イギリス、米国)
・実施時期:2016年2月24日から4月8日
・調査構成:
 ①患者、医療従事者(医師、看護師などのコメディカル等)への定量調査
 ②医療政策や医療分野における有識者の定性調査(インタビュー)
・調査対象:
 ①患者 25,355人/医療従事者2,659人(日本調査 2,010人/ 205人)
 ②医療政策や医療分野における有識者 日本調査7人
・調査目的:各国の医療環境の現状を分析し、将来的な医療の展望に対するフィリップスの提言をまとめること

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[フィリップス]
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