平成28年度 新入社員「働くことの意識」調査結果 

2016年07月07日
日本生産性本部「職業のあり方研究会」と日本経済青年協議会は、平成28年度新入社員1,286人を対象にした「働くことの意識」調査結果をとり纏めた。この新入社員の意識調査は、昭和44年度に実施して以来48回目を数え、この種の調査ではわが国で最も歴史のあるものである。

【主な調査結果】

■1.働く目的は、「楽しい生活をしたい」が過去最高を更新し、41.7%に
 ~「自分の能力をためす」「社会に役立つ」は低下を続ける~
「働く目的」で最も多い回答は、平成12年度以降急増している「楽しい生活をしたい」で、過去最高を更新し41.7%となった。一方、かつてはバブル期を除いてトップになることもあった「自分の能力をためす」は長期にわたって減り続け、12.4%と過去最低を更新した。また、平成に入って増加していた「社会に役立つ」がここにきて低下が続き(9.3%)、「経済的に豊かになる」が上昇に転じている(27.0%)ことも注目される。

参考:奨学金の利用状況
<四年制大卒利用者の74.2%が「返済が負担に感じる」>
近年、大学生を中心に奨学金を利用する学生が増え、その返済の負担が注目を集めているため、その利用状況について質問を新設した。「奨学金の返済を負担に感じるか」については、全体では31.6%、短大卒41.3%、四年制大卒35.7%、大学院卒34.3%が「利子つきで返済する奨学金」を利用しており、返済する奨学金利用者全体の68.6%、四年制大卒の74.2%が「負担に感じる」と回答している。
親の年収の伸びが限られる中、アルバイトと利子つきの奨学金で教育を受け、大きな負担を背負いながら社会人生活のスタートをきる新入社員が少なくないことがうかがえる。

<奨学金の利用状況(本年新設設問)>
・利子つきで返済する奨学金を利用 31.6%(短大卒41.3%、四年制大卒35.7%、大学院卒34.3%)
・利子なしで返済する奨学金を利用 5.2%
・返済しないでよい奨学金を利用  1.9%

~返済する奨学金を利用した方のみに質問~
・奨学金の返済を負担に感じている 68.6%(四年制大卒74.2%)

■2.働き方は「人並みで十分」が過去最高を更新し、58.3%に
その年の新入社員の就職活動が順調だったか(大卒有効求人倍率)で敏感に変化する項目に、「人並み以上に働きたいか」がある。景況感や就職活動の厳さによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反した動きを見せる。特にバブル経済末期の平成2~3年度には、「人並み以上」が大きく減り、「人並みで十分」が大きく増えたが、その後の景気低迷にともない平成12年度以降、入れ替わりを繰り返している。ここ数年では、平成24年度に厳しい就職状況を背景に「人並み以上」が「人並みで十分」を一旦逆転した。しかし平成25年度から「人並み以上」が減少(42.7%→40.1%→38.8%→34.2%)するとともに、「人並みで十分」が増加(49.1%→52.5%→53.5%→58.3%)し、昨年やバブル経済末期の平成4年度の53.3%を超え、過去最高の58.3%となり、かつ両者の差は、調査開始以来最大の24.1ポイントに開いている。

参考:働き方と大卒求人倍率との関係(経年変化)
出典:リクルートワークス研究所「大卒求人倍率」2015年(大学求人倍率のみ)

■3.「仕事」中心か「(私)生活」中心か
一方で、「仕事」中心か「(私)生活」中心かという設問では、常に「両立」という回答が多数を占め(グラフでは省略)、今年度は80.3%だった。残りの「仕事」中心と「(私)生活」中心という回答に注目すると、「(私)生活」中心という回答は平成3年(22.8%)をピークに下がり続け、一時「仕事」中心が上回った。しかし平成24年を底に「(私)生活」中心が再び増加し、「(私)生活」中心(11.0%)が「仕事」中心(8.6%)を上回っている。

■4.デートか残業か
 ~プライベートより仕事を優先が多数派~
「デートの約束があったとき、残業を命じられたら、あなたはどうしますか」という質問に対しては、「デートをやめて仕事をする」(昨年度80.8%→76.9%)、「ことわってデートをする」(昨年度19.0%→22.6%)と、全体としてはプライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が引き続きうかがえるが、この数年はやや「デート派」が増加している。

■5.会社の選択理由
 ~「仕事が面白いから」がこの数年反落~
「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視しましたか」という質問に対して最も多かった回答は、「自分の能力、個性が生かせるから」(33.2%)だった。以下「仕事が面白いから」(17.3%)、「技術が覚えられるから」(12.3%)の順だった。平成に入り「会社の将来性」と入替るように増えた「仕事が面白いから」は、ここ5年で10ポイント近く減少している(平成23年度26.8%→17.3%)。しかし、中長期的には、職場に“寄らば大樹”的な期待をもつ傾向が退潮し、自らの技能や能力、あるいは職種への適性に関心がもたれる時代へと変化している。

■6.「第一志望に入社」は年々改善
「第一志望の会社に入れた」という回答は、平成24年度60.9%から平成25年度52.0%と大幅に減少し、設問設定以来で最低だったが、平成26年度以降は改善傾向が続き、今年度は60.2%となった。なお厚生労働省・文部科学省「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によれば、4月1日現在の大卒者の就職率は平成22年度(平成23年3月)卒業者で91.0%と過去最低となった後、平成23年度93.6%→平成24年度93.9%→平成25年度94.4%→平成26年度96.7%と年々少しずつ好転し、平成27年度(平成28年3月)卒業者では97.3%に達している。

平成21年度62.3(57.2)% 平成22年度55.2(51.8)% 平成23年度56.6(51.5)%
平成24年度60.9(57.3)% 平成25年度52.0(46.3)% 平成26年度55.0(50.1)%
平成27年度56.4(53.0)% 平成28年度60.2(56.6)%
※(  )内は四年制大卒

■7.社長志向も専門職志向も過去最低水準
 ~女性は昇進志向が高まる一方で、二極分化傾向も見られる~
「どのポストまで昇進したいか」という問いに対して、最も多かったのは「専門職<スペシャリスト>」(17.8%)で例年通りだったが、その割合は過去最低を更新した。男女の違いが大きく、男性は「部長」(24.1%)、女性は「専門職」(22.3%)がそれぞれ最も多い。
10年前(平成18年度)と比べると、男性では「社長」という回答は大きく減り(24.8→15.9%)、部長が増えている(20.7→24.1%)。一方女性では専門職<スペシャリスト>志向が低下し(35.2→22.3%)、「課長+係長+主任班長」という回答が増えた(18.9→30.8%)。女性の昇進志向が高まってきている一方で、「役職に付きたくない+どうでもよい」(25.5→29.6%)と増加し、二極分化傾向も見られる。

<10年前(平成18年度)との比較>
社長 17.8→10.8%(男性24.8→15.9%、女性6.2→2.8%)
部長 11.5→17.4%(男性20.7→24.1%、女性2.3→6.6%)
課長+係長+主任班長 11.2→18.6%(男性3.5→11.0%、女性18.9→30.9%)
専門職<スペシャリスト> 26.4%→17.8%(男性20.9→15.0%、女性35.2→22.3%)
役職に付きたくない+どうでもよい 18.0%→20.0%(男性13.6→14.0%、女性25.5→29.6%)


【平成28年度新入社員「働くことの意識」調査の概要】
I.本調査の沿革
本調査は昭和44年(1969年)以来、毎年一回、春の新入社員の入社の時期に継続的に実施されてきた。新入社員を対象とするものとしてはもちろん、就労意識をテーマとする調査として他に例を見ない長期にわたる継続的な調査である。これまで40年以上にわたり、ほぼ同一の質問項目で実施されており、興味深いデータの経年変化が蓄積されてきた。なお、昨今の終身雇用制の後退、若い世代の価値観の変化などを背景に、時代にそぐわない質問項目が散見されるようになってきたため、平成13年(2001年)の実施にあたって、いくつかの質問項目を入れ替えた。もちろん、これまでの時系列データの資産的な価値を重視し、多少、最近の新入社員には無理があると思える質問も、極力残す方向でリニューアルをした。今年度はリニューアル後16回目の調査となる。

【調査の概要】
調査期間:平成28年3月11日から4月28日
調査対象:平成28年度新社会人研修村(国立オリンピック記念青少年総合センター)に参加した企業の新入社員
調査方法:同研修村入所の際に各企業担当者を通じて調査票を配布し、その場で調査対象者に回答してもらった
有効回収数:1,286人(男性788人/女性497人/性別無回答1人)

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[日本生産性本部]
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