専門職業大学(仮称)に関する調査(高校教員対象) 

2016年08月23日
さんぽうは、文部科学省が2019年度の創設に向けて制度化を進めている「専門職業大学(仮称)」について、高校教員にどう受けとめられているのか、また現段階での期待や懸念される点を探るため、「専門職業大学(仮称)に関するアンケート」を実施しました。

【専門職業大学(仮称)とは ~答申内容より~】※ご参考
・農業・観光・ITなど、各成長分野での即戦力かつリーダーとなる人材の育成を目指し、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関。
・今年5月30日に、中央教育審議会が文部科学大臣に制度化するよう答申。文部科学省では、2019年度の創設を目指しており、実現すれば1964年の短期大学の制度化以来、55年ぶりの新しい大学類型の開設となる。
・卒業単位の3~4割を実習とし、2年間で300時間、4年間で600時間以上の企業内実習を義務付けている。
・企業などで5年以上の実務経験を持つ教員を概ね4割以上配置する。

【調査結果】

●専門職業大学について「内容を知っている」は25%と低調。
 専門職業大学の創設について、「名称だけは知っている」「全く知らない」を合わせると75%。回答した教員の4分の3が専門職業大学の内容までは知らない状況でした。2019年度創設ということは、現在の高校1年生が対象となりますが、まだまだ高校の現場ヘは情報が浸透していないようです。

●制度化に「反対」は6.4%。しかし、賛否保留が65.1%。
 上記の結果から、多くの教員が専門職業大学の創設に賛成か反対かを判断しかねている状況です(65.1%)。「具体的なカリキュラムが分からないと何とも言えない」「学校制度の中で位置付けが予測できない」「どのような専門職業を想定しているのか」などがその理由で、現時点での文部科学省の情報が漠然としていることが窺えます。
 賛否の比較では、賛成(26.2%)が反対(6.4%)を上回っています。賛成理由としては「社会のニーズに適合している」「進路選択の多様性につながる」など、反対理由では「専門学校・大学で対応できるので新たに創る必要性は感じない」「四年をかけて習得した技術が就職時にも新しい技術である保証はない」などがありました。

●「専門職業大学」について認識している層のうち、約半数が賛成。反対はわずか約5%。
 専門職業大学について「よく知っている」・「概ね知っている」と回答された層のうち、その制度化について「賛成」は51.2%、反対は4.7%でした。つまり、専門職業大学の概要を知ることが、その必要性の理解につながっていると考えられます。本年の初冬までにはさらに詳しい内容が文部科学省から発表される予定となっており、制度化についてのさらなる情報が待たれるところです。

●高度な職業教育に期待。課題は既存の専門学校・大学との違いの明確化。
専門職業大学創設への「期待」と「懸念」については、下記の順に多かったです(複数選択回答)。

とくに期待したいこと(n=162)
高度な職業教育 67.3%
高い就職率 45.7%
学費の安さ 42.6%
進路選択の幅が広がること 38.3%
奨学金・学費減免制度の充実 30.2%

実践的な職業教育を行う教育機関であることから、「高度な職業教育」に期待する声が多くなっています(67.3%)。次いで就職率(45.7%)が挙げられ、専門的な知識や技術が就職に直結することを望んでいる様子が窺えます。現在の社会状況を反映してか、学費の安さ(42.6%)や奨学金の充実(30.2%)への回答も上位にありました。

とくに懸念されること(n=169)
専門学校との違いがわからない 58.0%
既存の大学・短大との違いがわからない 45.6%
生徒や保護者が理解できるか 36.1%
就職先や就職率 32.5%
学費 32.0%

「専門学校との違いがわからない」(58.0%)が最も多く、次いで「既存の大学・短期大学との違いがわからない」(45.6%)も半数近くありました。また、専門職業大学について生徒や保護者が理解できるかを懸念する、教育現場ならではの意見も多く見られました(36.1%)。高い就職率就職と学費の安さに期待している分、学生や保護者の視点に立った現実的な設計になるかを懸念しているといえます(「就職先や就職率」:32.5%、「学費」:32.0%)


【調査概要】
調査方法:郵送による配付/FAXによる返信
調査対象:高等学校進路指導部 延べ5,434件(全日制・定時制・通信制・サポート校など)
調査時期:2016年6月24日~7月15日
回答枚数:173枚

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