第7回「Cities of Opportunity 7‐世界の都市力比較2016」 

2016年09月07日
PwCは9月7日、7回目となる分析レポート「Cities of Opportunity 7‐世界の都市力比較2016」を発表しました。本レポートでは、都市を活性化する主要素(都市力)について10の領域・67の指標を用いて分析した結果を、ランキング形式で公表しています。また、対象都市は前回の都市からナイロビ、イスタンブール、ブエノスアイレスの3都市を除き、新たにアムステルダム、ボゴタ、ラゴスを追加した計30都市となっています。

■総合評価の概況

30都市の総合評価【図1】では、2014年に発表された前回レポート(第6回)でトップに立ったロンドンが、引き続きトップの座をキープしました。なおロンドンについてはEU離脱決定前に収集されたデータを用いてランキングを出しているため、今後の動向が注目されるところです。シンガポールは前回の3位からさらにランクアップして2位に浮上しました。

総合トップ10にランクインした都市は、今回新たに対象都市となり5位になったアムステルダムを除くと、いずれも2011年の第4回レポートでトップ10以内にランクインしています。しかし、その順位は大きく変動しており、明暗が分かれています。

ロンドン、シンガポール、パリはこの5年で大幅に順位を上げ、それぞれ1位、2位、4位となる一方、ニューヨーク、サンフランシスコ、ストックホルム、シドニーは3ランク以上順位を下げています。また2011年のレポートで7位にランクインしたシカゴは、アムステルダムのランクインに伴い、トップ10から陥落する結果となりました。

■領域別評価の概況

領域別評価でもロンドン、シンガポールの強さは際立っています。2014年の第6回レポートでは複数領域で1位となった都市が4都市(ロンドンが3領域、シンガポール、ストックホルム、シドニーが2領域で1位)であったのに対し、2016年の本レポートではロンドン、シンガポールの2都市に絞られました。

ロンドンは10領域のうち「知的資本・イノベーション」「ゲートウェイ機能」「経済的影響力」の3領域で1位となり、「技術の成熟度」で2位、「人口構成・住みやすさ」と「ビジネスのしやすさ」で3位と、まんべんなく強さを発揮しています。

シンガポールは第6回レポートで1位であった「交通・インフラ」と「ビジネスのしやすさ」の領域に加え、前回8位であった「技術の成熟度」の領域でトップとなり、総合2位への躍進に貢献する結果となりました。

また「健康・安全・治安」の分野では、東京が前回の11位から大幅に躍進、領域別でトップを獲得しています。

■東京の都市力評価

東京の総合評価は、第6回レポートから2ランク下降し、30都市中15位となりました。前回(第6回)と今回(第7回)の領域別順位の比較が【図3】です。

東京は先述したように「健康・安全・治安」の領域でトップとなったほか、「ゲートウェイ機能」で6位、「知的資本・イノベーション」と「技術の成熟度」で8位と、4領域でトップ10入りしました。

「健康・安全・治安」の領域では、セキュリティ・伝染病のリスクに関する指標が1位、医療システムが2位、犯罪件数が4位、政治環境が5位など、全般的に高い評価を獲得して、領域別トップに輝きました。

「ゲートウェイ機能」の領域では、空港での乗降数の指標で3位、世界トップ100空港の立地の指標で4位になり、前回に比べて順位を落としたものの、シンガポール(8位)よりも上の6位に食い込みました。

「知的資本・イノベーション」の領域では、前回から2つランクアップして8位となりました。都市の将来的な競争力に大きな影響を与えるこの指標において、アジア圏から10位以内に入ったのは東京のみであることは特筆すべき結果であるといえます。

「技術の成熟度」の領域でも前回から2つランクアップして8位となり、指標別ではソフトウェア開発とマルチメディアデザイン、およびデジタル・セキュリティの2指標において30都市中トップとなっています。

一方、特に経済関連の領域において東京は厳しい評価を受け、総合評価のランクダウンの原因となりました。「経済的影響力」の領域は前回(2014年)の10位から16位に後退しました。個別指標を見ると、世界トップ500企業の本社数で2位、生産性で6位と高い評価を得た一方、雇用の増加が27位、実質GDP成長率が26位と厳しい評価となっています。

また「ビジネスのしやすさ」の領域では、前回の12位から16位にランキングが後退しました。個別指標を見ると、オペレーショナルリスク環境においてもっとも高い評価を得た一方で、起業のしやすさが21位、税制の効率性が27位と低評価となっています。

Cities of Opportunity のシリーズでは都市力を、現在のパフォーマンスと将来の潜在的なパフォーマンスを合わせる形で評価を行っています。今回、経済領域における評価が低下した要因としては、現在の経済活動のパフォーマンスに対する高評価の一方、税制や規制などの評価も含めた、今後の成長可能性に対する厳しい評価が起因しているものと考えられ、これは成熟期にある日本経済の現状をある意味で反映している結果ともいえます。

もう一つ注目しておきたいのが、「人口構成と住みやすさ」の領域で新規に追加された「都市のブランド」指標で、26位と低い評価を受けた点です。同指標では英語中心のソーシャルメディアでどれぐらい話題となったかが評価されています。今後、2020年に向けて、国際的な注目度を挙げていくことが求められてくると考えられます。

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[PwC]
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