企業の不正リスク実態調査2016(上場企業対象) 

2016年11月17日
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社と有限責任監査法人トーマツは、「企業の不正リスク実態調査2016」の結果を公表する。本調査は全上場企業3,631社を対象に、2016年6月末までの不正の実態および不正への取り組みについてアンケート調査を実施し、402社から回答を得ている。2006年以来定期的に実施しており、今回の調査で5回目の実施となる。

今回の調査結果から、不正の発生割合は減少しておらず、不正発生拠点・発生部署は広がりを見せていることが分かる。また、内部統制報告制度導入後時間が経過しており、不正対策は次なる対応が求められていることが明らかになった。

【主な調査結果】

1.不正の実態
1-1.発生した不正の実態

今回の調査では、回答のあった企業のうち、過去3年間に不正事例があったと回答した企業は26%で、2011年調査から継続して高い水準となっている(図表1)。不正の類型別発生割合は、引き続き「資産の横領」(57%)、「不正な財務報告」(26%)、「汚職」(10%)、「その他の不正」(7%)の順となっており、前回の調査と比較して「資産の横領」の割合が減少する一方、「不正な財務報告」、「汚職」、「その他の不正」の発生割合が増加している(図表2)。

また、不正の発生拠点は依然として親会社で多く発生しているが、海外子会社における不正の発生が増加しているという結果であった(図表3)。海外子会社での主な不正の類型は、不正支出や在庫・その他資産の横領であり、それらは業務プロセスにおける統制活動や内部通報により発覚している。不正の発生部門は、前回と同様、販売・サービス部門において多く発生しているが、今回の調査では製造部門での増加が特徴として観察されている(図表4)。製造部門の増加は、不正の類型との関係を見ると、期間帰属の操作、在庫・その他資産の横領等が要因となっている。

1-2.不正への対応の実態
不正事実を公表した企業は前回48%から今回34%に減少し、重要性がないため公表しなかった企業は前回44%から今回58%に増加している(図表5)。主な要因は、5,000万円未満の不正の公表割合が減少したためと考えられる。なお、今回、重要性がないため公表しなかった企業のうち90%は5,000万円未満の不正であった。

日本取引所自主規制法人は、2016年2月24日付けで「『上場会社における不祥事対応のプリンシプル』の策定について」を公表しており、不祥事に関する情報開示を迅速かつ的確に行うことが期待されている。

2.不正防止および早期発見の取り組み
不正防止および早期発見に向けて、企業ではさまざまな取り組みが行われている。今回の調査では、回答企業において以下の事項が重要課題として識別されていることが分かった(図表6)。

(1)情報漏えい対策
サイバー攻撃や情報漏えいに対応するため、52%の企業が今後取り組みを予定している。

(2)海外子会社の不正への対応
海外子会社での不正発生割合が増加していることもあり、38%の企業が今後取り組みを予定している。

(3)不正対策における現状把握・意識調査
企業グループの不正の防止・発見体制全般の現状評価については、36%の企業が今後取り組みを予定している。内部統制報告制度が導入されてから時間が経過しており、様々な不正防止体制が有効に機能しているかどうか、機能していないとすればどこが改善箇所になるかについて検討が求められる時期にあるとも考えられる。

(4)不正発覚時の対応の準備
不正発覚時の対応基準の整備については、28%の企業が今後取り組みを予定している。今回の調査でも不正の発生割合は減少しておらず、不正防止対応には限界があるため、不正が発覚した際の対応ルールについて準備しておくことも重要な課題であると認識されているものと考えられる。


【調査概要】
・調査対象範囲:全上場企業(今回の発送件数 3,631件)
・調査方法:全上場企業に対してアンケート調査票を送付し、回答を得る方式により実施(回答件数 402件)
・不正の実態:回答企業のうち、過去3年間に不正が発生したとの回答があった企業を集計している。
集計対象となった不正事例は、過去3年間に発生した不正のうち、損害金額が最大であった事例である。
・不正防止および早期発見の取り組み:過去3年間に不正が発生したかどうかにかかわらず、回答企業の全てを集計している。

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[デロイト トーマツ コンサルティング]
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