福祉用具の貸与価格の上限設定に関する意識調査(ケアマネジャー対象) 

2017年02月17日
エス・エム・エスは、ケアマネジャー向けコミュニティサイト「ケアマネドットコム」にて、「福祉用具の貸与価格の上限設定に関する意識調査」を実施し、ケアマネジャー(以下「ケアマネ」)614名*1 より回答をいただきました。

【調査の背景】

 厚生労働省は2016年11月25日の介護保険部会において、福祉用具貸与サービス*2 における福祉用具貸与価格に上限を設定する構想を打ち出しました。財務省の調査によれば、福祉用具貸与価格には、平均的な水準からかけ離れた高い価格になっているケース(外れ値、以下「外れ値」)や、地域差があると報告されています。厚生労働省は2018年度の介護報酬改定のタイミングに合わせた上限設定の導入を視野に入れ、具体的な仕組みを協議していく方向性を示しています。
 福祉用具貸与価格の外れ値問題は以前から指摘されており、種目ごとの平均価格や最頻価格を、誰もがインターネットで調べ、事業者の言い値と比べることが可能な「福祉用具情報システム」(以下「TAIS」)が導入されるなど、行政による予防措置も段階的に進められています。
 本調査は、居宅介護支援事業所に勤務するケアマネに対し、現場における福祉用具の貸与価格及び貸与に関する実態について調査したものです。

*1 回答内訳:居宅介護支援事業所勤務ケアマネ(以下「居宅ケアマネ」)614名
*2 福祉用具貸与サービス:介護保険制度の居宅サービスの一つで、車いす・車いす付属品・特殊寝台・殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助杖・認知症老人徘徊感知器・移動用リフト・自動排泄処理装置の13品目を自己負担1割(一定以上所得者は2割)で貸与可能なサービス

【調査サマリー】

・実際に外れ値に遭遇したことがあるケアマネは全体の3割程度

・外れ値に遭遇したと仮定した場合、9割近くのケアマネが「高すぎることを説明した上で利用者の判断をあおぐ/他の事業者を紹介する」など、利用者に対して何かしらの助言をするとしている。なお、貸与価格が外れ値のことが多い福祉用具は「特殊寝台」「移動用リフト」「車いす」の順

・ケアマネの9割以上が福祉用具貸与事業者に同行して利用者宅を訪問し、利用者が福祉用具を選定する場に立ち会っている

・今回の構想が実行された場合に起こると予想される問題として「上限まで貸与価格をひきあげる事業者が増え、結果的に貸与価格が高騰する」と回答したケアマネが最多

・ケアマネが福祉用具貸与事業者を選定する際に重視する項目は「スピード」「柔軟性」「人柄」の順に多く、「価格の安さ」は7番目


 上記のことから、外れ値に遭遇することはそれほど多くないと推察されるものの、実際に遭遇した場合はケアマネが同席することで、外れ値での利用を防止できる可能性が高いことがうかがえます。また、今回厚生労働省が打ち出した構想が価格に焦点を当てているのに対し、実際の現場では価格以外の点が重視されていることが浮き彫りとなりました。

【調査概要(抜粋)】

調査結果1. 居宅ケアマネの3割が福祉用具貸与価格を外れ値と感じたことがあり、半数以上のケアマネが「高すぎる」と判断した根拠として「他の同じ状態像の利用者と比較した結果」と回答
Q. これまで、担当利用者の福祉用具レンタル料(種類は問わず)が高すぎると感じたことはありますか?
◆考察
「ある」と回答したケアマネは3割にとどまり、7割近くのケアマネが「ない」と回答した。「ある」と回答したケアマネは東京・大阪・愛知に多く、人口密度が高いところほど外れ値に遭遇する確率が高いと言えそうだ。

Q. 「ある」と答えた方にお聞きします。「高すぎる」と感じた根拠に当てはまるものをすべてお選びください。
◆考察
「他の同じ状態像の利用者と比較」との回答が最も多く、ケアマネの半数を占めた。次いで「感覚的に(特に根拠はない)」との回答が続き、ケアマネ個人の経験の差が多少なりとも影響していることがうかがえる。

調査結果2. 貸与価格が外れ値のことが多い福祉用具は「特殊寝台」「移動用リフト」「車いす」の順
Q. レンタル料が外れ値のことが最も多い福祉用具はどれですか?(複数選択可)
◆考察
最も回答が多かったのは「特殊寝台」で34.2%。次いで「移動用リフト」が14.5%、「車いす」が13.4%と続いた。特殊寝台と移動用リフトのメーカー希望小売価格をTAISで調べてみると数百万円~数万円と大きく幅があるため、ある意味外れ値がつけやすい福祉用具ともいえそうだ。

調査結果3. 外れ値に遭遇した場合、9割近くのケアマネが「高すぎることを説明した上で利用者の判断をあおぐ/他の事業者を紹介する」など、利用者に対して何かしらの助言をするとしている
Q. 福祉用具レンタル7料が高すぎると感じたときのあなたの行動に当てはまるものをお選びください。
◆考察
「高すぎることを説明し、利用者の判断を仰ぐ(30.3%)」、「ほかのレンタル事業者を紹介する(20.7%)」など、9割近くのケアマネが利用者に対して何かしらのアドバイスをすることがわかった。

調査結果4. TAISを「知っている」ケアマネはわずか1割。そのうち実際に利用したことが「ある」ケアマネは3割弱
Q.  公益財団法人テクノエイド協会が提供している「福祉用具情報システム(TAIS)」で、種目ごとの月額レンタル料金の平均価格と最頻価格が調べられることを知っていますか?
◆考察
「知っている」と回答したケアマネは2割に届かず、8割以上のケアマネが「知らない」と回答。2014年にTAISが公開されて3年目となるが、ケアマネにはまだ浸透していない状況といえそうだ。

Q. 「福祉用具情報システム(TAIS)」を実際に利用したことはありますか?
◆考察
TAISを「知っている」と回答したケアマネ(全体の18.7%)のうち、実際に利用したことが「ある」と回答したのはわずか3割。知っていても利用したことが「ない」ケアマネのほうが多く、6割以上となった。

調査結果5. 利用者が福祉用具を選定する際、福祉用具貸与事業者に同行して利用者宅を訪問するケアマネが9割以上
Q. 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪問する際、同行することがありますか?
◆考察
「毎回必ず同行している」「時々同行している」「必要なときのみ同行している」の合計が9割を超え、非常に多くのケアマネが利用者の福祉用具選定の場に同席していることがわかった。

調査結果6. 5割以上の福祉用具事業者が「利用者に合わせ、相手が納得するまで説明している」
Q.  あなたとのやり取りがもっとも多い福祉用具貸与事業所の担当者は、製品の価格や特徴などを利用者にどのくらい説明していますか?
◆考察
半数以上のケアマネが「利用者に合わせ、相手が納得するまで説明している」と回答。「ひと通り説明し、あとは質問に対して答える程度」も4割を超え、相手の理解度やレベルに合わせた対応を取っている可能性もうかがえる。

調査結果7. ケアマネが福祉用具貸与事業者を選定する際に最も重視しているのは「スピード」
Q. あなたが福祉用具貸与事業者を選定する際に最も重視する項目はなんですか?
◆考察
「スピード」が25.2%と最も多く、「担当者の人柄(17.6%)」と「柔軟性(17.4%)」が僅差で続いた。「スピード」を重視する理由として、がん末期などのターミナル利用者への対応や、急な状態変化など「とにかくすぐに必要になるケースがよく発生するから」というコメントが多く見られた。「価格の安さ」は4.6%で7位という結果になった。

調査結果8. 混福祉用具の貸与価格に上限を設定することによって生じる問題は「上限価格まで貸与価格をひきあげる事業者が増え、結果的に貸与価格が高騰する」が最多
Q.  厚生労働省は、2018年を目処に福祉用具のレンタル料に上限を設定することを公表していますが、これによってどんな問題が生じると思いますか?
◆考察
「レンタル料が高騰する」が4割近くを占め最多、次いで「大規模事業者に収斂される」が37.8%、「倒産する福祉用具貸与事業者が増える」が32.7%となった。いずれの回答も、今回の構想が利用者・事業者に多大な影響を与えると考えているケアマネが多いことがわかった。


【調査概要】
調査対象:「ケアマネドットコム」に会員登録をしていて居宅介護支援事業所に勤務するケアマネジャー
調査期間:2017年1月18日~1月26日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:ケアマネジャー614名

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