「海外直接投資信頼度指数(The Foreign Direct Investment Confidence Index(R):FDICI)」の調査 

2017年04月19日
経営コンサルティング会社A.T. カーニーは、「海外直接投資信頼度指数(The Foreign Direct Investment Confidence Index(R): FDICI)」の調査結果を発表。投資先として魅力のある国上位25カ国をランキングした。

※ 2017年4月18日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です。

今回で17回目の発行となる「海外直接投資信頼度指数(FDICI)」の最新の調査によれば、回答者した4分の3の企業が今後3年間に海外直接投資の増額を計画しており、地政学的要因と反グローバリゼーションによって世界規模で海外直接投資が冷え込む可能性があると予想されるにもかかわらず、この結果は昨年よりも上向きの結果となっている。
「Glass Half Full」と題された最新の海外直接投資指数(FDICI)調査によれば、グローバル企業経営者が政治的・地政学的に懸念を強めている一方で、世界経済と海外直接投資の見通しに関してはさらに楽観的な見方をしていることがわかる。
注:Glass Half Full とは、コップが半分満たされている状態を「半分しか入っていない」ではなく、「まだ半分もある」と考えること。物事を悲観せず楽観視する例え。

グローバル企業の経営者は3年連続で、地政学的緊張の高まりを外部環境におけるとりわけ大きなリスクとみているが、実際には、投資家の地政学的懸念と保護貿易主義の気運の高まりが、海外直接投資の増額の意欲をある程度加速させている可能性がある。世界貿易の成長が鈍化し、貿易障壁が高まる環境の中、海外直接投資は主要市場の投資家に現地化戦略をもたらすと考えることができる。

米国は5年連続で海外直接投資指数(FDICI)の首位の座を維持している。投資家も、米国経済に対し、ほかのどの国の経済よりも楽観的な見通しを示している。ドイツは2位にランクアップし、3位の中国がこれに続いている。英国とカナダはトップ5入りを果たしている。本報告書の全編はウェブサイトで公開されている。

日本は2年連続で6位にランクインし、投資家が最も楽観視している経済圏としては3位となっている。本指数において日本が強さを維持している理由のひとつとして、その経済が改善していることが考えられる。日本の経済成長は長期的推移予測を上回っており、労働市場は逼迫しているものの、2017年1月にコアインフレは(20年にわたる断続的デフレを経て)2年ぶりに回復した。しかし、1998年にピークを迎えたのち低調が続く期待インフレ率と労働力の減少は依然として大きな経済的課題となっている。

本指数における日本の強さは、透明性の高い規制制度と拡大アジア地域における同国の重要性に起因しているとも考えられる。投資家は全体として、日本を先進技術と研究開発のリーダーと考えている。このことは、本調査において日本がIT業界の投資家から世界4位の評価を受けていることにも表れている。
日本政府は、さらに海外直接投資を誘致しようと改革を実施している。日本の海外直接投資株はGDPのわずか4.1%とOECD加盟国の中でも最低水準にとどまっているが、近年の対日直接投資の成長は、世界第3位の経済国の日本にとって明るい兆しと言えるだろう。

全体として、アジアに拠点を置く企業の投資家は世界経済についてとりわけ楽観的な見通しを示しており、アジア企業の経営者の実に85%もが、今年は昨年よりも世界経済を楽観視していると回答している。

 【地域別の概要】

アメリカ地域:
投資家は、特に魅力的な投資先として、一貫してアメリカ地域の4つの市場を挙げている。 米国は、5年連続で海外直接投資指数1位を獲得している。カナダはトップ5入りを維持したが、今年は順位を2つ落としている。ブラジルは昨年から順位を4つ下げ、16位となった。メキシコは順位を1つ上げ、17位となった。世界の投資家は、アメリカ地域の経済見通しについてきわめて楽観的だ。40%超の投資家が、同地域の経済見通しについて昨年よりも楽観視している。この楽観論は概ね、投資家の米国およびカナダ経済についての強気によるものと思われる。国連貿易開発会議(UNCTAD)の推計によれば、2016年に北米は世界のどの地域よりも多くの海外直接投資流入を呼び込んだが、ラテンアメリカ地域への海外直接投資流入は若干減少した。

欧州地域:
欧州は、2017年海外直接投資指数において最多となる11カ国が上位を占めているが、13カ国の欧州市場がランクインした前年に比べ減少している。指数ではドイツが2位に浮上し、英国は4位へと順位を1つ上げた。フランスは1つ順位を上げ7位、スペインは2つ順位を上げ11位、スイスは1つ順位を下げ12位となっている。スウェーデンは最も大きく順位を上げ15位となっている。イタリア(13位)とアイルランド(20位)はともに3つ順位を上げている。オランダは14位を維持し、ベルギー(22位)とオーストリア(24位)が上位欧州市場の最後尾に位置している。 欧州経済は、昨年も継続して大量の海外直接投資を誘致している。UNCTADの推計によれば、欧州連合は3番目に高い地域別海外直接投資流入を呼び込んでいる。

アジア太平洋地域:
すべての地域のうち、世界の投資家が経済見通しについて最も楽観視しているのはアジア太平洋地域だ。投資家からは、アジア太平洋地域の8つの市場が特に魅力的な投資先として挙げられている。中国は3位にランクインし、優良指数上位3位以内に引き続き登場している。日本は6位を維持している。インドはランクアップを継続しており、順位を1つ上げて8位となっている。オーストラリア(9位)とシンガポール(10位)はトップ10入りしている。韓国は今年順位を1つ落とし18位、タイは2つ順位を上げて19位となっている。ニュージーランドは、今年初めて指数ランキングに登場し、23位にランクインしている。アジア太平洋地域経済は依然として大量の海外直接投資を誘致している。UNCTADの推計によれば、アジアの新興市場やフロンティア市場は世界中の地域の中でもとりわけ高水準の海外直接投資流入を呼び込んだが、昨年はオーストラリアと日本への海外直接投資流入が大幅に増加した。

中東・アフリカ:
世界的な物価低迷による経済不安にもかかわらず、中東およびアフリカは2年ぶりに本指数ランキング入りを果たしている。アラブ首長国連邦は21位にランクインしている。南アフリカは25位に食い込んでいる。このことは、数年にわたる「安全への逃避」の傾向を経て、海外直接投資先を分散したいという世界の投資家の思惑を表しているとも考えられる。


【調査概要】
A.T. カーニー 海外直接投資信頼度指数[Foreign Direct Investment(FDI)Confidence Index(R)]は、グローバル企業の経営者層を対象とした年次調査で、今後3年間に大きな投資を誘致すると予想される市場を順位付けしている。 海外直接投資の流れに関する他の過去のデータとは異なり、海外直接投資信頼度指数は投資家がどの市場をターゲットとするか、または今後数年間の海外直接投資についての独自の将来予測分析を提示する。1998年の調査開始以来、海外直接投資信頼度指数でランクインした国々は、その後数年間の実際の海外直接投資フローにおける上位の投資先と密接に相関している。

2017年海外直接投資信頼度指数は、世界の大手企業の上級役員を対象とした独自の調査から得た一次データを使用して作成された。本調査は2017年1月に実施した。
回答者の役職はCxOレベルの役員、地域統括責任者など。全参加企業の年間売上高は5億ドル以上。調査対象企業は世界30カ国に本部を置く企業で、全産業セクターにわたる。調査対象国は、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータに基づき選出し、海外直接投資信頼度指数の30カ国は、近年の全世界におけるFDIフローの90%超を占めている。回答企業のうち、サービスセクター企業が約45%、工業系企業が40%、IT企業が15%を占めている。

本指標は、今後3年間の対市場直接投資見込みについての質問に対する高、中、低の回答の加重平均で計算されている。指標価値は、外国市場に拠点を置く企業のみの回答に基づいている。例えば、米国の指標価値は在米投資家の回答を除いて計算されている。指標価値が高いほど、投資先として魅力が高いことを示している。
FDIフロー額はUNCTADの最新統計で、2016年の数値はすべて推計値となっている。特記のない限り、特定のFDI取引価格に関するデータはDealogicから得た。二次ソースとして、投資促進機関、中央銀行、財務省、産業省、関連ニュースメディア、その他の主要データを活用した。

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