保育の現場の課題調査(現役の保育士や元保育士対象) 

2017年06月06日
ウェルクスは、キッズラインと共同調査を実施。アンケート結果に基づいた独自のコンテンツを発表いたしました。
これは待機児童問題における重要な課題である保育士不足について聞いたもので、現役の保育士や元保育士の立場から見た、保育の現場の課題が見える内容となっています。

【調査の概要(一部)】

今回アンケートにご協力いただいたのは、保育士をはじめとする「保育のお仕事レポート」の読者の皆さま、株式会社キッズラインサポーターの皆さま、キッズラインペアレント(保護者)の皆さま計159名。

まずは待機児童問題について、どのような対策が必要かを伺ってみたところ、「待遇改善などによって保育士を増やす」と回答された方が最も多く、全体の84%。次いで「企業内託児所を完備する(57%)」、「小規模保育施設を増やす(50%)」「保育士シッターが1対1で自宅で保育を行う(31%)」「保育士配置数の規制を緩和する(18%)」となりました。

(※企業内託児所や小規模保育施設、保育士シッターの利用料は認可保育園と同等程度とした場合でお答えいただいております。)

保育施設を増やす以上に、保育の現場を担う人材の確保が急務であると多くの方が認識されていることがわかります。

続いて、待機児童問題の要因のひとつにもなっている保育士不足について、保育士の採用が難しいとされている理由を伺ってみました。(複数回答可)

アンケート結果では、保育士採用が難しい理由として、「給料の安さ(72%)」という回答が最も多いものの、「残業など勤務時間の長さ(58%)」、「人間関係の難しさ(48%)」「保護者対応の大変さ(42%)」など回答者の半数前後が賃金以外の労働環境にも課題を感じていることがわかります。

では、ここからは回答項目ごとに、現状抱えている課題や改善してほしいと感じている点などを具体的に見てみましょう。

◆「給料の安さ」(72%)
まずは賃金の低さが保育士不足の原因である、と回答された保育士の皆さまに、
実際の給与額と希望する給与額をそれぞれ教えていただきました。(※月給および時給に分けてご紹介いたします。)

アンケートによれば回答者の給与額分布でもっとも多かったのは月収で「15~17万円未満(22%)」、時給では「900~1000円未満(30%)」。今回の調査は年齢や勤続年数、役職などを問わず実施していますが、新卒のみでなく何年も保育士として頑張っている回答者様も多くいる中での数値と考えると、やはり他職種よりも低いことが伺えます。

また、希望する給与について伺ったところ、月給では「19~21万円未満」と「25~27万円未満」の回答がそれぞれ26%と高く、時給では「1500~1600円未満」が44%と最も回答が多い結果となりました。 

国は保育士の処遇改善として2015年度の子ども・子育て支援新制度で3%の処遇改善を実施、2017年4月からはさらに2%の上乗せを行い、中堅保育士に対する給与の上乗せも実現すると発表していますが、現状と希望とのギャップを見る限りでは、更なる処遇改善が必要とされていることが伺えます。

◆「残業など勤務時間の長さ」(58%)
続いて残業などの勤務時間の長さが保育士不足の原因、と回答をされた保育士の皆さまに、
実際の勤務時間と希望する勤務時間をそれぞれ教えていただきました。

回答が最も多かった現状での勤務時間は「10~11時間未満」で34%。それ以上勤務している方の回答と合わせると、実に回答者の62%が10時間以上の勤務を行っており、8時間の基本勤務時間よりもかなり多く働いている現状が伺えます。

希望の勤務時間を見てみると、「8~9時間未満」という回答が最も多く56%。雇用条件と同等の勤務時間の中で働きたいと考えている方が過半数であることがわかります。

◆「人間関係の難しさ」(48%)
職場の人間関係の難しさも保育士というお仕事の課題のひとつ。職場にもよりますが、いじめやハラスメントが日常的に起こっている現場もあるようです。

【あったら良いと思う国や職場による対策】
・保育士全員がコーチングなどのスキルを身につけ、コミュニケーション力を上げる、人材育成をしっかりやる。(保育園以外の保育関連職)
・定期的な人材ローテーション。(キッズラインサポーター)
・定期的なメンタル面でのフォローアップ。(保育士)

◆「保護者対応の大変さ」(42%)
保育士さんは毎日の送迎や連絡帳、行事など保護者と常にコミュニケーションを取りながら仕事をしています。しかしながらこの保護者対応に課題を抱えるケースも多々あるようです。

【あったら良いと思う国や職場による対策】
・保護者からの相談専門の機関の存在。(非保育関連職)
・今の保護者の考え方に対応できるマニュアルを作ってほしい。(現在は就業していない)
・保育士側をしっかりサポートし、守ってくれるような対策。(保育園以外の保育関連職)

◆「モチベーションが続かない」(25%)
給与や勤務体系など今までの回答にも通じる部分ですが、やはり仕事を続けていく上ではモチベーションの維持が欠かせません。そのための環境づくりも重要です。

【あったら良いと思う国や職場による対策】
・規制緩和で保育士を減らすのではなく、適正な人数で、働ける環境にしてほしい。(現在は就業していない)
・外部研修の際、保育に関係ないものにも手当てがでるなど、自分で選んで自己啓発ができるようにしてほしい。(保育士)
・毎年必ず消化できるようなリフレッシュ休暇や、消化できない場合の買い取り制度がほしい。保育士自身の子育てのための時短制度があるとよい。(保育士)

◆「休日出勤の多さ」(21%)
保育士さんの中には休日に出勤をしなくてはならないという方も多くいらっしゃいます。アンケートによれば、休日出勤の多さが課題であると回答されている方のうち約9割は2日間以上の休日出勤があるとのこと。

 「できれば休日出勤がない方が良い」という回答は79%にものぼり、現在の勤務体系に不満があることが伺えます。

◆「人事評価制度がないこと」(11%)
正しい人事評価がされないという点も、長く働きつづける上では大きなストレスになります。給与とも関わる部分ですが、きちんと働きぶりを評価し、処遇に反映する環境の整備も必要でしょう。

【あったら良いと思う国や職場による対策】
・会社のように、ある程度規定がきちんとあること、時々監査のようなチェックが入ると良いと思います。(保育園以外の保育関連職)
・現場にきて職員の働きぶりを見てほしい。(保育士)

◆保育士確保には多面的な環境改善が必要
ここまでご紹介したとおり、給与面以外でも保育の現場が抱える課題はたくさんあります。「給与さえ上げれば保育士は確保できる」とは決して言い切れないのが現状ではないでしょうか。


【調査概要】
・実施企業:株式会社キッズライン   株式会社ウェルクス(共同調査)
・実施期間:2017年5月16日~5月21日
・実施対象:
 ウェルクス:保育園勤務(37名)・その他保育関連職従事者(8名)・保育以外の職業従事者(2名)・無職・専業主婦等(8名)計55名
 キッズライン:サポーター(76名)・保護者(28名)計104名
・回答者数:159名(2社合計)
・調査方法:インターネット調査

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