高齢者による運転に関する調査(認知症の介護経験者対象) 

2017年06月28日
認知症の情報サイト『認知症ONLINE』を運営するウェルクスは、認知症の介護経験者100名を対象にアンケート調査を実施しました。

高齢者による自動車事故のニュースを頻繁に耳にする昨今。高齢者75歳以上の高齢ドライバーのうち、1万人以上の方が認知症の恐れがあることが発表されました(2017年6月警視庁より)。家族に認知症の兆候が出ている場合、周りの人はどのように対応すべきでしょうか?

【調査結果】

Q1.認知症の兆候があるご家族の運転を止めたことがありますか?

運転を止めた経験が「ある」と回答したのは、全体の74.1%。一方「ない」と回答したのは25.9%という結果でした。家族の認知症の兆候が現れた時点で、多くの人は運転を止めるよう働きかけていることが分かりました。

Q2.運転を中止してもらうかことはできましたか?

家族にとって最も理想的な「本人納得の上で中止してもらえた」は全体の19.7%。続いて「あまり納得はしていないが中止してもらえた」が28.1%、「鍵を隠す等、本人の納得なく中止した」が13%。ご本人の納得度合いに差はありますが、6割以上は運転を中止できているとの結果でした。
一方、「本人が納得せず中止できない」の回答は28.9%。運転をやめるよう働きかけても、3割近くは本人の理解を得られず運転を止められていないことが分かりました。

Q3.免許証の自主返納はされましたか?

Q2.で運転を中止してもらえたと回答した方のうち、運転免許証を「自主返納した」が57.8%、「自主返納はしていない」が42.2%という結果でした。
免許証の自主返納制度とは、加齢に伴う身体機能や判断力の低下により、運転に不安を感じる方などが、自主的に運転免許証の取消しを申請することができる制度です。

Q4.運転を止めてもらえた体験談、うまくいかなかった体験談

ご本人に納得した上で運転を止めてもらうにはどのタイミングで、どう説得すべきなのか、家族は試行錯誤しています。説得にあたって、うまくいった例、うまくいかなかった例、それぞれ次のようなエピソードが寄せられました。

うまく止めてもらえた例

■家族で運転卒業をお祝い
父の75歳の誕生日のお祝いと同じ日に免許返納の卒業式をやった。孫娘の似顔絵入りの卒業証書をもらって本人も満足げでした。(45~49歳、女性)

■運転中に家族から伝える
日常生活で買い物や病院通いなどで父の運転が不可欠でしたので、いざ辞めてもらおうとなった時に母がまだ先でもいいかも、と躊躇したこともありました。何より父のプライドを傷つけないようにするにはどう言えば良いか悩んでいたところ、運転中に自転車との接触事故を起こしかけ、その時に言えたことが良かったです。(55~59歳、女性)

■家族以外から伝えてもらう手も
信頼しているかかりつけ医から運転をやめるように強く勧めていただき返納できました。父はプライドが高く母や娘の私から運転をやめるよう言っても絶対に納得しないので…。
(45~49歳、女性)

■物理的に運転できなくする
口では分かったと言うが、運転してしまうのでバッテリを外した。(50~54歳/女性)

うまく止めてもらえなかった例

■周囲の言い方が不足?
主治医や運転教習の時、警察署に更新に行った時に運転はもう無理だと判断を下してもらえると期待して相談したがやんわりとした言い方しかしてくれなかったので本人を納得させることができなかった。(55~60歳、女性)

■車の次は自転車に
クルマに代わる交通手段、移動手段が少なすぎる。 運転できないと今度は自転車に乗り始めて、大変だった。 万が一、事故を起こして被害者が将来のある子どもだったり、一家の大黒柱であったり、医師であったら、賠償できるのか?と言及して渋々だった。(50~54歳、女性)

■返納したことを忘れてしまう
いくら説明しても聞き入れてもらえず、結局他車との接触事故を起こしてしまい、それを機に免許証を返納しましたが、返納したこと自体を忘れ、運転しようとするので、最終的には鍵を隠しました。(45~49歳、女性)

■家族の反対にあうケースも
父の運転免許返納について、本人はあっさり了解しました。が、生活に支障をきたす為、母の反対にあい、決断後1月半ほど返納が延びました。繰り返し母を説得し、不便が生じる分は私が年休等使いカバーする事を話し、実際カバーしています。出来るだけ父と母の行きたいところには連れて行きます。心掛けている事は、”楽しみながら”です。(45~49歳、女性)

Q5.運転を自主的にやめてもらうために、どんな仕組みがあると良いと思いますか?
ご本人に運転を自主的にやめてもらうために必要な、社会的な制度や取り組みについて、たくさんのご意見をいただきました。下記、その一部をご紹介します。

■自主返納後の免許証についての周知をもっとして欲しい。明るいイメージで。(45~49歳/女性)

■家族が伝えたとしても、喪失を回避したい自尊心を保ちたいという思いから、納得されることは困難があるかと思います。 免許センターでのシュミレーションによって、本人が実感する事と専門の職員による本人への助言が定期的に無料で受ける機会があること、また、その際の送迎車があることが助成として市町の取り組みであればと考えます。(40~45歳/女性)

■とにかく安価な移動手段の早急な社会資源やフォーマルサービスの創設。 義務教育からの啓蒙。(45~49歳/女性)

■ある程度以上の年齢になったら毎年診断書のようなものを提出しないと更新できなくする。 車がなくても生活がしていける社会にする。(55~59歳/女性)

■地域に関係なく、乗り合いタクシーがあれば良いと思う 地方は特に車が必要なので、まんべんなく行き届くように普及して欲しい(45~49歳/女性)

■自治体に寄って自主返納の扱いがちがうので、全国的に統一してタクシー券を出すとかバスは無料にするなどして欲しい 地方では買い物も通院も大変です。(50~54歳/女性)

■65才以上の方の免許更新時に認知機能の評価と、ドライブシュミレーションの実用。ボーダーラインを曖昧にせず、自主的に辞めるための基準の見直しを実施。主治医の意見書任せでなく、法改正をし警察の判断も場合によっては必要。(40~45歳/女性)


まとめ
認知症の兆候がある方の自動車運転について、ご本人の納得があった上で止めていただくのが一番望ましい形ですが、納得が得られないケースも多いことが今回のアンケートで分かりました。
自動車は、生活するのに大変便利なライフラインです。しかし、交通事故を起こしてしまったら、責任の所在が家族に向けられる可能性もあります。家族による説得に頼るだけでなく、免許返納のポジティブな啓蒙や公共交通手段の整備等、「認知症と運転」について社会全体で対策に取り組むことが求められます。


【調査概要】
調査期間:2017年6月15日~6月17日
調査対象:認知症の介護経験を持つ全国20代~60代の男女100名(対象:認知症ONLINEの読者)
年齡割合:20代 4%、30代 9%、40代 39%、50代 39%、60代 7%、70代 2%
男女割合:女性90%・男性10%

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