働く女性におけるがん治療と仕事の両立についての調査(5年以内にがんを罹患し入院経験がある20代~50代女性と企業の人事担当者対象) 

2017年08月15日
アデコは、がんの罹患時に正社員として就業し、現在も何らかの形で就業している20~50代の女性200人と、企業の人事担当者596人(従業員数300人以上:300人、従業員数300人以下:296人)を対象に、働く女性におけるがん治療と仕事の両立についてアンケート調査を実施しました。

平成29年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太方針)において、働き方改革の一つとして、治療と仕事の両立推進が盛り込まれました。日本では2人に1人ががんに罹患すると推計されています。高齢になるほど罹患者が増えるとされる一方で、20代後半から50代前半の働く世代においては、男性よりも女性の「がん罹患率」が高い状況にあります*2。そこで、アデコでは、治療と仕事の両立推進の現状を把握するために、がん罹患時に正社員として就業していた20代から50代の女性と、企業の人事担当者を対象として、がん罹患経験と働く環境を調査しました。

(*1):Staffing Industry Analysts 2016、人財サービス企業売上ランキングより
(*2):国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」

<調査結果サマリー>

1.がんと診断されたときの不安は、「仕事への影響」(56.5%)が最多。「家族への影響」(43.0%)や「治療による体調の変化」(42.5%)を上回る
・具体的には、「職場への迷惑」(59.0%)、「業務遂行への影響」(46.0%)、「治療や療養のために休暇を取ること」(43.0%)を不安視。
・「周りから必要以上に気を遣われること」(30.0%)、「不特定多数に知られ詮索されること」(25.5%)など、職場におけるコミュニケーションを懸念する声も。

2.治療と仕事を両立できたのは、「職場の上司・同僚・部下等の理解・協力」(64.0%)がトップ
・職場での理解・協力を促す意識啓発が、治療と仕事の両立の鍵を握っている。
・92.5%が「直属の上司」にがん診断を伝えることから、上司のチームマネジメントが重要。

3.がんに罹患した有職女性は、勤務先に「傷病休暇・休業制度の充実」(40.0%)や「柔軟な勤務形態の容認」(37.5%)を望む一方、企業の各制度の導入率は半数を下回る

今回の調査結果から、がん治療と仕事の両立支援において「上司や同僚等の理解・協力」が最も重要であることがわかりました。現状、がんを罹患した有職女性にとって、就労継続のための勤務制度は十分ではなく、企業は早急な対応が求められます。しかしながら、制度や体制などのハード面のみを強化しても、現場での理解・協力といった支援がなければ運用はうまく進まないと考えられ、ソフト面での職場環境の整備は大きな鍵となります。一方で、がんの病状や治療などは個別性が高く、現場のみでの対応が困難な場合もあります。そのため、今後は、対応マニュアルの策定やがん治療への理解啓発などへの重要度が高まっていくことが予想されます。

【調査結果概要 <がんに罹患した有職女性への調査>】

(1)がんと診断されて不安になったことは「仕事への影響」が最多。「家族への影響」や「治療による体調の変化」を上回る
がんと診断されて不安になったことについて、半数以上が「仕事への影響」(56.5%)を挙げており、「家族への影響」(43.0%)や「治療による体調の変化」(42.5%)を上回る結果となりました。働き盛りの20~50代の女性にとって、従来通りのパフォーマンスを仕事で発揮できるかどうかは、大きな不安要素といえます。

 <がんと診断されたとき、どのようなことが不安、心配になりましたか(上位8つ)> (n=200、複数回答)
1位:仕事への影響  56.5%
2位:家族への影響  43.0%
3位:治療による体調の変化  42.5%
4位:治療費の工面  38.0%
5位:家計の維持   35.5%
6位:治療による外見の変化  34.0%
7位:出産への影響  21.5%
8位:結婚への影響  14.0%

(2)勤務先で不安・心配なのは、「職場への迷惑」、「業務遂行への影響」、「治療や療養のための休暇を取ること」。コミュニケーションの取り方や個人情報の取り扱いは、本人の意向に沿った対応が必要。
勤務先での不安や心配について質問したところ、「職場への迷惑」(59.0%)、「業務遂行への影響」(46.0%)、「治療や療養のために休暇を取ること」(43.0%)が上位にあがりました。次いで、「必要以上に気を遣われること」(30.0%)、「不特定多数に知られ詮索されること」(25.5%)といった職場におけるコミュニケーションに関することが懸念として挙げられています。気遣いや詮索に対する捉え方は、個々人によって異なるため、職場の上司が主導して、個別事情に配慮した対応を取ることが望まれるようです。

 <がんと診断されたときの勤務先で、どのようなことが不安、心配でしたか(上位7つ)>(n=200、複数回答)
1位:職場への迷惑   59.0%
2位:業務遂行への影響   46.0%
3位:治療や療養のための休暇を取ること   43.0%
4位:周りから必要以上に気を遣われること  30.0%
5位:不特定多数に知られ詮索されること   25.5%
6位:解雇、もしくは自主退職を促されること 13.0%
7位:勤務評価への影響 10.0%

(3)がんと診断後も、「同じ勤務先で、正社員として就業」が9割。治療や療養に関連し、6割が「20日以下」の連続休暇を取得
がんと診断された有職女性を対象に、勤務先や就業形態の変化について質問したところ、「同じ勤務先で、正社員として就業」がほとんど(89.5%)であることがわかりました。また、治療や療養のために必要だった連続休暇日数として「20日以下」と58.5%が回答し、年間の休暇取得総日数は「30日以下」と58.9%が回答しました。

<がんと診断されたことを要因として、勤務先や就業形態に変化はありましたか>(n=200、単数回答)
1 位:同じ勤務先で、正社員として就業   89.5%
2 位:同じ勤務先で、就業形態を変更(契約社員・パート・アルバイト)して就業   2.0%
3 位:退職して、他企業へ正社員として転職(再就職)  3.5%
4 位:退職して、他企業へ契約社員、パート・アルバイトとして転職(再就職)  4.5%
5 位:その他   0.5%

(4)がん診断後、就労を続けた目的は「家計の維持」。治療と仕事を両立できたのは「職場の上司・同僚・部下等の理解・協力があったから」
就労を続けた目的を聞いたところ、最も多くの有職女性が「家計を維持するため」(74.0%)と回答しました。治療と仕事を両立できた背景として、半数以上が職場や家族の理解・協力を挙げており、給与の維持や柔軟な働き方の容認を大きく上回る結果となりました。がん治療と仕事の両立支援に向けて、制度の整備や運用は必要な一方、一緒に働く仲間など身近な存在からの理解や協力が大切であることがうかがえます。

<がんと診断されて以降も、就労を継続した目的は何ですか(上位5つ)>(n=200、複数回答)
1位:家計を維持するため     74.0%
2位:治療費を工面するため    35.5%
3位:働くことに喜びや生きがいを感じるため 28.5%
4位:社会との接点を持ちたいため 26.0%
5位:職場で必要とされているため 22.5%

 <治療と就労を両立した理由は何ですか(上位5つ)>(n=200、複数回答)
1位:職場の上司・同僚・部下等の理解・協力があったから 64.0%
2位:家族の理解・協力があったから 53.0%
3位:給与がほぼ維持できたから 36.5%
4位:労働時間や勤務場所が柔軟だったから 32.5%
5位:残業がない(少ない)働き方だったから 28.0%

(5)がんの診断を「直属の上司」に報告した人は9割。伝えたことで、半数近くが、「周囲からの理解・協力」や「休暇の取りやすさ」に関してメリットを得たと回答。一方で、「過剰な気遣い」や「むやみな詮索」には難色を示す声も
がんの診断を自ら報告した相手について質問したところ、圧倒的に多くの有職女性が「直属の上司」(92.5%)と回答しました。「勤務先の誰にも打ち明けていない」人はわずかに3.5%で、勤務先にがんを罹患したことを伝えたメリットとして、約半数が、「職場の上司・同僚等の理解・協力を得ることができた」(53.4%)、「治療や病状に応じた休暇を取りやすくなった」(45.6%)と回答しました。一方、報告したことによるデメリットは、「特にはなかった」(67.4%)という回答が6割以上を占めたものの、「過剰な気遣いをされた」(16.1%)、「治療や病状をむやみに聞かれた」(11.9%)ことに、難色を示す声もあげられました。

 <がんと診断されたことを、自ら直接、勤務先の誰に伝えましたか(上位5つ)>(n=200、複数回答)
1位:直属の上司 92.5%
2位:同僚    44.5%
3位:先輩社員  36.0%
4位:後輩社員  17.5%
5位:人事担当者 16.0%

<がんと診断されたことを勤務先に伝えたことで、働き方や処遇のメリットはありましたか(上位5つ)>(n=193、複数回答)
1位:職場の上司・同僚等の理解・協力を得ることができた 53.4%
2位:治療や病状に応じた休暇を取りやすくなった  45.6%
3位:業務量・内容の調整、業務分担の変更等、負担が軽減した 27.5%
4位:今後の働き方について、自らの意思を確認してもらえた  22.3%
5位:特にメリットはなかった  18.7%

<がんと診断されたことを勤務先に伝えたことで、働き方や処遇のデメリットはありましたか(上位4つ)>(n=193、複数回答)
1位:特にデメリットはなかった 67.4%
2位:過剰な気遣いをされた   16.1%
3位:治療や病状をむやみに聞かれた 11.9%
4位:勤務評価に影響があった  7.8%

(6)「勤務先での配慮」を欲していたのは全体の8割。具体的には「傷病休暇・制度の充実」、「柔軟な勤務形態の容認」
勤務先で配慮して欲しかったことの有無を質問したところ、82.5%の有職女性が「はい」と回答し、何かしらの配慮を望んでいたことがわかりました。具体的には、「傷病休暇・休業制度の充実」(40.0%)、「柔軟な勤務形態の容認」(37.5%)といった働き方の選択肢に関する配慮のほか、「治療に関する費用の助成」(30.0%)、「業務量・内容、業務分担等の調整」(24.5%)を望む声もありました。

<がんの罹患に関連して、勤務先で配慮して欲しいと思ったことはどのようなことでしたか>(n=165、複数回答)
1位:傷病休暇・休業制度の充実 40.0%
2位:柔軟な勤務形態の容認   37.5%
3位:がん治療に関する費用の助成  30.0%
4位:業務量・内容、業務分担等の調整  24.5%
5位:今後の働き方についての意思確認  21.0%
6位:社員へのがん治療に対する理解啓発、研修の実施  10.5%

(7)がんと診断以降、3人に1人は「仕事に対する姿勢や考え方が変化」。具体的には「業務の進め方」、「ワークライフバランスへの意識」、「働くことへのモチベーション」に関する変化が目立つ
がんの診断以降、仕事に対する意識の変化の有無については、3割以上が「変化した」(36.5%)と回答しました。なかには、がんの罹患を経て働くことへの意欲が高まったという有職女性もいるため、一方的に業務量を減らすのではなく、本人の希望を尊重することも重要になると考えられます。

【具体的な変化の内容(自由回答)】
■業務の進め方
「前倒しで進めるようになった」(30代)
「きちんと自己管理をしながら仕事に取り組むようになった」(40代)
「急に休んでも周りに引き渡せるような進め方を意識するようになった」(40代)
「無理をせず、他の人に頼めるものは頼むようになった」(40代)

■ワークライフバランスへの意識
「仕事よりも健康第一で考えるようになった」(50代)
「仕事中心の生活にならないよう、他の時間を楽しく過ごしたいと思うようになった」(50代)

■働くことへのモチベーション
「限りある人生なので、やりがいのある自分の求める仕事をしようと思うようになった」(20代)
「働き続けられることに感謝した」(40代)
「社会に貢献できるような仕事がしたいと思うようになった」(40代)

【調査結果概要 <人事担当者を対象とした調査>】

(1)がん治療のために利用できる制度で、最も多くの企業が導入済みなのは「傷病休暇・休業制度(賃金支給あり)」。各制度の導入率は半数を下回り、企業の規模によって差がある
最も多くの企業が「傷病休暇・休業(賃金支給あり)」(47.5%)と回答しました。しかし、従業員数300人以上の企業では59.0%であるのに対して、従業員数300人未満の企業では35.8%と、23.2ポイントの差があり、企業規模によって差があることがうかがえました。

(2)がん疾患啓発に向けた取り組みがない企業は4割。半数の企業が「人間ドック、がん検診受診の促進」を実施
42.3%の企業が「特にない」と回答し、がんにまつわる具体的な啓発は広く行われていないことが明らかになりました。全体の半数を超える企業は「人間ドック、がん検診受診の促進」(52.0%)を実施していますが、「社員へのがん治療に対する理解啓発、研修の実施」(11.4%)や「研修の実施治療と仕事の両立に向けた勤務制度の整備」(9.4%)など、その他の取り組みは総じて低い実施率となりました。


【調査概要】
調査対象
1)5年以内にがんを罹患し入院経験がある20代~50代の女性200人
(診断時に正社員、現在も何かしらの形で就業中)
2)企業の人事担当者596人(従業員数300人以上:300人、従業員数300人以下:296人)
調査方法:インターネット調査
調査実施時期:2017年7月21日~31日

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