「介護と仕事の両立」についての調査(親族の介護に携わった経験のある管理職(部長職、課長職)対象) 

2017年11月08日
アデコは、11月11日の「介護の日」を前に、親族の介護に携わった経験のある管理職(部長職、課長職)600名を対象に、「介護と仕事の両立」についてアンケート調査を実施しました。

2017年1月に「改正育児・介護休業法」が施行され、通算93日取得可能な介護休業の分割取得や、介護休暇の半日単位での取得、所定外労働(残業)の免除が認められるようになりました。さらに10月の改正では、企業に対し、これらの制度を社員に周知する努力義務が課せられるなど、介護と仕事の両立支援策の拡充が進んでいます。

実際に、少子高齢化が進む中、働き盛りの世代は、親族の介護と仕事の両立を迫られています。管理職は、自身が仕事と介護の両立に直面しながら、一方で、「ケアボス」という言葉に表されるように、介護を担う部下に配慮する役割も求められています。そこで、アデコでは、介護と仕事の両立推進の現状や意識を把握するために、介護に携わった経験のある管理職を対象として、介護と仕事の両立について調査しました。

〈調査結果サマリー〉

1.介護に携わる管理職の47.5%が「退職を考えたことがある」。
介護への関与が大きい管理職の場合は、退職を検討する割合が57.2%に上昇し、離職リスクがさらに高まる。

2.「介護と仕事の両立」に不安を感じたことがある管理職は、77.3%。介護への関与が大きい管理職では、83.3%にのぼる。
「不安」の具体的な内容は、「精神的な負担」(50.4%)が最も高く、続いて「同僚・部下の仕事に影響が出る」(49.8%)、「労働時間が長く、介護に時間を割けない」(47.0%)、「体力的な負担」(42.5%)。

3.介護を担う部下を持つ管理職のうち、91.9%は部下を支援したいと思っている「ケアボス」志向。
一方、実際に「支援できた」と考える管理職は73.5%で理想と現実で18.4ポイントの開きがある。
「業務量や役割分担の調整が困難」(57.0%)、「プライベートなことなので聞きづらい」(38.8%)といった点が、部下の「介護と仕事」の両立支援における課題。

今回の調査結果から、介護に携わる管理職が直面する課題が明らかになりました。介護を理由に離職をする人は年間10万人にのぼり、労働人口が減少する中、介護と仕事の両立に向けた支援の重要性は増しています。職場の中核を担う立場である管理職が、介護を理由に職場を離れることは、本人のキャリア開発の実現を妨げるだけではなく、企業の生産性や競争力を低下させる要因の一つになります。企業には、制度を利用しやすい職場の風土醸成と労務対策が求められます。

〈調査結果概要〉

1.介護離職に対する意識
(1)介護を理由に退職を考えたことがある管理職は47.5%。介護への関与度が高い管理職はさらに離職リスクが高い。
介護の必要性に迫られ退職する「介護離職」が課題となる中、今回の調査では、「介護を理由に、退職を考えたことがある」人が47.5%と半数近くにのぼりました。また、介護のために会社を休むなど介護への関与度が高い管理職に着目すると、退職を考えたことがある割合は57.2%とさらに上昇しました。介護の負担が増えるにつれ、離職リスクが高まることが明らかになりました。

(2)退職を考えた理由は、「体力・精神的な負担や不安」(20.7%)や「介護状況の変化、介護を優先したい」(18.2%)から。一方、退職を考えなかった理由は、「収入面での不安」(26.0%)があったから。
退職を考えたことがある285名に、理由をたずねたところ、「体力・精神的な負担や不安」(20.7%)が最も多い結果となりました。一方、退職を考えたことがない315名のうち、26.0%が「収入面の不安」を理由に挙げています。先の見えない介護で、離職によって収入が減少し、経済的に不安定になる事態は避けたいという状況が見て取れます。

2.介護と仕事の両立における不安
(1)介護と仕事の両立で不安を感じる管理職は77.3%、介護への関与度が高い管理職では83.3%にのぼる。
介護と仕事の両立における不安の有無をたずねたところ、「とても不安がある」(29.3%)、「どちらかといえば不安がある」(48.0%)と合わせて77.3%が介護しながら働くことに不安があることがわかりました。介護を理由に会社を休んだことがある管理職においては、不安を感じる割合が83.3%とさらに高い傾向になりました。介護への関与度と比例し、両立への不安が大きくなることがうかがえます。

(2)不安を感じる理由は「精神的な負担」が最多で50.4%。周囲の仕事への影響、労働時間の長さ、体力的な負担に加え、今後のキャリア形成への懸念も。
不安を感じる理由として、「精神的な負担がある」(50.4%)が最も多く、「同僚・部下の仕事に影響が出る」(49.8%)、「労働時間が長く、介護に時間を割けない」(47.0%)、「体力的な負担がある」(42.5%)が続きました。また、「人事評価への影響」(20.0%)や「昇進への影響」(13.4%)といった、今後のキャリア形成への懸念の声もありました。介護との両立を理由に、現在のポジションを奪われる不安を払拭できるよう、制度と職場環境の整備が求められます。

3.介護と仕事の両立支援制度の利用状況
(1)介護を理由に、会社を休んだことがある管理職は、67.0%。 8割以上が「有給休暇制度」を利用。
介護を理由に会社を休んだことがある管理職は、67.0%。そのうち、88.1%が「有給休暇制度」を利用しており、対象家族1人につき1年に5日取得できる「介護休暇」(15.9%)と、家族1人につき通算93日を3回まで分割取得できる「介護休業制度」(2.7%)の利用は低い状況に留まりました。企業によって対応は異なりますが、介護休暇は無給であることが多く、一方で、介護休業は雇用保険から給付金を受け取ることができるものの、事前に申請手続きが必要になります。これらを踏まえ、まずは有給休暇の消化を優先し、介護休暇・休業の取得を控える傾向にあると考えられます。

(2)介護に関連して利用できる制度のうち「半日単位、時間単位の休暇制度」(63.5%)の利用が最多。約3割が「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟に出退勤できる制度」を活用。
介護に関連して利用できる制度と、その利用の有無についてたずねたところ、「半日単位、時間単位の休暇制度」の利用率は6割を超えました。次いで、「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟に出退勤できる制度」は、3割が利用したと回答しました。介護は突発的な対応が発生することも多いため、勤務時間を柔軟に調整できる制度が利用されています。

(3)制度を利用しづらいという管理職は63.2%。自身や部下の業務への支障を懸念。
介護に関連して利用できる制度が「利用しづらい」と回答した管理職は63.2%と半数以上を占め、その背景には、「自身の業務に支障が出る」(73.1%)、「部下の業務に支障が出る」(54.1%)といった業務への影響を懸念していることがわかりました。さらに、「管理職で、介護を理由に休みを取る人がいない」(37.7%)、「休みを取りにくい雰囲気がある」(32.7%)といった、休みを取りにくい職場環境が制度利用を左右していることもうかがえました。

4.介護について職場での相談先
(1)7割以上の管理職が「職場の上司」に、介護を携わっていることを打ち明けている。一方、部下に伝えるのは全体の半数以下で、41.3%とやや低い割合。
介護との両立について打ち明けた相手をたずねると、「職場の上司」(71.8%)と「職場の部下」(41.3%)で30.5ポイントの差があり、部下に伝える割合はやや低いことが明らかになりました。

5.介護に携わる部下への支援状況
(1)介護を担う部下を持つ管理職のうち、91.9%は、部下を支援したいと思っている「ケアボス」志向。一方で、「ケアボス」として実際にサポートできたと考える管理職は73.5%で、理想と現実に18.4ポイントの開きがある。
部下が介護と仕事を両立できるよう配慮する上司、いわゆる「ケアボス」に関連して、介護に携わる部下に対する意識についてもたずねました。介護を担う部下を持つ管理職は47.3%で、そのうち91.9%が「介護に携わりながら働く部下を支援したい」と、「ケアボス」の志向がある人がほとんどを占めました。一方で、実際に「『ケアボス』として支援できている」と考える管理職は73.5%となり、支援したいという理想と現実では、18.4ポイントの開きがみられました。

(2)介護に携わる部下の両立支援にあたって、管理職の課題は「業務量や役割分担の調整が困難」(57.0%)、「プライベートなことなので聞きづらい」(38.8%)。
さまざまな業種で人手不足が深刻化する中、介護に携わる部下の支援には「業務量や役割分担の調整」を課題と感じる管理職が最も多い結果となりました。次いで、約4割の管理職が「プライベートなことなので聞きづらい」(38.8%)と回答し、仕事以外の領域に、どこまで踏み込んでよいのか悩んでいることがわかりました。

(3)ケアボスとして、部下の就業継続支援として「今後の働き方について、本人の意思確認」(58.7%)を最も重視。次いで、「当事者以外のメンバーへのフォロー」(51.8%)や「メンバーの業務の見える化」(45.3%)といったチームマネジメントに注力する傾向。
部下の就業支援を行うケアボスとして、必要な対応をたずねたところ、「今後の働き方について、本人の意思確認」(58.7%)を最も重視していることが明らかになりました。次いで、「当事者以外のメンバーへのフォロー」(51.8%)や「メンバーの業務の見える化」(45.3%)をあげており、本人の意思を把握した上で、メンバーの業務量やモチベーション管理といったチーム全体のマネジメントに注力したい意向がうかがえます。


【調査概要】
調査対象:親族を介護した経験があり、直属の部下を持つ管理職(課長職・部長職)600名
調査方法:インターネット調査
実施時期:2017年10月

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[アデコ]
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