マンション居住者 防災アンケート調査 

2017年11月16日
東急コミュニティーは、災害対策の課題と実効性のある対策の啓発を目的に、30代以上の男女3,128名のマンション居住者※1を対象に、災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査を10月に実施しました。震災被害経験者(以下、「経験者」)と震災被害非経験者(以下、「非経験者」)の回答を比較・分析することで、世帯単位で行う「自助」、およびマンション単位で行う「共助」の災害対策の実態や課題が明らかになりました。

【調査結果の主なポイント】

Ⅰ.世帯単位で行う「自助」について、経験者から学ぶ、シミュレーションの大切さ

1.経験者から学ぶ 家庭で行う災害対策3要素 
      震災被害経験者の災害対策における優先ポイントは『3つのリスク』への準備。
  ①命を守る(家具の転倒防止)
  ② ライフラインの代替(懐中電灯・乾電池やカセットコンロ)
  ③ 生活必需品の確保(薬・メガネ・コンタクトレンズ)

2.経験者から学ぶ 災害を想定して行うこと 
  家族間での災害発生時の状況・初動の話し合いや共有が、震災被害経験者の日常的備え。
  「シミュレーション」があるからこそ生まれる対策の具体性。

3.経験者から学ぶ 災害発生時の初動 
  30秒後に大きな地震が起きるとしたら?非経験者の「お手上げ」的回答が経験者の1.6倍に。
  経験者の「想定」する力が、“もしも”の時にも諦めない気持ちの糧に。

Ⅱ.マンション居住者の潜在的な「共助」意識は高い。だからこそ大事なマンションコミュニティー

4.「近隣世帯を助けようとする意識」は 78.6%。潜在的な共助意識の高さ 
  一方で「災害発生時に近隣世帯が助けてくれることへの期待」は 44.2%。意識の差が鮮明に。
  “助けたい”を“助け合う”に。ギャップの解消は気持ちの通うコミュニティーづくりから。

5.知っていますか?お住いのマンションの災害対策 
  「知っている」の割合、500戸以上の大規模マンションが最も高い結果に。
  管理組合によるイベントや行事など住民のコミュニケーションのための場づくりが有効。

今回の調査結果に対し、災害イマジネーションの重要性を提唱する東京大学の目黒公郎教授は「正しい予測と自覚に基づき、マンション単位での「共助」、世帯単位での「自助」の視点から最適な防災対策を考える『戸別防災(こべつぼうさい)』※2が安心・安全への第一歩なのです。」とコメントしております。

※1:3大都市圏と1995年以降に最大震度6弱以上の地震によって震度5強以上を観測した地域にお住まいの方
※2:戸別防災=地域や立地、住居や家族構成などの生活環境を踏まえ、災害発生時に起こり得る被害を事前にシミュレーションしたうえで、世帯およびマンション単位での具体的な防災対策を行うこと

【調査結果】

Ⅰ.世帯単位で行う「自助」について、経験者から学ぶ、シミュレーションの大切さ                 
1.経験者から学ぶ 家庭で行う災害対策3要素 ~震災対策は“3つのリスク”に対する備えが大事~
Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していることについてあてはまるものをすべてお答えください。

・過去の震災で被害に遭った経験者とそうでない非経験者の家庭で行っている災害対策を比較しました。両者の差が大きい震災対策は「命のリスク」、「ライフラインのリスク」、「生活必需品のリスク」と3つのカテゴリーに分類できることが分かりました。

・経験者は、被害の実体験を踏まえた対策を行っていると考えられ、非経験者との実施割合の差の大きさは防災意識の差を表していると言えます。震災対策はこの“3つのリスク”に備えることが有効です。

・また、下記「参考データ」から分かるように、過去の大きな震災で最も多かった被害は「家具や家電製品の転倒」です。まずは「命のリスク」への備えを優先させ、“生き延びる”よりも“生き残る”ための対策を行う必要があると言えます。

※この比較の元となる「過去の大地震で被害に遭った『震災被害経験者』」は次の参考データによって抽出しました。

 【参考データ】過去の震災で経験した被害:大震災経験地域では「家具や家電製品の転倒」が最多で半数以上

Q.(過去に震度5強以上の地震を経験した方)あなたは過去に経験した大地震で下記のような被害に遭遇したり経験を余儀なくされたりしたことがありますか。あてはまるものをすべて選んでください。(複数回答)

過去に震度5強以上の地震を体験した人のうち、比較的多くの人が遭遇した被害は「家具や家電製品の転倒」(45.5%)、「ライフライン(電気、ガス、水道)が丸3日間以上停止」(34.3%)、「建物外壁や柱の損傷」(32.9%)、「住居内の壁の損傷」(26.3%)、「丸3日間以上排水口やトイレから水を流せなかった」(20.9%)、「エレベーターの停止、閉じ込め」(15.6%)でした。

※上記の調査結果のポイント1で比較した経験者は、この設問でいずれかの被害を選んだ人です。

2.経験者から学ぶ 災害を想定して行うこと ~災害発生を想定した事前のシミュレーションが大事~
Q.あなたが災害を想定して行ったことで、次の中からあてはまるものをすべて選んでください。(複数回答)

・経験者と非経験者を比較したところ、両者の差が大きい行動は「家族で災害発生時の想定や行動を話し合った」(20.7%、差7.0%)、「家族と災害時の集合場所や連絡方法を確認した」(25.4%、差6.4%)であり、経験者は非経験者に比べて、家族と災害時の対策について話し合い、確認している割合が高いことが分かりました。
・いずれの行動も実施率が高いとは言えず、マンション居住者に対して、災害を事前にシミュレーションして対策する重要性について、いっそうの普及啓発が求められると言えます。

3.経験者から学ぶ 災害発生時の初動 ~災害時のファースト・アクション~
Q.あなたが在宅の際、もし今から30秒後に震度6弱以上の地震が起きることが分かったとしたら、あなたはそれまでの間に何をしますか。それぞれ自由にご記入ください。わからない場合は、「わからない」とご記入ください。(自由回答)

・(図4)非経験者は、「わからない」など「お手上げ」となるような回答が19.4%と、経験者の12.0%より7.4%(1.6倍)も高く、経験者は行動を具体的に回答している傾向があります。これは、経験者は過去の震災被害の体験から得た教訓・知見をもとに、地震を想定した具体的な行動の想定(シミュレーション)ができている一方で、非経験者は、どのような被害をどのような行動によって防ぐべきかが、体験として分かっていないためだと考えられます。

Ⅱ. マンション居住者の潜在的な「共助」意識は高い。だからこそ大事なマンションコミュニティー 

マンション単位で行う「共助」については、全体的な傾向として、近隣世帯に対する潜在的な共助意識は高く、さらに大規模マンションほど、その傾向が高いことが分かりました。また、管理組合が行う災害対策についても、中小規模のマンションよりも大規模マンションの方が、認知度が高い結果となりました。このことから、マンションの規模(戸数)が影響を与えることや、管理組合が、積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催し、防災を啓発することで、共助意識が高まる可能性が示されました。

4.「近隣世帯を助けようとする意識」は 78.6%。潜在的な共助意識の高さ
Q.次の選択肢について、あなたの行動やお考えにあてはまるものどちらかを選んでください。(単一回答)

・近隣世帯との関わり方に対する全体の平均値としては、(図5)「災害発生時に近隣世帯を助けようとする意識」は78.6%あり、(図6)「災害発生時に近隣世帯が助けてくれることへの期待」の44.2%に対して、マンション居住者は近隣を助けようとする共助意識が比較的高くなっています。
・マンションの戸数別にみると、500戸以上のマンションでは、(図5)「助けようとする意識」は83.4%、(図6)「助けてもらえる期待」は49.7%とともに最も高いです。これは、500戸以上のマンションが(図7)「管理組合のイベントや行事への参加」(52.4%)や(図8)「管理組合や自治会の防災・避難訓練への参加」(50.3%)の参加率が最も高いことが影響していると考えられます。
・大規模マンションは、管理会社のスタッフが常駐するケースも多いため、管理組合による防災イベントの運営やマネジメントの体制が機能しやすいことも一因として挙げられます。 
・この結果から、500戸以上の大規模マンションは管理組合が積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催しているケースが多く、それにより共助意識が高まったと考えられます。
・これらのことから、相互に助け合う意識の醸成には、良好なマンションコミュニティーの形成が有効と考えられます。

5.知っていますか?お住いのマンションの災害対策 ~規模による意識の違い~
Q.あなたは現在お住まいのマンションの管理組合では、「建物の耐震性診断の実施」、「災害に備えた水・食料、生活用品や機器などの備蓄」、「災害対策マニュアルの策定」の取り組みを行っているかどうかご存じですか。当てはまるものを選んでください。(各単一回答)

・調査結果のポイント4で確認したように、大規模マンションは管理組合や自治会が積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催しているケースが多く、それが防災意識向上に繋がっているためだと考えられます。
・マンションの管理組合が行う災害対策の認知状況について、「具体的な内容を知っている」と答えた割合が最も高いのはいずれも500戸以上で、(図9)「建物の耐震性診断の実施」は42.8%(全体との差12.8%)、(図10)「災害に備えた水・食料、生活用品や機器などの備蓄」は40.5%(差15.7%)、(図11)「災害対策マニュアルの策定」は55.3%(差12.5%)でした。


【調査概要】
・調査実施日:2017年10月3日~10月5日
・インテージの調査モニター:30代~60代以上、男女3128名、マンション所有・居住者(基本属性で抽出)
 エリア1)震度5強以上の大地震経験地域のマンション住人(1543サンプル)
  <1995年以降の最大震度6弱以上を観測した地震で震度5強以上となった自治体(市のみ)>
 エリア2)三大都市圏のマンション住人(1585サンプル)
  <首都圏、関西圏、東海圏のうちマンション世帯率10%以上の都府県>

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