産業能率大学は、今年度の新入社員の海外志向などを尋ね、「新入社員のグローバル意識調査」としてまとめました。調査は2017年8月30日から9月11日までの13日間、インターネット調査会社を通じて実施。今年4月に新卒採用された18歳から26歳までの新入社員を対象としています。

*このテーマに関する調査は、2001年度から3年に1度実施しており、2010年度からは隔年で実施しています。第3回(2007年度調査)までは本学が開催する新入社員研修の参加者を対象に書面アンケートで実施していましたが、第4回(2010年度調査)から調査方法を変更し、インターネットリサーチでその年度の新入社員を対象に行っています。第1回から継続している質問もありますが、第3回以前と第4回以後で調査手法が異なることに留意してください。

【結果概要】

「海外で働きたいとは思わない」6割

海外で働いてみたいかどうかを尋ねたところ、「働きたくない」とする回答が60.4%(前回比-3.3ポイント)で過去2番目に高い数値となりました。留学経験の有無別に見ると、留学経験者は76.5%(「どんな国・地域でも働きたい」+「国・地域によっては働きたい」)が海外勤務に前向きなのに対して、留学経験が無い層は、70.0%が「海外で働いてみたいとは思わない」と回答しています。

働いてみたい地域 「アジア」増加 北米に並ぶ

「国・地域によっては働きたい」とした回答者に、働いてみたい地域を複数回答で尋ねたところ「欧州」75.3%、「アジア」44.8%、「北米」44.8%となりました。「アジア」は前回調査比で6.3ポイント増加しています。日本企業における中国やベトナムなどアジアへの進出増加を背景に、新入社員が働いてみたいとする地域にも変化が見られます。

日本企業はグローバル化を進めるべきだと思う 過去最高

日本企業はグローバル化すべきだと思うかを、「進めるべき」「どちらかと言えば進めるべき」「どちらかと言えば進めるべきではない」「進めるべきではない」の4択で尋ねました。この設問は、第5回調査(2013年度調査)より継続して尋ねていますが、今回の調査ではグローバル化推進に肯定的な見方(「進めるべき」+「どちらかと言えば進めるべき」)が過去最高となりました。

学校の英語教育 4技能のうち3技能は“役に立った”

最終学歴までの学校における英語教育で、[読む/聞く/話す/書く]4つの技能それぞれの能力向上について、どの程度役に立ったかを尋ねました。4技能のうち「読む」「聞く」「書く」3技能の能力向上については、“役に立った”(「とても役に立った」+「どちらかと言えば役に立った」)とする回答が過半数となりました。

【調査結果】

1.海外留学
・留学経験「あり」 5人に1人 ( 前回調査比+5.2㌽)
・留学期間「1ヶ月未満」が最多


1-1.留学
2017年入社の新入社員に留学経験の有無を尋ねたところ(P.12/問1)、20.8%が「ある」と回答し、前回調査(2015年実施)より5.2㌽増加しました。男女別に見ると、留学経験「あり」の割合は女性が24.2%、男性が15.2%となり、女性が男性を9.0㌽上回りました。留学経験については第4回調査(2010年実施)より継続して尋ねており、経年で見ると留学経験が「ある」とする回答は過去最高となりました。
留学経験が「ある」と回答した人(n=166)に留学期間を尋ねました(P.13/問2)。留学期間で最も多いのは、「1ヶ月未満」で30.1%、次いで「1ヶ月以上~3ヶ月未満」で21.7%でした。

※前回調査までは、「半年未満」、「半年以上~1年未満」、「1年以上~3年未満」、「3年以上」の4項目で尋ねていましたが、今回調査から「半年未満」を細分化し「1ヶ月未満」、「1 ヶ月以上~3ヶ月未満」、「3ヶ月以上~半年未満」としています。

2.語学
・学校の英語教育 「読む」「聞く」「書く」能力向上に寄与
・学習している言語 ①英語 ②中国語 ③韓国語


2-1.英語の習熟度
英語をどの程度習得しているかを尋ねたところ(P.14/問3)、「英語は全くできない」とする回答が44.4%で前回より3.3㌽減少しました。
また、最終学歴までの学校における英語教育で、[読む/聞く/話す/書く]4つの技能それぞれの能力向上について「とても役に立った」「どちらかと言えば役に立った」「どちらかと言えば役に立たなかった」「全く役に立たなかった」の四択で尋ねました(P.15/問4)。“役に立った”(とても役に立った+どちらかと言えば役に立った)とする回答が過半数となったのは「読む」「聞く」「書く」の3技能でした。前回調査(2015年実施)との比較では(P.16)、4技能とも“役に立った”とする回答が増加しました。

2-2.語学の学習状況・意向
語学の学習状況・学習意向について尋ねたところ(P.17/問5)、「すでに勉強している」=14.6%、「会社が全て費用を負担してくれるなら勉強したい」=27.6%、「会社が一部でも費用を負担してくれるなら勉強したい」=19.6%、「自分で費用全額を負担しても勉強したい」=8.4%、「勉強したいとは思わない」=29.8%となりました。「すでに勉強している」とする回答を「留学経験の有無」で見てみると、「留学経験有」が34.9%、「留学経験無」が9.3%となり、留学経験者の方が語学学習に積極的に取
り組んでいるようです。
問5で「すでに勉強している」と回答した人(n=117)に、学んでいる言語を複数回答で尋ねたところ(P.18/問6)、英語が最も多く82.9%、次いで中国語(21.4%)、韓国語(15.4%)となりました。前回調査(2015年実施)の2位は韓国語でしたが、今年は中国語が前回から8.9㌽増加して2位となっています。また、問5で「学習したいとは思わない」以外の回答者(n=562)に、今後勉強したい言語について複数回答で尋ねたところ(P.19/問7)、英語が最多の74.6%、次いで中国語(32.4%)、フランス語(19.2%)となりました。前回調査と比較すると、スペイン語(前回比+5.0㌽)、韓国語(前回比+4.8㌽)、中国語(前回調査比+4.7㌽)などが増加しています。

・利用する語学の学習ツールに変化
・語学を学ぶ理由「今後の業務で必要となるから」


2-3.学習手段(ツール)
問5で「すでに学習している」とした回答者(n=117)に、どのような手段(ツール)を用いて語学学習をしているかを複数回答で尋ねたところ(P.20/問8)、「書籍・雑誌」(49.6%)が最も多く、「スマートフォンアプリ」(24.8%)、「インターネットサイト」(24.8%)と続きました。前回調査(2015年実施)と比較すると、「オンライン会話」(+6.2㌽)、語学学校(+4.7㌽)、「インターネットサイト」(+4.6㌽)が大きく増加しており、「TVの語学番組」(-3.6㌽)、「書籍・雑誌」(-3.3㌽)、「語学学校(通信)」(-1.5㌽)が大きく減少するなど、利用する学習ツールに変化が見られました。
問5で「学習したいとは思わない」以外の回答者(n=562)に、今後どのような手段(ツール)で語学を学習したいかを複数回答で尋ねたところ(P.21/問9)、「書籍・雑誌」(34.0%)、「語学学校(通学)」(27.6%)、「スマートフォンアプリ」(26.2%)となりました。

2-4.語学を学ぶ(学びたい)理由
問5で「すでに学習している」とした回答者(n=117)に、語学を学んでいる理由について複数回答で尋ねました(P22/問10)。学習理由で最も多かったのは「今後の業務で必要となるから」(36.8%)、次いで「海外勤務の可能性があるから」(33.3%)、「海外旅行やプライベートで必要だから」(31.6%)となりました。
問5で「学習したいとは思わない」以外の回答者(n=562)に、語学を学びたい理由について複数回答で尋ねたところ(P23/問11)、最も多かったのは「海外旅行やプライベートで必要だから」(38.8%)、「今後の業務で必要となるから」(23.3%)、「資格試験に合格したいから」(19.0%)でした。

3.海外志向
・海外で働きたいとは思わない 6割
・海外で働きたくない理由 「自分の語学力に自信がないから」63.6%


3-1.外国人への抵抗感
外国人が自分の会社の[経営トップ/上司/部下/同僚/取引先]であるという状況が生じた(生じている)場合に抵抗を感じるか尋ねました(P.24~25/問12)。同設問は第4回調査(2010年実施)から継続して尋ねていますが、「取引先」以外の全てのポジションで抵抗感が減少しています。外国人上司への抵抗感について、“抵抗を感じる”(「抵抗を感じる」+「どちらかと言えば抵抗を感じる」)とする回答は、前回調査(2015年実施)では51.1%で過半数となっていましたが、今回調査では47.0%でした。

3-2.海外勤務の意向
第1回調査(2001年実施)から継続して尋ねている「これから海外で働いてみたいと思うか」という設問において(P.26/問13)、「働きたいとは思わない」とする回答が、前回に続き6割を超えました。
海外留学経験者に限れば76.5%が海外勤務に前向きな回答をしており、海外留学の経験が無い人については70.0%が「働きたいとは思わない」と回答しています。

3-3.海外で働きたい層 (地域・理由・期間・不安)
問13で「国・地域によっては働きたい」とした回答者(n=223)に、働いてみたい地域を複数回答で尋ねました(P.27/問14)。その結果、上位3項目は「欧州」(75.3%)、アジア(44.8%)、北米(44.8%)となりました。また、問13で「どんな国・地域でも働きたい」「国・地域によっては働きたい」とした回答者(n=317)に、海外で働きたい理由を複数回答で尋ねたところ(P.28/問15)、「日本ではできない経験を積みたいから」(73.2%)、「自分自身の視野を広げたいから」(57.1%)、「語学力を高めたいから」(40.7%)となりました。前問と同じ対象者に、「自身が海外で勤務する場合、どの程度の期間が適切だと思うか」を尋ねました(P.29/問16)。その結果、およそ半数が「1年以上3年未満」と回答しました。海外勤務を命じられた場合に不安に思うことは(P.30/問17)、「治安」(65.6%)、「言葉」(56.2%)、「食事」(45.1%)と現地の環境に不安を感じていることが分かります。

3-4.海外で働きたくない層
問13で「働きたいとは思わない」とした回答者(n=483)に、海外で働きたくない理由を尋ねたところ(P.31/問18)、「自分の語学力に自信がないから」(63.6%)、「海外勤務は生活面で不安だから」(47.0%)、「海外に魅力を感じないから」(26.1%)となっています。

4.企業のグローバル化
・海外で活躍するために必要だと思う能力 「語学力・コミュニケーション力」74.8%
・日本企業はグローバル化を進めるべき 73.4%(前回比-3.1㌽)


4-1.海外で活躍するために必要だと思う能力
海外で活躍するために必要だと思う能力について複数回答で尋ねたところ(P.32/問19)、「語学力・
コミュニケーション力」(74.8%)が突出して高い数字となりました。次いで、「チャレンジ精神」(37.0%)、「異文化理解」(26.5%)となっています。留学経験の有無で比較すると、「協調性・柔軟性」(海外留学経験者+8.3㌽)、「主体性・積極性」(海外留学経験者+6.3㌽)の2項目については、海外留学経験者がより強く重要だと認識しています。

4-2.海外や異文化への関心度
海外や異文化との関わり方について、関心があるものを複数回答で尋ねたところ(P.33/問20)、「(海外旅行など)海外の観光地や歴史・文化を体験すること」(35.5%)、次いで「海外出張や海外赴任」(32.0%)、「海外移住など海外での生活」(20.0%)となりました。

4-3.グローバル化に対する認識
現在の日本企業におけるグローバル化の段階をどのように認識しているか、「黎明期」「成長期」「発展期」「全盛期」「成熟期」「衰退期」の6つの選択肢で尋ねました(P.34/問21)。全体として、「成長期」との見方が36.6%で最も多くなり、「発展期」が23.4%で続きました。また今後、日本企業はグローバル化を進めるべきか否かを尋ねました(P.35/問22)。その結果、“進めるべき”(「進めるべき」+「どちらかと言えば進めるべき」)との回答が79.5%となり、多くの新入社員が「日本企業は今後グローバル化をさらに推進していく必要がある」と考えているようです。


【調査概要】
調査対象:2017年度に新卒入社した新入社員
調査時期:2017年8月30日~9月11日 (13日間)
調査方法:インターネットリサーチ
有効回答:800人 (男性309人・38.6%/女性491人・61.4%)

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