国内CRO市場、SMO市場に関する調査 

2018年05月15日

矢野経済研究所は、製薬企業の研究開発戦略、国内のCROおよびSMO市場を調査し、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<CRO市場とは>
CRO(Contract Research Organization : 医薬品開発業務受託機関)とは、製薬企業が行なう臨床試験(治験)に関わる様々な業務の全てまたは一部を代行・支援するサービスを指す。本調査におけるCRO市場は、代表的な業務である医療機関で実施されるモニタリング(訪問、交渉)業務や回収された症例報告書のデータを電子化するデータマネジメント業務、治験薬の効果を統計的に検証する統計解析業務などを対象に、事業者売上高ベースで算出した。

<SMO市場とは>
SMO(Site Management Organization : 治験施設支援機関)とは、特定の医療機関(治験実施施設)と契約し、その施設に限定して臨床試験(治験)業務を支援するサービスを指す。本調査におけるSMO市場は、代表的な業務である治験管理業務(治験の過程で発生する様々な書類の整備・管理・保存)や治験コーディネーター業務(看護または薬剤の知識を持った専用スタッフを派遣しコーディネートする )などを対象に、事業者売上高ベースで算出した。

調査結果概要


 製薬企業各社は高度な技術を応用し革新的新薬の開発を目指しており、研究開発費も総じて増加傾向にある。新薬の研究開発には長期間を要する他、さらに近年は新薬創出の難易度がますます高まっており、とくに開発段階での臨床試験費用の増加が製薬企業にとっては大きな負担となっている。しかし、画期的な新薬創出を実現するための研究開発投資は製薬企業の生命線であり、今後も研究開発投資の規模は拡大すると見込まれる。

 一般社団法人日本CRO協会(JCROA)によると、2016 年の会員26社の合計総売上高は前年比12.7%増の1,723 億円である。国内のCRO市場には、協会加盟企業以外にも多数の有力企業が存在しており、非会員企業は20社程度にもおよぶ。これらを含めた2016年の国内CRO市場(事業者売上高ベース)は2,000億円規模に達すると推計する。

 一方、日本SMO協会(JASMO)によると、2016年度の会員35社の合計売上高(SMO事業のみ)は前年度比7.4%増※の352億14百万円と4年ぶりの増加を記録した。国内のSMO市場には、協会加盟企業以外にも一部有力企業が存在することや、業容拡大を目指さずに地域密着型や特定医療機関との連携で事業展開を図る小規模SMOなども存在する。これらを含めた2016年度の国内SMO市場(事業者売上高ベース)は380億円規模に達すると推計する。
※2015年度は会員38社の合計値。

注目トピック

製薬企業の研究開発動向と国内のCRO市場、SMO市場動向
 製薬企業は自社の強みとする領域を核として、重点領域に集中的に資源を投入することで創薬研究の生産性向上を図ると同時に、アンメットメディカルニーズ(有効な治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)に応える画期的な新薬の開発を目指している。各社の重点分野・領域を見ると、がんと中枢神経系疾患を挙げる企業が多い。これは、循環器系疾患や代謝性疾患では既存薬を超える新薬の開発が難しくなっていることに加え、とくにアンメットメディカルニーズが高いのががんと中枢神経系疾患であることも、がんと中枢神経を重点領域とする製薬企業が多い要因となっている。

 国内のCRO市場が好調に拡大している要因としては、製薬企業が治験コストの削減、効率化の推進で業務の外部委託を促進していることが挙げられる。とくに、モニタリング、DM/統計解析の他、最近では安全性情報処理支援業務などの外部委託が進展している。また、医療機器や再生医療など医薬品以外の分野の開発、コンサルティング業務なども増加している。今後は再生医療、臨床研究、製造販売後調査など新たな領域での受注拡大が期待される他、引き続き製薬企業の治験業務の外部委託の進展が見込まれる。さらに、プロジェクトとしては小規模であるが、バイオベンチャーやアカデミアからの受託も増加傾向にある。

 一方、国内のSMO市場については、製薬企業において生活習慣病治療薬の開発が一段落したことで、開発の主体ががんや中枢神経系疾患など難易度の高い疾患に移行し、受注から売上計上までに長時間を要する臨床試験が増加している。また、プロトコール数(治験計画届出件数)は増加しているが、契約症例数は減少している。試験の長期化に伴い売上原価が上昇し粗利益率が下降するなどSMO企業にとっては課題が増している。市場環境が変化する中で、大手のSMO企業を中心にクリニックから病院での治験に重点を置く企業が増加している。

調査概要


調査期間: 2017年11月~2018年3月
調査対象: 製薬企業、CRO(医薬品開発業務受託機関)、SMO(治験施設支援機関)
調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、郵送アンケートによる調査を併用

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[矢野経済研究所]
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