水にかかわる生活意識調査(20歳代から60歳代男女対象) 

2018年07月25日

ミツカン水の文化センターは、本年6月中旬に、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、大阪圏(大阪・兵庫・京都)、中京圏(愛知・三重・岐阜)の在住者1,500名を対象に、平成30年度「水にかかわる生活意識調査」を実施し、このほど集計結果をまとめました。

今回は、貧困や格差解消を目指すグローバルな取り組みとして昨今注目されている「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」に深く関わる「世界の水問題」をテーマに、その認知を探るための設問をはじめ、「日常の水意識」に関する新たな設問を加え、調査を実施しました。また、昨年に続き、当センターのアドバイザーであり、東京大学国際高等研究所・サステイナビリティ学連携研究機構教授の沖 大幹先生に、調査結果
を受けての解説をいただきました。

「水にかかわる生活意識調査」は、センター設立に先立ち、1995年に第1回目を実施して以来、ほぼ同じ内容で毎年6月に行っている定点調査で、今回が24回目となります。日常生活と水とのかかわりや意識、水と文化などについてアンケート形式で調べるという手法により、生活者の実感としての水の諸相を明らかにしようというものです。

調査結果概要


【1】 一般生活者のSDGsへの関心度は今ひとつ?
世界の水問題に対する低認知率が明らかに
…「水道水をそのまま飲める国はごくわずか」(67.1%)以外は、 いずれも認知率が3割未満

【2】 節水意識がますます低下
…“節水していない人”が6割に迫る過去最高値に

【3】 節水する理由は“環境配慮”より“節約”?
…全体の6割超が「水道料金節約のため」と回答
…「汚れた水を流さないため」や「環境保全のため」は1割前後の回答率

調査結果


世界の水問題と日常における水意識

水は、健康かつ文化的な生活や経済活動など、人々が生きるための営みすべてに欠かせない資源です。そして、持続可能な社会の実現に向け、水に関する問題は避けて通ることのできない問題であるとともに、発展途上国のみならず、先進国も含めたグローバル規模で解決すべき課題と言えます。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標においても、水問題は「6.安全な水とトイレを世界中に」という単独の目標のみならず、その他すべての目標とも密接に関わる最重要事項と言っても過言ではありません。そこで今回、「世界の水問題」をテーマに、世界で起きている水問題に関する認知の度合いを調査し、その結果を通じて一般生活者のSDGsへの関心度を間接的に探りました。
また、節水意識を探る趣旨で毎年実施している「家庭における水の使い方」の実態調査に加え、節水を意識する理由や、環境保全のために日常で取り組むべきだと思うことなども新たに調査しました。

Q.家庭で1日に使っていると思う水の量は? (11択)
◇“200リットル以下”の回答者が7割超

自分自身が家庭で1日に使っている水の量はどれくらいだと思うかを尋ねたところ、最も多かったのは「51~100リットル」(23.9%)で、「50リットル以下」(19.9%)、「101~150リットル」(14.7%)、「151~200リットル」(11.9%)と続き、これらを合計した“200リットル以下”の回答者が全体の7割を超えました(70.4%)。
ちなみに、東京都水道局によれば、家庭で一人が1日に使用する水の量は平均約220リットル(平成27年度)とされています

Q.水の使い方は? (4択)
◇“節水していない人”が過去最高の6割近くまで増加

家庭における水の使い方は、2015年に“節水していない人”の割合が5割を超え“節水している人”を上回ってからは、ほぼ横ばいが続いていましたが、今年は「節水・再利用のことは気にせずに水を使っている」(18.7%)が昨年から4.0ポイント、「節水・再利用は気にしながらも、特に何もせずに水を使っている」(39.7%)が昨年から1.8ポイントそれぞれ増加。この両者を合計した“節水していない人”は58.4%で、6割に迫る過去最高値となりました。

Q.節水や再利用を意識する理由は? (13択+その他+意識していない)
◇節水する理由は“環境配慮”より“節約”?
全体の6割超、女性の約7割が「節約のため」と回答。


本調査における節水意識の低下傾向を受け、今回新たに節水や再利用を意識する理由について調査したところ、1位「水道料金節約のため」(61.4%)が6割超で、2位「水の無駄遣いはもったいないから」(42.1%)を大きく引き離しました。一方、環境への配慮に関連する項目は、「節水は省エネにつながるため」(34.3%)が全体の4位だったものの、「CO2の削減につながるため」(11.7%・7位)、「環境保全を意識した暮らしをしているため」(11.3%・8位)、「汚れた水を流さないため」(9.1%・11位)などは1割前後の回答に留まり、“環境配慮”よりは“節約”のために節水を意識する傾向が明らかになりました。
男女別では、男性は女性より「節約のため」(男性55.3%、女性67.5%)で12.2ポイント、「もったいないから」(男性34.3%、女性50.0%)で15.7ポイントと、それぞれ大きく下回り、「意識していない」(男性18.0%、女性8.1%)では10ポイント近く上回るなどの差異がありました。

Q.世界の水問題で知っていることは? (10択+知っていることはない)
◇「水道水をそのまま飲める国はごくわずか」が約7割も、飲めない国の実態などの認知は3割満たず

水と衛生をはじめ、貧困、教育、産業、気候変動などSDGsの各開発目標にもつながると思われる世界の水問題について、予め項目を提示した上で、知っている事柄を選んでもらったところ、「水道水をそのまま飲める国はごくわずかと言われている」(67.1%)には約7割の回答があったものの、「水道インフラが整備されていない発展途上国ほど飲料水を安価に手にすることができない」(29.2%)、「安全な飲料水を手にすることができない人が約9億人もいる」(20.5%)、「不衛生な水や衛生設備の不備などにより、毎年約29万人の5歳以下の子どもが命を落としている」(17.9%)、「安全な水の確保が困難な地域では、子どもの就学や女性の社会進出の機会が奪われ ている」(13.8%)、「世界の約3人に1人がトイレのない生活を送っている」(10.6%)など、安全な水や衛生設備にアクセスできない地域の実態などを具体的に示した項目については、いずれも3割に満たず、その中の多くが2割にも達しませんでした。
SDGsの達成に向けては、現在、日本においても国や企業などによる積極的な取り組みが行われていますが、今回の結果を踏まえると、一般生活者における関心度は、今ひとつと言えるかもしれません。

Q.日本において深刻だと認識している水問題は? (7択+知っていることはない)
◇約3割の人が「知っていることはない」。大阪圏は「水道料金はエリアによって差がある」が4割超

次に、日本において深刻だと認識している水問題について、前述の世界の水問題と同様、予め項目を提示して聞いたところ、「水道料金はエリアによって差がある」と「40年を過ぎ老朽化した水道管が全体の10%に達している」が同率の34.5%で最も多く、次いで多かったのは「知っていることはない」(28.9%)で、全体の約3割を占め、日本における水問題についても、全体的に関心が低いことが分かりました。
なお、「水道料金はエリアによって差がある」は大阪圏では40.2%と、他のエリア(東京圏30.6%、中京圏32.8%)より高く、「老朽化した水道管が全体の10%に達している」や「外国資本による日本国内の森林や水源地の買収面積が増大している」は20代(25.7%、15.3%)と60代(50.7%、42.7%)でそれぞれ25ポイント以上の開きがあるなど、居住地や年代による差異が見られました。

Q.環境保全のために取り組むべきだと思うことは? (11択+思うことはない)
◇“無駄をなくす”取り組みが上位。“汚さない”意識は低め

環境保全のために日常で取り組むべきだと思うことを、予め提示した項目の中から3つまで選んでもらったところ、1位「生活用水の節水に取り組む」(53.3%)、2位「食べ残しや食品ロスをしない」(34.5)、3位「使わない電気はこまめに消す」(29.1%)となり、“無駄をなくす”ための取り組みが上位を占めたのに比べ、「洗剤、油などの生活排水を下水道に流さないようにする」は6位(20.0%)、「水道水を飲んだり、水筒を持参したりして、ペットボトルのゴミを出さないようにする」は7位(10.7%)と、排水を流さず、ゴミを出さない“汚さない”ことへの意識は低いことが分かりました。
また、「エコバッグを持参し、レジ袋をもらわないようにする」(男性20.7%、女性32.0%)の男女11.3ポイント差をはじめ、多くの項目で女性の方が高い数値となっており、性別による意識差も浮き彫りになりました。

水道水に関する意識

Q.水道水を10点満点で評価すると? (0~10の整数を自由回答)
◇平均が7点台を回復。10点満点回答率もアップ

水道水の評価は、昨年の調査で平均点が7点を大幅に割り込み、6点台半ばまで落ち込みました。
今年の結果は、全体の平均が昨年から0.47ポイント増の7.05点、東京圏が0.55ポイント増の7.01点、中京圏が0.52ポイント増の7.09点、大阪圏が0.34ポイント増の7.05点と、いずれも7点台を回復しました。また、10点満点をつけた回答者の割合も昨年から3.7ポイント増加の12.6%。居住地別では東京圏が最も高く、昨年比5.0ポイント増の13.4%でした(中京圏11.6%、大阪圏12.8%)。

Q.水道水について不満を感じていることは? (8択+その他+特に不満はない)
◇「水道料金」が1位に。「不満なし」は減少

水道水の評価得点がアップした一方で、水道水への不満については、昨年から2.1ポイント増加した「水道料金が高い」(34.4%)が1位となり、「特に不満はない」(34.1%)は4.8ポイント減で2位に後退。次いで「おいしくない」(24.4%)が3位、「臭いがある」(17.5%)が4位でした。
年代別にみると、「水道料金が高い」は50代、60代の高い年代が多く回答した一方で、「おいしくない」は20代~40代、「臭いがある」は20代、30代と、低い年代の回答が多い傾向が見られました。

水と生活・文化

Q.水と関わりの深い日本の文化は? (16択+その他+特になし)
◇「そのまま飲める水道インフラ」が4年連続1位。60代が特に高く、76.5%が回答

「そのまま飲める水道インフラ」が2015年の調査開始以降、4年連続の1位。昨年からさらにポイントを上積み(4.2ポイント増)し、6割超(60.3%)の回答を得ました。
中でも、60代は76.3%と回答率が特に高く、次に高かった50代(60.0%)と16.3ポイント、一番低かった30代(52.3%)とは24.0ポイントと大きく上回り、全体の数値を押し上げる結果となりました。以下は、2位「清潔で機能が充実した水洗トイレ」(47.4%)、3位「のどかな水田風景」(37.1%)、4位「豊かな水を蓄える森林や山々」(35.3%)、5位「温泉や銭湯などの入浴習慣」(33.1%)となり、これらの項目も、60代の数値が高い傾向にありました。

Q.知っている祝日・記念日は? (9択+知っているものはない)
◇「水の日」の認知上がらず2.7%

今回、水や自然にかかわる祝日・記念日の認知について2016年以来の調査を実施しました。
その結果、認知率の高かった上位3項目は「みどりの日(5月4日)」(73.9%)、「海の日(7月第3月曜日)」(73.7%)、「山の日(8月11日)」(48.5%)と、すべて祝日でした。「山の日」の認知は、2016年の時点では36.7%でしたが、施行から3年目の今年は5割近くまでアップしました。祝日ではない記念日では、「防災の日(9月1日)」が36.3%で唯一の2桁認知率だったものの、前回(46.7%)から10.4ポイント減少しました。その他は「水の日(8月1日)」(2.7%)をはじめ、いずれも1桁台でした。

調査概要


第24回(平成30年度) 「水にかかわる生活意識調査」
調査対象数:1,500票
調査対象者:東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)、大阪圏(大阪、兵庫、京都)、中京圏(愛知、三重、岐阜)に居住する20歳代から60歳代の男女
調査方法:インターネット調査
調査期間:平成30年6月7日(木)~6月12日(火)

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