ワイヤレス給電市場調査 

2018年08月24日

矢野経済研究所は、2018年のワイヤレス給電市場を調査し、アプリケーション別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<ワイヤレス給電市場とは>
ワイヤレス給電とは、電磁誘導や電界結合、磁界共鳴、マイクロ波などの方式による接点を設けない形式の給電システムを指す。
本調査におけるワイヤレス給電市場規模は、各アプリケーションに搭載される受電モジュールと受電機器を対象として算出している。アプリケーション(用途)としては、スマートフォンやウェアラブル機器等の小型電子機器用やEV用、AGV等の産業機械用、その他(医療機器、各種センサー、電動歯ブラシ等の家電品、家具、雑貨品、電動アシスト自転車、ドローン、電気推進船、AUV[自立型無人潜水機]等)用途の受電モジュール・受電機器が含まれる。

<市場に含まれる商品・サービス>
ワイヤレス給電用の受電モジュール、受電機器

1.市場概況

 2017年のワイヤレス給電世界市場(受電モジュール・受電機器)は、メーカー出荷金額ベースで1,223億1千万円であった。スマートフォンなど小型電子機器用が市場を牽引しており、またEV用や産業機械用、その他いずれの用途においても徐々に成長を遂げており、2018年の同市場規模は前年比142.4%の1,741億5千万円になると予測する。

2.注目トピック

スマートフォン用途におけるワイヤレス給電システムの躍進
 スマートフォンにワイヤレス給電機能を初めて搭載したのは2011年発売のシャープ株式会社製「AQUOS PHONE f SH-13C」である。その後も富士通株式会社やカシオ計算機株式会社などの日本メーカーが、株式会社NTTドコモと共同で置くだけ充電対応端末としてQi規格対応のスマートフォンを発売していたが、あまり広まることがなかった。当時はまだワイヤレス充電器の種類も少なく、充電スピードや精度も洗練されていなかったことや、消費者側もワイヤレス給電の利点をよく分かっていなかったことが大きな原因とみられる。

 しかし、2015年にSamsung Electronics Co.,Ltd.の「Samsung Galaxy S6」がワイヤレス給電システムを採用したことで一気に数千万台のワイヤレス給電機能搭載の端末が市場に現れ、対応の充電器を供給する企業も増えてワイヤレス給電の知名度も上がった。これにより、ワイヤレス給電の利点が広く知られ、スマートフォン用の外付けワイヤレス充電レシーバーが販売されるなど、普及が加速し始めた。その結果、これまでに1,000種類を超えるQi規格認証デバイスが市場に出荷されている。

 また、普及を滞らせていた規格争いも2017年にほぼ決着がついた状況となっている。主な規格としては、WPC(Wireless Power Consortium)のQi、AirFuel AllianceのAirFuel Inductive(旧称PMA)とAirFuel Resonant(旧称Rezence)があるものの、WPCのQi規格が最も採用されているスマートフォンでワイヤレス給電システムの主流となっている。2017年にAppleがWPCのメンバーとなったことで家具メーカーなど様々な業界の企業が続々と参加し始めており、2017年9月のメンバーは252社であったが、2018年6月には583社まで数を増やしている。

3.将来展望

 今後、市場の成長スピードは落ちていき、2019年のワイヤレス給電世界市場(受電モジュール・受電機器)は、メーカー出荷金額ベースで前年比126.2%の2,197億円、2020年には前年比108.6%の2,385億円になると予測する。これは2017年に市場規模の約65%を占めるスマートフォン用途でのワイヤレス給電システムの普及が一段落し、成長が頭打ちとなるためである。しかし、その後、多様なアプリケーションに受電モジュール・受電機器が搭載されることにより、2023年の同世界市場は3,590億円にまで成長すると予測する。

調査概要


■調査期間: 2018年3月~7月
■調査対象: ワイヤレス給電部品メーカー、ワイヤレス給電機器メーカー、ワイヤレス給電システムユーザ企業、大学、業界団体
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談取材

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[矢野経済研究所]
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