国内有力企業(異業種参入企業)の農業ビジネスに関する調査 

2019年11月08日

矢野経済研究所は、国内有力企業(異業種参入企業)における農業ビジネス参入動向を調査し、市場規模、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<国内有力企業(異業種参入企業)の農業ビジネス市場とは>
農業ビジネスには明確な定義はないが、一般的には農作物の生産分野、流通分野、またICTを活用した関連分野まで幅広い事業領域をさす。本調査における「農業ビジネス」とは、従来農業とは関連のない異業種から参入している国内有力企業における農産物の生産と販売に着目し、対象分野は、一般法人と農地所有適格法人による、農地活型農業ビジネス、及び施設栽培型農業ビジネスである植物工場・栽培施設(完全人工光型/太陽光・人工光併用型/太陽光利用型)とする(農家の法人成り事業は除く)。また、市場規模は異業種から参入している国内有企業の農業事業売上高ベースで算出している。

<市場に含まれる商品・サービス>
農地利用型農業ビジネス(農業生産法人タイプ/一般法人農地リースタイプ)、施設栽培型農業ビジネス(完全人工光型/太陽光・人工光併用型/太陽光利用型)

1.市場概況

国内有力企業(異業種参入企業)における2018年度の農業ビジネス市場規模は697億5,300万円と推計した。内訳は農地所有適格法人(農業生産法人)が112億3,200万円、農地リース(一般法人)が295億5,000万円、完全人工光型植物工場が59億6,900万円、太陽光・人工光併用型植物工場が17億6,100万円、太陽光利用型栽培施設が212億4,100万円である。

近年、農業を取り巻く環境は厳しい状況にあり、国内においては農業従事者の高齢化、農業就業人口の減少、耕作放棄地増加の問題がかねてから指摘されている。また、世界的な食料危機や気候変動下における生産作物への影響、貿易自由化促進などが国内農業に及ぼす影響も懸念されている。

​こうしたなか、消費者の食に対する安全意識や健康志向の高まり、また農業の6次産業化による成長戦略の推進、さらには震災復興や農業そのものへの注目度の高まりもあり、植物工場や施設園芸などの農業ビジネスに対する企業の関心は高まっている。

2.注目トピック

増え続ける異業種企業の農業参入
2009年12月15日に改正農地法が施行され、農業生産法人以外の一般法人についても、賃借(リース)であれば、農地を適正に利用するなど一定の要件を満たす場合には、全国どこでも参入可能となるなど、新規参入の規制が大幅に緩和された。こうした規制緩和を受け、農地所有適格法人(農業生産法人)だけでなく、一般法人による農業ビジネス参入事例も大幅に増加してきている。

農林水産省のデータによると、農地法改正以前の2003年4月から2009年12月までの約6年半の間に参入した法人数は427法人 、一方2009年12月から2016年12月末までの約7年で、新たに2,249法人が参入しており、2009年の改正農地法以降、一般法人の新規参入は改正前に比べて着実に増加している。農地を利用して農業経営を行う一般法人数は2017年12月末現在で3,030法人となっている。

​一般法人の農業参入(3,030法人)を営農作物別にみると、野菜は1,246法人の41%、複合経営が522法人の17%、米麦等が558法人の18%、果樹が382法人の13%などという状況である。

3.将来展望

国内有力企業(異業種参入企業)における2019年度の農業ビジネス市場規模は774億4,100万円を見込む。

​農地活用型農業ビジネス(一般法人・農地所有適格法人)は農地法改正など規制緩和により、異業種企業における農業参入の意欲は衰えておらず、引き続き増加基調で推移していくものとみる。また、施設栽培型農業ビジネス(完全人工光型/太陽光・人工光併用型植物工場/太陽光利用型栽培施設)については、高度環境制御の精度に関する技術的確立を背景として、近年、大型植物工場の稼働が始まっており、遺伝子組換え植物工場や生薬植物、さらに低カリウムレタスの機能性野菜市場などが異業種参入企業の農業ビジネスにおける業績全体を押し上げていくものとみる。

こうしたなか、国内有力企業(異業種参入企業)における2024年度の農業ビジネス市場規模は1,277億1,600万円まで拡大すると予測する。

調査概要


■調査期間: 2019年3月~6月
■調査対象: 農業ビジネス(農産物の生産・販売)に参入している国内有力企業(異業種参入企業)、国内関連諸機関等
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電子メール、及び電話アンケート調査、ならびに文献調査併用

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[矢野経済研究所]
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