業務用無人機(ドローン)の市場動向 

2017年09月22日
市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは業務用無人機(ドローン)に関する調査を行い、このほどその結果をまとめました。

シード・プランニングでは、業務用無人機(飛行機・ヘリ)の調査を2015年初旬に行いました。その後2年を経て業務用無人機を取り巻く環境は大きく変化しています。

改正航空法が2015年12月10日施行されたことにより、一定の制度が整備されました。さらに、国家戦略会議等を経て2020年にむけた制度整備が進んでいます。また、技術的にもマルチコプターの安定化、大型化も進んでおり、さらに、VTOLというエンジンタイプのドローンも業務用として投入されようとしています。

メディアでは、連日ドローンの新しいサービスについての記事が掲載されていますが、大半は実証実験レベルのもので、実際のビジネスとして成り立っているのは、空撮、測量、農薬散布、スクールといった分野にとどまっています。市場の現状は、未だ大きな新規ビジネスの創出には至ってはいませんが、単独サービスとしてだけでなく、他のIoT、ロボット、AIといった分野のビジネスに連携や内包されることで、伸びが期待できるとも考えられています。

このような状況を踏まえ、今回の調査では、ドローンメーカー、サービス事業者、周辺ビジネス事業者、ユーザーをヒアリングし、機体やサービスのリアルな市場の現状と将来展望を明らかにしました。

本調査結果の詳細は、市場調査レポート「2017年版 産業用無人機(ドローン)の市場動向と関連周辺ビジネス」として販売しています。

【調査結果のポイント】

■ 調査の範囲
調査対象は業務用、民生用は除外

ドローンの用途は業務用と個人が趣味等で利用する民生用にわかれる。本調査では「業務用」を調査対象とした。

「機体」と「サービス」に分けて市場を予測

「機体」は、事業者ヒアリング等により、業務用としてエンドユーザーに渡った台数と金額を推定してる。販売代理店在庫等は含めていない。

「サービス」は、業務用ドローンを活用して利用者に以下のサービスを提供する市場と定義し、11のサービス分野に分類して推計を行った。

<調査対象利用分野> (以下の11分野)

① 空撮 ・・・・・・・・・・ 上空からの静止画・動画撮影。
② 農薬散布 ・・・・・・・・ 圃場への農薬散布。
③ 精密農業 ・・・・・・・・ 圃場の上空からの観測でデータを収集解析。
④ i-Construction・測量 ・・ 土木工事や測量での写真撮影やレーザー測定など。
⑤ 点検 ・・・・・・・・・・ メガソーラー、橋梁、ダムなどの広い地域や高所などの点検。
⑥ 資材管理 ・・・・・・・・ ブラント、鉱山、工場などの大量の資材管理を、画像等の撮影で実施。
⑦ 警備 ・・・・・・・・・・ 上空からの警備。広い敷地内や大型イベントなどで利用。
⑧ 運輸・宅配 ・・・・・・・ 荷物を空輸。距離、重量、飛行場所など対応できる機器は異なる。
⑨ 運搬 ・・・・・・・・・・ 広い敷地内(工場、プラントなど)で物資を届ける。
⑩ 公共・災害・防止 ・・・・ 災害状況の把握などで活用。
  公共機関だけでなく、損害保険会社も被害把握に活用。
⑪ その他 ・・・・・・・・・ たとえば、農業での鳥獣撃退など、上記のいづれにも属さないもの。

■ 2022年に1,570億円の市場になると予測(2016年85億円の約18.5倍)
機体市場、サービス市場を合計した全体市場規模は、2016年85億円、2022年頃までは新分野での活用が進みドローンの新規導入も増える。このため機体市場とサービス市場は全体的に伸び、2022 年には2016年比約18.5倍の1,570 億円になると予測した。

■ ドローンを使ったサービスの市場が急速に成長する
 なかでも、資材管理、運輸・宅配、運搬分野の伸びが期待される

現状(2016-2017 年)

・現状では、空撮、農薬散布、i-Construction・測量分野で実際にビジネスが立ち上がっている。
・もともと農薬散布や空撮は無人機の活用が進んでいた分野である。農水協が認証するマルチコプタータイプの機体が市場に投入され、2017 年春から実際に稼働している。
・Construction・測量分野 は、以前からも実験や試行としては利用されていた。関連する基準・マニュアル(案)が国土交通省や国土地理院から発表され、利用が本格化している。
・点検はソーラーパネルの点検利用が多い。また、鉄道会社などインフラを保有する事業者が自社内で点検を行っている。鉄道以外にも、民間が保有するインフラの点検が2016 年頃から実験や試行がはじまりビジネスが立ち上がりはじめている。
・インフラ点検は国や地方公共団体が有する橋梁、トンネルなどの老朽化が問題視されており、ドローンやそれ以外のロボットの活用が期待されているが、実際には、従来の人手による点検方法を代替できるまでに至っていない。しかし、民間が所有するインフラでは、土木系の仕事などを通してノウハウを蓄積しつつあり、制度整備に先んじて出来る範囲で利用することで点検効率をあげようという動きがある。より早くデータや解析を手軽に欲しいというニーズも多く、実際に成果も一部見えてきており、ビジネスとして立ち上がりはじめている。
・空撮、農薬散布、i-Construction・測量、点検以外では、ほとんどのビジネスが実証実験レベルである。

2~3 年後(2018-2020 年)

・今後2~3 年は、2020 年の五輪開催に向けて、様々な実証実験や環境整備が行われる過渡期である。まだ、ビジネス化されていないサービス分野の多くは、実証実験から抜け出し、ビジネスとして成り立つことが期待されている。
・無人ヘリの市場発展に影響が大きい物流分野の制度整備が進むことが期待されている。

5 年後以降(2021-2027 年)

・5年後以降は、現状の規制が緩和され、自動航行による活用の広がりが期待されている。ドローンに期待される効果を真に発揮するには自動航行の実現が必要である。
・自動航行により、人手を介さない飛行が増えることにより、さらにデータが蓄積されそれをもとにした解析やコンサル業務が拡大する。


【調査概要】
調査対象:
産業用無人機(ドローン)のメーカー、サービス・ソリューション事業者、周辺事業者
・ ドローンビジネス参入事業者125件を調査
・ 以下については個票を掲載。
<機体メーカー・周辺機器メーカー事業者>
  DJI JAPAN    アミューズワンセルフ  エアロセンス
  サイトテック   プロドロー       マルチコプターラボ
  自律制御システム研究所(ACSL)      東光鉄工
  リーグルジャパン
<サービス・ソリューション事業者・団体>
  do         アイネット   スカイマティクス
  ダイヤサービス3   テラドローン   ライオンズフィルム
  楽天        楽天AirMap   中日本航空株式会社
  日立システムズ   日本無人機運行管理コンソーシアム (JUTM)
調査方法:主要企業の個別ヒアリング、公表資料の収集整理
調査期間:2017 年5月~2017 年8月

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[シード・プランニング]
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