国内の医薬品原薬・中間体市場 

2018年10月19日

矢野経済研究所は、国内の医薬品原薬・中間体市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<医薬品原薬・中間体市場とは>
医薬品原薬とは、医薬品製造工程で必要とされる有効成分物質であり、中間体は原薬の製造段階において製造される物質である。分子変化や精製などの工程を経て原薬となる。本調査における医薬品原薬・中間体市場とは、国内生産された医薬品原薬・中間体のうち製薬企業の自社生産分を除いた市場を指す。

<市場に含まれる商品・サービス>
医薬品原薬・中間体

1.市場概況

 2017年における国内医薬品生産金額(輸入品は除く)は約6兆2,000億円※と推測される。2017年度の国内の医薬品原薬・中間体市場規模(生産金額ベース、自社生産分を除く)は4,300億円の見込みで、国内医薬品生産金額(輸入品は除く)が減少傾向にある一方で、医薬品原薬・中間体市場の2013年度から2017年度までの年平均成長率(CAGR)は4.1%の見込みである。
 国内医薬品生産金額(輸入品は除く)は、薬価改定、ジェネリック医薬品の使用促進、長期収載品の薬価引き下げなどが影響し、低成長から近年はマイナス成長の様相を呈している。これに対し、医薬品原薬・中間体市場は成長を継続している。
 製薬企業は引き続き収益向上に向けて経営の効率化を図っており、とくに製造部門の外部委託を推進する企業が多い。医薬品原薬・中間体市場はこうした製薬企業の外部委託強化の流れに乗っているものの、国内医薬品生産金額(輸入品は除く)の縮小を背景として2016年度以降、成長率は鈍化している。
​※厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」より引用

2.注目トピック

医薬品原薬・中間体企業の課題
 市場拡大が継続している国内の医薬品原薬・中間体市場であるが、参入企業が成長を継続するためには課題や問題点も多い。近年における最大の課題は、品質と価格の両面において、高度化する顧客の要望に同時に対応しなければならない点である。過去においても品質と価格に対する製薬企業の要求は高かったが、医薬品の特質もあり、より品質に対する意識が高かった。
 しかし、医療費抑制策の強化、新薬承認数や大型新薬の減少、主力品の特許失効など製薬企業を取り巻く環境の変化に加え、2005年の改正薬事法施行に伴いインドや中国、韓国など安価な海外企業の日本市場進出強化などにより、製薬企業の意識も品質と価格のバランスをより重視するように変化している。

3.将来展望

 今後の医薬品原薬・中間体市場を予測する上で、成長要因と阻害要因を検討する必要がある。
 成長要因としては、大手製薬企業を中心に製造委託がさらに拡大すると見込まれる他、市場参入企業の増加と営業展開の強化、製造受託企業の設備増強や品質レベルの向上に伴う信頼性の向上などを背景に、受託案件の増加が挙げられる。
 ただし、ジェネリック医薬品の使用促進に伴う長期収載品の製造量減少、薬価改定などの阻害要因を背景に成長率が鈍化する可能性も高い。さらに、製造受託がある程度までの拡大を遂げたことで成長率の鈍化が見込まれる他、参入企業の増加に伴う競争状況が一段と激化する見通しである。

調査概要


■調査期間: 2018年7月~9月
■調査対象: 医薬品原薬・中間体製造受託および製造販売企業、製薬企業
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査を併用

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[矢野経済研究所]
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