スマート農業に関する調査 

2018年11月06日

矢野経済研究所は、国内におけるスマート農業市場(情報通信技術を利用した農業・畜産業)を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

<スマート農業市場とは>
本調査におけるスマート農業とは従来からの農業技術と情報通信技術を連携させることで、更なる生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指すものであり、農業の生産から販売まで情報通信技術を活用した、高い農業生産やコスト削減、食の安全性や労働の安全等を実現するものである。対象分野は①栽培支援ソリューション、②販売支援ソリューション、③経営支援ソリューション、④精密農業、⑤農業用ドローンソリューション、⑥農業用ロボットである。
なお、国内市場を対象とし、市場規模には農業向けPOSシステム、農機・ドローンなどのハードウェアは含まれていない

<市場に含まれる商品・サービス>
対象分野は①栽培支援ソリューション(農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリューション)、②販売支援ソリューション(農作物の販売先(食品関連事業者・JA)の業務をICTで軽減するシステム、気象データなどを利用した販売支援サービス、等)、③経営支援ソリューション(農業向け会計ソフト、農業法人向け会計支援サービス、気象データなどを利用した経営支援サービス、等)、④精密農業(GPSガイダンスシステム、自動操舵、車両型ロボットシステム(農機の無人運転機を実現するシステム)、衛星情報を活用したシステム、等)、⑤農業用ドローン ソリューション(ドローンを利用した農薬散布サービス、モニタリングサービス、等(ドローンのハードウェアは含まない))、⑥農業用ロボット(設備型ロボット(接ぎ木ロボット等)、マニピュレータ型ロボット(収穫ロボット等)、アシスト型ロボット(パワーアシストスーツ等))である。

1.市場概況

2017年度のスマート農業の国内市場規模は128億9,000万円で、2018年度は146億8,800万円を見込む。2016~2017年度は農業クラウド・複合環境制御装置・畜産向け生産支援ソリューションなどの栽培支援ソリューションが牽引し、2018年度以降は、気象予測と連携した販売支援ソリューションや経営支援ソリューションが拡大するとみる。

スマート農業は、従来からの農業技術と情報通信技術を連携させることで、更なる生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指すものである。農林水産省の農林水産業・地域の活力創造プランでは、「異業種連携による他業種に蓄積された技術・知見の活用、ロボット技術やICTを活用したスマート農業の推進、新たな品種や技術の開発・普及、知的財産の総合的な活用、生産・流通システムの高度化等により、農業にイノベーションを起こす」としている。

2.注目トピック

データ共有化の実現によりスマート農業普及へ
スマート農業が普及するためには、農業機械における情報通信プロトコルの共通化と標準化が重要である。様々なデータを共有・活用できる「農業データ連携基盤(WAGRI)」が2019年4月から本格運用が始まり、スマート農業に関するあらゆるデータの共有化を実現する。また、2018年11月に準天頂衛星システムが4機体制になることから、高精度の測位情報が入手できる。測位情報は他の衛星の画像、気象、地形、地質などの多様なデータと組み合わせることでデータ精度の向上が期待され、利用範囲の拡大が見込まれる。

また農業は、栽培品目や地域性によって大きく異なるため、それぞれの企業が持っている技術・強みを活かした連携が必要になる。今後、スマート農業展開企業、農業資材メーカー、また地場のIT企業などの異業種が連携することで国内農業が抱えている課題を解決することで、急速に拡大する世界の食市場についても、日本版スマート農業で貢献できるものと考える。

3.将来展望

スマート農業の国内市場規模は2024年度には387億円まで拡大すると予測する。
今後は、農業データ連携基盤(WAGRI)の本格運用や、4機体制となる準天頂衛星システムが契機となり、販売支援ソリューションや経営支援ソリューションが拡大するほか、農機の無人運転を実現するシステムが登場すると見られることから、精密農業や農業用ドローンソリューション(ドローンを利用した農薬散布サービス、モニタリングサービス等)が拡大し、市場全体を牽引すると考える。

調査概要


■調査期間: 2018年7月~9月
■調査対象: スマート農業参入事業者、農業法人<水稲/農園芸(野菜・果樹・花き)/酪農・畜産>、関連団体・協会、管轄官庁等
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用

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[矢野経済研究所]
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