国内の清涼飲料の受託製造市場調査 

2018年12月17日

矢野経済研究所は、国内の清涼飲料の受託製造市場を調査し、エリア別、製品カテゴリー別の動向、参入企業動向、将来展望等を明らかにした。

<飲料受託製造市場とは>
本調査における飲料受託製造市場とは、飲料メーカー(ブランドオーナー)から委託された受託製造企業(パッカー)の飲料生産を対象とし、パッカーの自社ブランド生産分を除く。

<市場に含まれる商品・サービス>
炭酸飲料、果実飲料等、茶系飲料、コーヒー飲料等、ミネラルウォーター類、豆乳類、野菜飲料、スポーツ・機能性飲料、乳性飲料、その他清涼飲料

1.市場概況

飲料受託製造市場規模は受託製造事業者売上高ベースで、2016年度が前年度比97.7%の5,623億円と縮小したものの、2017年度は同102.3%の5,755億円と拡大に転じた。なお、2015年度の大幅減は、一部の大手飲料メーカー(ブランドオーナー)の取引方式が従来の製品売上方式から加工賃売上方式に変更されたことによるところが大きく、同ブランドオーナー企業と取引のある飲料受託製造企業(以下、パッカー)の多くが軒並み売上を落としたことに起因している。

​現下、ブランドオーナーは内製化を進めており、自社工場での製造を優先的に行っていくため、飲料市場に多少の増減があったとしても製造数量に大きな差異は出てこない。一方、パッカー企業においては、ブランドオーナー各社が内製化比率を高めている現状において、必ずしも飲料市場拡大が受託製造市場の拡大に直結するとはいえず、反対に市場が縮小したからといって受託製造市場が縮小するとも一概にはいえない。しかしながら、飲料市場の増減の調整役を担う受託製造は、飲料市場の拡大や縮小、ブランドオーナーの内製化比率の上昇などにより、その収益性に大きく影響するのが実情である。

2.注目トピック

パッカー各社は小ロット対応が不可欠に
飲料受託製造は、積極的に設備投資を行うことで大手ブランドオーナーからの受託を中心に事業を行うパッカー企業と、大手ブランドオーナーの受託は行わずに地元企業や自治体などの受託を中心に事業を行うパッカー企業に大別される。後者はもともとの受託数量が少ないことから必然的に小ロットへの対応を強化していかなければならないが、前者においても、より緻密な需給計画を立てるブランドオーナーが、今まで以上に発注を細分化する傾向であることから、小ロットへの対応は不可欠になってきている。

また、大手ブランドオーナーがアセプティック充填(無菌充填)設備を積極的に導入していることで、パッカー企業においても取引を継続するには導入を検討せざるを得ず、コスト負担はむしろ高いといえる。一方で、PET(ペット)容器においてもブランドオーナーが積極的な投資を行わない充填方法である、ホットパックやレトルト対応の商品、また缶容器の商品を請け負うことでブランドオーナーの不足分を補完する動きも見られる。

3.将来展望

飲料市場の長期縮小傾向とブランドオーナー各社の内製化の動きが進んでいくなか、パッカー企業を取り巻く環境は今まで以上に厳しくなり、総受託数量も中長期的には減少していくものとみる。こういった厳しい環境の中で生き残っていくためには、今まで以上にきめ細かな対応が必要になってくるものと考える。パッカー企業各社とも「多品種少量生産」の方向であるが、現状では製造ラインの組み替え時間の短縮などといった対応には限界があるため、将来的には効率的な製造ラインを構築する意味で、更なる改善が進んでいくことが予想される。

また、パッカー企業においては顧客企業(ブランドオーナー)とパートナーシップを組んで商品開発から販売戦略まで提案することや、大手飲料メーカーにも匹敵する製造コストの低減化の実現、大手飲料メーカーではなく地元のPB(プライベートブランド)商品の製造受託の積極的な展開、固形充填などの特殊な技術を用いた製造など、自社の明確な強みを訴求し、提案できることが、今後の成長戦略の1つの方向性になるものと考える。

調査概要


■調査期間: 2018年9月~11月
■調査対象: 飲料受託製造企業(パッカー)、飲料メーカー(ブランドオーナー)等
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[矢野経済研究所]
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