レーザー照明世界市場に関する調査 

2019年03月29日

矢野経済研究所は、照明用途に使用される半導体レーザーを調査し、世界市場規模、製品アプリケーション別トレンド、関連企業動向、将来展望を明らかにした。

<レーザー照明とは>
本調査におけるレーザー照明とは、照明用途に使用される端面発光の可視光半導体レーザー(レーザーダイオード:LD)を指す。レーザーポインターや墨出し器(回転レーザーレベラーを含む視覚的に水平、平行状況を確認する精密測定装置)、車載用ヘッドライト、家庭用・業務用や映画館で利用されるプロジェクター、リアプロジェクションテレビ、液晶テレビ用のバックライト、家庭用・業務用照明器具、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの各機器(アプリケーション)に搭載される。

<レーザー照明世界市場とは>
本調査におけるレーザー照明世界市場規模は、半導体レーザーモジュールの数量および金額をメーカー出荷ベースで算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
可視光半導体レーザーモジュール

1.市場概況

半導体レーザー(レーザーダイオード:LD)は直進性や単色性、高光密度、可干渉性などに優れ、これまで光ディスクやレーザープリンタ、各種センサなど様々な用途に使われてきた。
照明用途の半導体レーザーについてもそうした特長を生かし、レーザーポインターや建築用途等に使われる墨出し器、プロジェクターなどでの普及が進んでいるものの、その他の機器(アプリケーション)では本格的な採用には至っていない。2018年のレーザー照明世界市場規模(メーカー出荷ベース)を505万1千モジュール、4,469億円と推計した。現状、本格的な採用は半導体レーザーの直進性を活かした機器開発が中心となっており、出力の安定性や精度、制御しやすさ等を生かしたアプリケーションでの採用事例は未だ少ない。

レーザーポインターとしては、自身の存在を周囲に知らせる意味での活用事例もあり、例えば、ロンドンでは自転車に装着することで他の自動車や自転車、歩行者から認識されやすくなることに加え、道路での安全性向上にも寄与している。また、半導体レーザー搭載モデルのプロジェクターは、会議室備え付けなどシステムユースが大半を占めており、光束5,000lm以上の高輝度モデルを中心に好評である。これは半導体レーザーの特長である直進性やフォーカスフリー(ピント合わせ不要)、小型、長寿命、即応性等がシステムユースのプロジェクターのニーズに合致しているからである。

2.注目トピック

HMD光源での半導体レーザー採用が進展
株式会社QDレーザは、2018年に網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA® Display」を発表した。RGB半導体レーザーを3色搭載したヘッドマウントディスプレイ(HMD)の一般発売は世界初の事例である。直近では、網膜走査技術への展開を進めている企業も新たに登場しつつあり、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の製品は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)や国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の国家プロジェクトを通じて、網膜走査型の技術を培い、メタマテリアルミラーを使用した網膜投影手法を用いて、広視野角かつ広いアイボックスを伴っている。

HMD光源としてLEDを採用しているとハーフミラーが使用されることが多いが、その場合視野角が狭まり、コンパクト化が難しい。一方、光源に半導体レーザーを採用した網膜走査方式はそうした視野角の狭まりは無く、今後の性能向上によって、よりコンパクト化を期待することができる方式となっている。用途に合わせ、部材選定を含めた製品設計をしているため、半導体レーザーとLEDの採用は、そうした要因により決定づけられる。また、半導体レーザーを採用した場合、製品は高価となるため、製品の高機能化・高級化を目的とした差別化のために選択される可能性がある。

3.将来展望

今後、半導体レーザーの特長を生かした開発が進み、車載用ヘッドライトやテレビ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、HMD、家庭用・業務用照明器具などの機器において、本格的な採用が進展する見込みである。2025年のレーザー照明世界市場規模(メーカー出荷ベース)は5,871万1千モジュール、2兆1,198億円に大幅な成長を遂げると予測する。
アプリケーション(機器)別に市場をみると、半導体レーザーの発光効率が改善されることで、高輝度・高出力用途が多い業務用照明器具へ採用が進むこと、省エネルギー効果も優れた半導体レーザーが、IoTやAIを組み合わせたスマートライティングなどが普及する家庭用照明器具でもLED光源を代替するなど、照明器具の構成比が高まると予測する。次いで、レーザーポインターや墨出し器などのその他機器、低輝度モデルへの普及が進むプロジェクターなどが続く見通しである。

調査概要


■調査期間: 2018年8月~2019年2月
■調査対象: 半導体レーザーメーカー、材料メーカー、光源・その他部材メーカー、各機器メーカー他
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[矢野経済研究所]
 マイページ TOP