野村総合研究所(NRI)は、2018年度までの国内を中心とするICT(情報通信技術)主要4市場について、動向分析と規模の予測を行いました。

「デバイス市場」6分野、「ネットワーク市場」5分野、「プラットフォーム市場」4分野、「コンテンツ配信市場」5分野についての主要なトレンドと、予測結果です。

<各市場のトレンドの詳細>

【デバイス市場】
■スマートフォン・タブレット端末への集約が進む一方、ウェアラブル端末等の新たな市場創出へ


全世界の携帯電話(スマートフォンを含む)端末の販売台数は、新興国での急速な普及と、一人複数台の契約増加によって、2013年度の18億台から2018年度には21 億台に成長すると予測されます。スマートフォンの世界は、端末のみならず、OS(基本ソフト)、アプリ、クラウドを利用した新たなサービスなどを含めた総合的な戦いとなっており、アップルやグーグルといったシリコンバレーを代表する企業が主導権を握っています。スマートフォンの開発が遅れた国内メーカーは、従来の携帯電話で築き上げた優位性を保持できず、苦境に追い込まれています。加えて、スマートフォンは、デジタルカメラや車載情報端末など、多くの専用端末市場を取り込みつつあります。

タブレット・電子書籍専用端末市場は、既存のノートパソコン、デスクトップパソコンの代替、および電子書籍端末としての需要増により、全世界での販売台数が、2013年度の2億台から2018年度には2.9 億台に成長すると予測されます。特に、市場の成長は、主に中国、インド、東南アジア、東欧、中南米、中東、アフリカ等で経済成長の波に乗った国にけん引されます。スマートフォン同様に、アップル、グーグル、マイクロソフトなど、米国企業が先導していますが、中国メーカーも低価格端末を開発して、積極的に参入しています。

ウェアラブル端末は、2018年度には国内で年間475万台の販売が見込まれており、携帯電話やタブレット端末と異なる、新たな端末市場の形成に注目が集まっています。メガネ型のスマートグラス、腕時計型のスマートウオッチ腕や服などに身につけ健康管理を行うモバイルヘルスケア端末、など、さまざまな端末がこれからも登場します。

【ネットワーク市場】
■規模縮小が続く中、海外や新領域への展開による新たな市場開拓を迫られる


固定ブロードバンド回線市場、法人ネットワーク市場、携帯電話回線市場を合計した、狭義のネットワーク市場規模は、2013年度の9兆1,500億円から、2018年度には9兆100億円へと、約1,400億円の減少が見込まれます。一方、端末の増加などでトラヒック(通信量)が増大し、ネットワークの負荷が高まることへの対策として、投資の必要性は高まるジレンマに直面します。国内の通信事業者は、縮小する既存市場への投資と、成長を求めた海外市場への展開、電力などの社会インフラやモノ(機械)同士が通信するM2Mといった新たな市場の開拓との間で、難しいかじ取りを要求されます。

【プラットフォーム市場】
■リアルとネットの融合が進み、クラウドの普及で個人のECビジネス参入も積極化


BtoC EC 市場は、2013 年度の11 兆5,000 億円から年率10%以上の高成長が続き、2018 年度には20 兆8,000億円になると予測されます。食品、ファッション、医薬品の各分野が市場の成長をけん引して、従来のリアル店舗に誘導するO2O※1がさらに進化して、リアル店舗・ネットを問わずに購入が行われるオムニチャネル※2へと、マーケティング手法に変化が生じます。また、リアル店舗を見た後ネットで購入するショールーミング※3の普及により、家電量販店などの小売店は、ネット対応をさらに充実させる必要性に迫られます。

また、クラウドを用いて、個人向けに安価でECサイトを構築できるサービスが登場しており、今までは消費者であった個人が提供者となるECビジネスの普及は、新たな市場を生む可能性を秘めています。

※1O2O(Online to Offline):ネットを利用してリアル店舗に誘導するマーケティング手法
※2オムニチャネル:ネット、リアル店舗を問わずに商品・サービスを販売する手法
※3ショールーミング:リアル店舗で商品確認を行った上で、ネットで購入する購買行動

【コンテンツ市場】
■スマートフォン・タブレット端末の普及とともにグローバル企業が台頭し、国内企業は端末・プラットフォームの選択やサービス差別化に左右される


スマートフォン上の代表的な課金型コンテンツであるソーシャルゲームの市場規模は、2018年度は8,300億円に拡大すると見込まれます。従来のゲーム事業者は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「Play Station」や任天堂の「ニンテンドー DS」といった専用端末で培ったノウハウ・経営資源を、スマートフォンにシフトしてきています。ゲーム専用端末市場においては、SCEの「PlayStation4」など次世代機の登場により、一時的に市場の活性化が期待されますが、中長期的には市場規模が縮小するとみられます。

新聞・雑誌も合わせた電子書籍の市場規模は、2013年度の1,729億円から、2018年度には約5,000億円まで成長すると予測されます。一方で、スマートフォン・タブレット端末の世界で主役であるアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフト等のグローバル企業の日本市場への参入が進み、生活者にとって選択の幅が広がる一方、コンテンツ事業者はどの端末・プラットフォームを選択するか、どのようなサービスによって競合他社との差別化を図り、顧客を獲得するかといった課題に悩まされることになります。

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