PwC スポーツ産業調査2017 ‐破壊的変化の大波にさらされるスポーツ産業‐ 

2017年12月26日
PwCコンサルティング合同会社は、「PwC スポツ産業調査2017 ‐破壊的変化の大波にさらされるスポーツ産業‐」を発表しました。PwC スイスが世界のスポーツ産業を調査したレポートに、ここ数年内にスポーツのビッグイベントを控えている日本市場に対する洞察を加えたものです。

本調査の結果、生活習慣の変化や情報通信技術の進歩により、スポーツ産業は一大変革期にあることが分かりました。かつて支配的だったテレビで生放送を視聴するというスタイルは次第に減り、インターネット経由でのオンデマンド配信やモバイル端末での視聴といった新しい動きが急速に広がっています。メガスポーツイベントの放映権市場には、世界的な巨大IT企業が本格的に参入し、自社のプラットフォームからの会員向け配信や広告収入を稼ぐビジネスに乗り出しています。デジタル化の進展により、業界の勢力図は大きく変わりつつあります。一方、ミレニアル世代など若い消費者層を中心に、eスポーツやVR・AR技術の活用に期待が集まっている実態も明らかになりました。

成長鈍化見込むも、サッカー、eスポーツ、バスケットボールには期待

今回の調査では、「放送およびメディア企業」「リーグおよびクラブ」「国際競技連盟」「広告代理店およびスポーツブランド」などの関係者189人に対するヒアリングを実施しました。今後3~5年の成長率を尋ねたところ、あらゆる分野の回答者が低下を予測していると回答しました【図1】。特に悲観的な見通しを示しているのは放送関係者で、今後3~5年で30%以上成長率が低下すると予測しています。これはOTT(オンライン視聴)の台頭や、メディア消費のトレンドがモバイルやオンデマンドへ移行していることに起因すると考えられます。

しかし、依然としてスポーツ業界は今後3~5年にわたって平均6.4%の成長率が予測されています。サッカー、オンラインでプロスポーツの勝敗を競うeスポーツ、バスケットボールは、成長分野として期待されています。オリンピック大会については、今後の見通しの不透明さを指摘する声もあり、国際スポーツの世界で地位を失いつつあると見られます。

若い消費者層の行動変化が放映権市場に影響をもたらす

スポーツ業界が最も懸念すべき脅威として、若い消費者層の行動変化が挙げられます【図2】。デジタルメディアの普及やスポーツコンテンツへのアクセスの多様化により、若い視聴者を意識した新しい形態のスポーツ体験が増加しており、テレビの生放送は衰退が避けられないと考えられます。

こうした脅威は、メディア放映権市場に大きな影響を与えると見られます。スポーツコンテンツの権利所有者がソーシャルメディアなどの独自チャンネルを開設してファンと直接的に関係を構築する、大手IT企業が放映権市場に本格参入するなど、今後も大きな変化が起こることが予測されます。

図2 Q.スポーツ業界が最も懸念すべき脅威は?

1 若い消費者の行動変化 57%
2 競技団体への不信感 47%
3 他のエンターテインメント形式(スポーツ以外)からの競争圧力 29%
4 技術変化の速度 27%
5 八百長行為の影響 22%

ウェアラブル・センサー技術はデータ規制や管理が課題に

ウェアラブル・センサー技術の本格的な活用は、医学データを用いたケガの防止など、スポーツ産業の分野においても増えてきています。しかし、今回の調査では、多くの回答者がこうした技術はあくまでファンを取り込むための仕掛けであり、業界を革命的に変えるものとは考えていないことが明らかになりました。さらに、回答者の3分の1が、アスリートのデータ所有権やプライバシー問題への対策を講じない限り、こうした技術を完全に統制し商業利用することはできないと考えています【図3】。ウェアラブル・センサー技術により発信されるデータの規制や管理が課題となっていることが明らかになりました。

図3 Q.ウェアラブルが今後直面する最も重要な課題は?

ファンとの繋がり(放送およびメディア) 40%
プライバシー、個人情報、データ保護 30%
データの権利の所有と管理 28%

VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の活用進む

VRの普及がスポーツの視聴体験を高めると考える回答者は全体の68%【図4】であり、VRやARが従来型のテレビ放映に影響を及ぼすことは必至と見なす回答者は過半数に及びました。VRやAR活用によるソリューションは、イベント体験、放映方法、スポンサーシップ、トレーニングなど、今後もスポーツ業界のさまざまな分野で活用が進むと想定されます。

一方で、こうした技術は中期的には消費活動に大きく貢献するものの、あくまで従来型の視聴方法を補完するものであり、スポーツメディア全体を揺るがすような影響はないと考えられます。VRやARの活用が進んでも、スポーツ観戦におけるファン同士の交流など、リアルな実体験が失われることはないでしょう。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[PwC]
 マイページ TOP