がん分子標的薬の世界市場動向 

2017年08月25日
市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは、がん分子標的薬の世界の開発の現状と将来動向に関する調査を行い、このほどその結果をまとめました。

2001年に慢性骨髄性白血病の画期的治療薬としてグリベックが登場して以降、がんの進行・転移に関与する細胞内分子をターゲットとする治療薬(分子標的薬)の開発が活発に行われてきました。

これまでに低分子化合物のがん分子標的薬として51種類の製品が米国で承認されており、国内でも37製品が上市しています。これに伴って世界市場、日本市場ともに拡大を続けており、今後は複数の大型品の特許切れが控えているものの、ファーストインクラスの治療薬の上市、ブロックバスターとなる製品の増加により、市場成長が予測されます。

開発パイプラインの特徴としては、ファーストインクラスの開発に加えて、ベストインクラスを狙った開発参入も激化しています。また、治療の有効性向上、あるいは臨床試験の成功率向上などを目的として、免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬を組み合せた併用療法の開発が盛んに行われています。

このような背景を踏まえ、本調査では、キナーゼ阻害剤やエピジェネティクス医薬品など低分子化合物によるがん分子標的薬について、世界の製薬企業における開発状況と市場動向に焦点を当てて調査を行いました。

本調査結果は、市場調査レポート「がん分子標的薬の開発現状と将来展望 ~キナーゼ阻害剤など低分子医薬品の開発パイプラインと市場動向~」に詳しく掲載しています。

【調査結果のポイント】

■ 本調査の調査対象:低分子化合物の分子標的薬
分子標的薬は、疾患の発症に関連する細胞外あるいは細胞内のタンパク質などの分子を標的として治療を行うことを目的とした薬剤のことをいう。
分子標的薬の種類として、従来の創薬手法である低分子化合物と近年の医薬品開発の中心となっている抗体医薬品の2つに分類されることが多い。
本調査では、がんを対象領域とする低分子化合物の分子標的薬を調査対象としている。

■ 現在までに世界で51製品が上市
現在までに世界で51 製品が上市されている。このうち日本で承認されているのは37 製品となっている。

・部位別の適応疾患数をみると、血液がんが19製品、肺がんが11 製品、腎臓が8 製品の順で多い。血液がんの開発が最も進んでいる理由の一つとしては、固形がんと比較してがんのドライバー遺伝子変異の数がある程度限られていることが考えられる。

・米国および日本で承認された製品数の年次推移
2001 年にグリベックが承認されて以降、米国では2009 年頃までは年間2~4 製品程度が上市されていたが、2011~2012 年を境に承認製品数が増加傾向にある。2012 年と2015 年にはそれぞれ8 製品が承認されている。
一方、日本では、2007 年までは上市製品数は年間0~1 製品に留まっていたが、2008 年以降、徐々に増加傾向にある。2014 年は6 製品、2015 年には4 製品、2016 年は7 製品が承認されている。

■ 市場動向
→ 2016年の市場規模は309億米ドル(約3兆3,680億円)
→ 2025年には682億米ドル(約7兆4,350億円)に拡大すると予測

世界市場
2020 年前後に特許失効となる大型品が相次ぐため市場成長率は減速するものの、ファーストインクラスの薬剤の上市や適応拡大により2025 年には約682 億米ドルに拡大すると予測した。
また、他のキナーゼ阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用療法が市場拡大に寄与する可能性がある。

国内市場
がん分子標的治療薬の国内市場は世界市場と同様の推移を示し、2025 年には国内市場は6,870 億円に達すると推計した。日本では特に抗がん剤でジェネリックへの切り替えは急速に進まない状況にあるため、特許切れの影響は欧米ほど受けないとみられる。


【調査概要】
調査対象
 ・海外製薬企業17社・ベンチャー企業50社   計67社
 ・国内製薬企業9社・ベンチャー企業4社   計13社
調査方法:
 ・オープンデータ収集、文献調査
 ・訪問ヒアリング
 ・第21 回 日本がん分子標的治療学会学術集会での情報収集
調査期間:2017 年4月~2017 年7月

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[シード・プランニング]
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