リチウムイオン電池主要4部材の世界市場調査 

2018年11月09日

矢野経済研究所は、リチウムイオン電池主要4部材の世界市場を調査し、民生小型機器用や車載用などのLiBセル用途や主要4部材の出荷動向、国別の設備投資や部材価格の動向などを明らかにした。

<リチウムイオン電池主要4部材とは>
スマートフォンなどの情報通信機器の電源やEV、PHEV等の動力源として搭載されるリチウムイオン電池は、十数点以上の部材点数及び材料から構成されるが、本調査では、正極材、負極材、電解液(電解質)、セパレーターの主要4部材を対象とする。
なお、本調査結果は全て米ドルベースで算出しており、2013年は1USD=97.8円、1116.97ウォン、6.16元、0.75EUR、2014年は1USD=105.9円、1152.93ウォン、6.14元、0.75EUR、2015年は1USD=121.0円、1129.94ウォン、6.23元、0.90EUR、2016年は1USD=108.8円、1207.70ウォン、6.64元、0.94EUR、2017年以降は1USD=111.5円、1178.60ウォン、6.79元、0.88EURで換算した。

<市場に含まれる商品・サービス>
正極材、負極材、電解液・電解質、セパレーター

1.市場概況

2017年のリチウムイオン電池(以下、LiB)主要4部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比149.0%の147億1,505万4,000ドルと推計した。(図表1参照)LiB市場は2016年に車載用LiBが民生小型機器用LiBを容量ベースで上回り、以降、市場成長の牽引役は車載用LiBにシフトしている。
車載用LiB市場は牽引役である中国市場において、2017年はEV補助金枠縮小の影響による成長率の鈍化が見られるも、2019年以降は新エネルギー車(NEV)規制が開始されるため、中国xEV市場の成長は今後も続くと予測する。また、環境規制強化が進む欧州でも2019年~2020年にかけて自動車メーカーによるxEV新車種の上市が予定されており、2018年以降も引き続き車載用LiBセル向け材料需要は拡大する見通しである。一方、民生小型機器用LiBセル向けでは、これまで牽引役となっていたスマートフォン向けLiBセルが2017年で成長が頭打ちを迎えたものの、電動工具、電動バイク等のパワー系LiBセルが成長を維持しており、2018年以降も穏やかな成長率での推移が続くと予測する。以上を背景として、2018年の同世界市場規模は同124.0%の182億4,750万ドルの見込みである。

2.注目トピック

優位維持の中国の先にある2つの選択肢 日韓勢は今後、徐々にプレゼンス向上の可能性
2017年のLiB主要4部材世界市場(メーカー出荷数量ベース)においても、引き続き中国メーカーが存在感を維持している。正極材66.4%、負極材77.3%、電解液69.9%、セパレーター54.8%と、正極材、負極材、電解液に続きセパレーターも2017年に5割超えとなり、いずれの部材においても国別シェアがトップであった。(表1参照)
但し、2020年以降は中国国内の成長が停滞時期を迎える可能性も考えられる。中国上位LiBセルメーカーではCATL(Contemporary Amperex Technology Co.,Ltd.)の存在感が抜き出ており、日本や欧州のOEMへのサプライチェーンを有する同社の成長が今後のLiB主要4部材市場における中国プレゼンスのカギを握ると見られる。中国のLiB部材メーカーの中には民生小型機器用LiBセル向けを中心に既に海外LiBセルメーカーへの供給を行っているプレーヤーも存在する。車載用LiBセル向けは一部に留まると見られるが、積極的なアプローチを推進する動きもあり、これらの取組みが今後の中国メーカーの優位性を展望する上でもう1つのポイントになると考える。

日本はセパレーターが引き続き30%台を維持しているものの、他の3部材は10数%~20数%台のままとなっている。(図1参照)
日系LiB部材メーカーが中国の車載用LiBセル市場向けに積極的に部材を供給する動きはあまり見られず、中国LiB部材メーカーが引き続きメインで供給を行っている。一部には中国大手LiBセルメーカーの低価格要求が厳しく、サプライチェーン入りを辞退するような動きもあった。日系LiB部材メーカーの多くは引き続き日本や韓国のLiBセルメーカー向け供給をメインとしており、2019年~2020年にかけて立ち上がりが予定されている日本や欧州のOEMによる電動化プロジェクトの動きを受けて、今後徐々にプレゼンス向上の可能性もあると考える。

韓国においては引き続き韓国LiBセルメーカー向けがメインとなっており、これまでは民生小型機器用LiBセル向けの供給比率が高いケースが多く見られたが、徐々に車載用LiBセル向け供給に注力する動きが強まっている印象を受ける。加えて鉄鋼大手のPOSCOが新規参入でありながら、車載用LiBセル向け正極材、負極材への積極的な投資を推進している。これらの動きはやはり韓国LiBセルメーカー向けの供給を対象としたものになっていると見られるが、日系LiB部材メーカー同様に日本や欧州のOEMによる電動化プロジェクトを追い風に、今後徐々にプレゼンスを向上させていく可能性があると考える。

3.将来展望

2019年からの中国の新エネルギー車(NEV)規制の開始、並びに2019年~2020年にかけての日本や欧州のOEMによる電動化プロジェクトを牽引役として、車載用LiBセル向け材料需要の拡大は今後も続く見通しである。
2020年のLiB主要4部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は約280億ドルの規模になると予測する。但し、2020年以降については中国の市場経済化が進む中、高容量EVは一定の需要が残るものの、低容量EVや中容量EV、PHEVがメインストリームとなる可能性がある。また、今後の各国政府や地方政策の動向に依存するが、長期的にみるとHEV主役のストーリーの可能性も考えられる。上記を踏まえるとLiB部材によっては2020年以降、需給アンバランスによる設備稼働状況の悪化や、過剰在庫発生の可能性が考えられ、LiB部材メーカー各社はxEV市場の変化を見据えた複数のシナリオを準備しておくことがより重要になると考える。

調査概要


調査期間: 2018年4月~9月
調査対象: リチウムイオン電池部材メーカー(日本、韓国、中国、欧州等)
調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[矢野経済研究所]
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