自動運転システムの世界市場に関する調査 

2019年05月08日

矢野経済研究所は、ADAS/自動運転システムの世界市場の調査を実施し、市場概況や採用動向、個別メーカーの事業戦略を明らかにし、2030年までの新車におけるADAS/自動運転システムの世界搭載台数を予測した。

<自動運転システムとは>
自動運転システムはSAE(米国自動車技術協会)が自動化のレベルを0~5までの6段階で分類している。
レベル1は運転支援機能であり、現在普及の進んでいるADAS(先進運転支援システム)が該当する。車両の周辺の状況をセンサが検知し、衝突事故を回避する自動ブレーキ(AEB)、前方車両に追従するオートクルーズコントロール(ACC)などがある。
レベル2は部分的な自動化であり、操舵や加減速のうち複数の運転支援を実行し、他の動的運転作業はドライバーが行う。
レベル3は条件付自動化であり、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、緊急時においてはドライバーが介入する。
レベル4については高度自動運転としており、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、ドライバーはいかなる状況においても運転作業に関与しない。ただし、自動運転のできる場所や走行条件(天候や時間、運行ルート、車速)は限定される。
レベル5は完全自動運転であり、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、自動運転の場所、走行条件についての制約もない。

レベル1とレベル2についてはドライバーによる監視が必要で、事故責任もドライバーにあるため運転支援とされ、レベル3以上についてはドライバーの監視は必要ないことから自動運転とされる。なお、本調査における世界市場規模は乗用車および車両重量3.5t以下の商用車の新車に搭載される自動運転システムの搭載台数ベースで算出している。

<市場に含まれる商品・サービス>
先進運転支援システム(レベル1、レベル2/2+)、自動運転システム(レベル3、レベル4、レベル5)

1.市場概況

2018年のADAS(先進運転支援システム)/自動運転システムの世界搭載台数は、前年比24.3%増の2,385万4,000台であった。

自動運転のレベル別に見ると、日米欧の新車に自動ブレーキや衝突警報などで標準化が進んでいるADASのレベル1が2,114万8,000台で世界市場全体の88.7%を占める。ステアリング操舵とブレーキ/アクセルを同時に自動化するレベル2の運転支援システムは270万4,000台となり、2018年から日欧の自動車メーカーを中心に高級車から中級車まで搭載車種が広がっている。現状はLKS(車線維持支援)とACC(車間距離制御)を組み合わせて車線中央を自動走行する機能の搭載が中心であるが、高級車においてはドライバーの指示器操作によるオートレーンチェンジ(自動車線変更)や、ドライバーが降車後にキーやスマートフォンで遠隔操作して自動駐車することのできるリモートパーキングなどが実用化されている。

さらに、2017年からはドライバーモニタリングシステム(運転者監視システム、以下DMS)、高精度地図(HDマップ)を使った高速道路限定の手放し運転(ハンズオフ)機能の採用がゼネラル・モーターズ(GM)で始まっている。本調査ではDMSによるハンズオフ機能や、V2X(車車間・路車間通信)と地図情報を利用してロバスト(堅牢)性を高めたものをレベル2+と定義して市場規模の算出を行っているが、GMの当該システムはレベル2+に相当する。2018年において量産しているのはGMの1車種のみであるために搭載台数は2,000台であるが、2020年に向けて日米中市場の高級車を中心に拡大すると予測する。

2.注目トピック

2023年にレベル2/レベル2+の先進運転支援システムがレベル1の搭載台数を上回る
2020年以降に最も成長するのがレベル2の運転支援システムである。レベル2とレベル2+を合計した世界搭載台数は、2020年に595万8,000台、2023年にはレベル1の搭載台数を上回り3,295万3,190台に増加すると予測する。

2020年以降は販売台数の多い中級車を中心にレベル2の搭載が日米欧で進み、中国でも市場が立ち上がる。さらにレベル2+については、2018年において量産しているのはGMの1車種のみであるが、今後、高級車ではDMSによる高速道路限定のハンズオフ機能の採用が拡大し、V2Xと地図情報を利用したシステムの採用も始まることから、2020年に27万3,000台、2023年に508万4,190台に増加すると予測する。

3.将来展望

2030年におけるADAS/自動運転システムの世界搭載台数は8,390万5,000台に達すると予測する。

自動運転のレベル別に見ると、レベル1は2025年以降日米欧中からASEAN諸国、インドなどの新興国に需要の中心が移り、2025年の2,060万台から縮小して2030年の搭載台数は1,274万5,000台を予測する。レベル2とレベル2+の合計では2025年に4,357万4,000台、2030年は5,213万台に達し、最も大きく成長するものとみる。2025年以降はV2Xの普及が日米欧中で進むことから、大部分の車両がレベル2またはレベル2+の運転支援システムを搭載し、2030年のレベル2+の搭載台数はレベル2を上回り3,110万6,000台に成長する。
レベル3の自動運転システムについては、2025年以降レベル3とレベル4のシステムコスト差が縮小することから、乗用車(自家用車)でも高級車を中心にレベル3からレベル4(高速道路限定)への切替が進み、2030年は373万台の横這いにとどまるものと考える。

レベル4以上の自動運転システムについては、日米欧中において2020年からカーシェア/ライドシェア、公共交通、物流などにおいて自動運転車の試験的利用が始まり、2023~2024年頃からの本格的な実用期間を経て、2025年以降に拡大するとみる。特に中国においてはICV(Intelligent Connected Vehicle)の技術開発と普及を政府が後押ししており、V2Xを利用した自動運転車のテスト走行がスマートシティ実証試験区で始まっている。このため、中国におけるレベル4の自動運転システムの需要は2025年以降に伸びると予測する。レベル4/5の世界搭載台数は、2025年には179万5,600台であるが、2030年は商用車に加えて乗用車(自家用車)での搭載も期待できることから、1,530万台に成長すると考える。

調査概要


■調査期間: 2018年10月~2019年3月
■調査対象: 自動車メーカー、カーエレクトロニクスメーカー、半導体メーカー、センサメーカー等
■調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

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[矢野経済研究所]
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