2014年度 メセナ活動実態調査 

2014年12月03日
企業メセナ協議会が、企業・企業財団のメセナ(芸術・文化振興による社会創造)活動の最新の動向について調査した結果がまとまりました。

企業・企業財団によるメセナ活動の総件数は 3,000 件以上、メセナ活動費総額は約 956 億円にのぼり、企業の文化による社会創造が発展していることが読み取れます。内訳としては、「企業のメセナ活動実態調査」(1,612 社対象)に回答した 420 社のうち、333 社がメセナ活動を実施(活動総件数2,928件、メセナ活動費総額194億142万円)。「企業財団のメセナ活動実態調査」(277団体対象)への回答財団は 189 団体(活動総件数 693 件、年間支出総額 645 億 9,540 万円)。※1

なお今年度、企業メセナの実態により迫るため、調査方法の変更を行いました。従来のアンケート調査とともに協議会が把握するさまざまな公開資料・データを加えて、企業・企業財団のメセナ活動費総額が956億2,697万円であることがわかりました。※2

また、新たにメセナに関する事例研究もスタートし、来年 3 月には本実態調査の報告書とともに、さまざまなテーマでメセナの現状・成果を分析する研究レポートも発表する予定です。

※1 本調査は、2014 年 7~8 月にアンケート調査として実施したものです(平成 26 年度文化庁「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」委託事業)。
※2 企業財団の公開資料および協議会事業によって得られたデータ等を活用しました。

【調査結果】

◆各社独自の経営資源により、多彩なメセナプログラムを展開
企業のメセナ活動のうち、企業自ら主催する「自主企画・運営」は 475 件(28.5%)、「他団体への支援・提供」は1,159 件(69.5%)。「他団体への支援・提供」の内訳としては、約 8 割の活動で資金による支援が行われているとともに、各社のネットワークを活かした全国的な取り組みや、施設や遊休不動産をアーティストや市民に提供する取り組みなど、「マンパワー」(14.4%)、「場所」(7.8%)、「製品・サービス」(7.6%)、「技術・ノウハウ」(5.4%)といった豊富な経営資源や専門性を活かした、各社独自のプログラムが展開されています。

◆メセナ活動への社員参画が進む
今年度新たな設問として社員参画の状況を尋ねたところ、年間の延べ社員参加者数が「100 人以上」と回答した企業が 45 社ありました。メセナの推進・継続にとって社内理解は重要な要素のひとつ。スタッフとして参加した社員が「日ごろの営業先である学校で子どもたちに歓迎され、本業以外で社会と関わる体験に感激。社員の意識改革、自社への誇りの醸成に寄与している」(電気機器/兵庫)といった影響が企業にもフィードバックされています。

◆あらゆる文化領域を支えるメセナ
企業がメセナを行う目的の第一位は「芸術・文化支援のため」(280 社/84.0%)。重視した点としては、「芸術・文化全般の振興」(72.5%)、「地域文化の振興」(57.5%)、「青少年への芸術・文化教育」(36.0%)があげられました。
対象となるジャンルは「音楽」(662 件/39.7%)、「美術」(411 件/24.6%)が上位を占めますが、複数の分野にまたがる芸術祭などの「複合芸術」(131 件/7.8%)や、「祭り・郷土芸能」(121 件/7.2%)、「芸能」(120 件/7.2%)も存在感を見せるとともに、近年本調査の対象ジャンルに新しく加わった「食文化」「ファッション・デザイン」「マンガ・アニメ」など、幅広い領域に広がっています。また、企業の最新技術を活かして文化財の新しい保存・活用を行うなど、芸術文化の支援と技術力の向上に相乗効果で取り組む例もあります。

◆芸術・文化を通じて社会のさまざまな課題に取り組む
メセナを行う目的の第二位は「芸術・文化による社会課題解決等の取り組みのため」(193社/57.9%)。重視した点としては、「まちづくり・地域活性化」(58.0%)、「次世代育成・社会教育」(55.9%)、「社会福祉」(29.0%)が上位にあげられ、アーティスト・アート NPO 等との協働による子どもや学生向けの教育プログラムや、ハンディのある人たちの鑑賞・創作を支援する活動などが見られました。また、東日本大震災から 3 年がたち、岩手・宮城・福島でのメセナ活動 57 件のうち震災後に始まった活動が約 6 割、その大半が東北以外に本社を持つ企業であるなど、現在も東北とのつながりが継続されていることがうかがえます。

◆20 年以上継続の活動多数、長年にわたり芸術・文化の基盤を支える
プログラムの継続年別に見ると、20 年以上続くメセナプログラムは 287 件(23.6%)あり、企業メセナが芸術・文化の基盤形成の一翼を担ってきたことがうかがえます。地域の伝統芸能・祭りを約半世紀にわたり支え続ける企業や、独自に編纂した文芸誌が何世代にもわたり親しまれ、活動自体が地域の文化となっている例も。また、長年にわたるアーティスト支援や顕彰事業が実を結び、「何度も賞に応募し続けた若手作家が大賞を受賞された」(電気・ガス/大阪)、「支援している作家が海外都市で初個展を開催する際に協賛でき、とても意義深い」(化学/東京)などのコメントから、作家とのつながりを大切に、一過性ではないサポートを行っている企業の様子もうかがえました。

◆近年はアジア、欧州など海外でも
メセナ活動実施企業の約 1/5 にあたる 58 社が、アジア・欧州を中心とする海外でのメセナ活動を実施しています。中でもその活動目的について回答のあった 47 社のうち、36 社(76.5%)が現地での事業展開を行っており、「国際交流・相互理解」(53.1%)、「現地の芸術・文化の振興」(42.5%)などを重視してメセナ活動を行っています。本業の技術を活かしてアジアや欧州の美術館と協働事業を行う企業や、国内でのメセナプログラムが発展し国外のアーティスト・アート NPO までネットワークを広げている企業、アフリカの子供たちの読書環境を支え続ける企業など、さまざまな都市において、メセナを通じた現地社会との関係を築いています。


【調査の概要】
「企業によるメセナ活動実態調査」
・調査対象:日本国内企業 約 1,612 社・・・直近5年間における「メセナ活動実態調査」(対象:全上場企業、非上場売上高上位 300 社、および企業メセナ協議会会員企業、当協議会顕彰事業「メセナアワード」応募企業等)への回答企業 約 1300 社、および、同調査対象外企業のうち、協議会調べ企業 約 400 社。
・調査内容:2013 年度(2013 年 4 月 1 日~2014 年 3 月 31 日)のメセナ活動実施状況

「企業財団によるメセナ活動実態調査」
・調査対象:事業内容に芸術文化(支援)活動を含む企業財団・公益信託など約 277 団体。
 ※企業本体の出捐だけでなく企業オーナー個人が拠出している財団・公益信託も含む。
・実施期間:2013 年度の活動 ※年度は各財団の事業年度に順ずる。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[企業メセナ協議会]
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