在宅医療と介護の連携推進に関する実態調査 

2017年06月29日
エス・エム・エスは、CBnewsと共同で、「在宅医療と介護の連携推進に関する実態調査」を実施しました。

調査は、当社が運営するケアマネジャー向けコミュニティサイト「ケアマネドットコム」と、CBnewsが運営する医療・介護の総合情報サイト「CBnews」にて実施し、介護側であるケアマネジャー*1(以下「ケアマネ」)と医療関係者*2、それぞれの立場から現状と課題について回答していただきました。

*1 ケアマネ有効回答数:538(「ケアマネジャー」とは、介護が必要な人が適切なサービスを利用できるように支援する専門職)
*2 医療関係者有効回答数:302(内訳:病院勤務医54、在宅医13、看護師68、薬剤師35、医療事務38、事務長・経営者94)

【調査の背景】

厚生労働省社会保障審議会介護保険部会などにおいて、在宅医療・介護の連携等の推進のための意見交換や議論が行われています。2018年度には介護・診療報酬同時改定を控え世間の関心が高まるなか、介護側の立場であるケアマネと医療関係者それぞれに対し、意識の相違点などについて調査しました。

【調査サマリー】

・連携の課題について、ケアマネは「人によって連携の取りやすさに違いがある」、医療関係者は「職種間の専門性の理解が乏しい」が最多となった。介護側と医療側、それぞれの役割や専門性への理解度が人によって異なる可能性と、生活支援優先とする介護側と治療優先とする医療側での立脚点の違いからか、課題認識の差があることがうかがえる

・連携が特に必要と思われる場面は共通して「病院の入院・退院時」。在宅と医療機関を行き来する際には双方が密な連携を必要としている可能性がある

・自治体や業界団体の支援が十分かどうかについて、「はい」と回答した人が少ない点は共通しているものの、ケアマネは「どちらともいえない」、医療関係者は「いいえ」が最多となり意識の違いが見られた。普段接している行政機関が異なるためか、行政に対する期待度の違いがあると思われる

・具体的に望む支援はともに「医療・介護関係者の情報共有の支援」が最多

・最も連携が取りにくい相手はケアマネの7割以上が「医師」、医療関係者は「ケアマネジャー」が最多となった。ケアマネの医師に対する苦手意識といった心理的な理由があることもうかがえる

・もっと活躍してほしい職種は、ケアマネは「病院勤務医」、医療関係者は「ケアマネジャー」が最多

・医療と介護、どちら側からの支援をより期待するかについて、共通して「介護側からの支援」に比べ「医療側からの支援」のほうが多かった。双方が「医療が源流である」と認識している可能性がある

 今回の調査により、在宅医療・介護連携に関して、介護側と医療側の双方の意識の違いや課題が浮き彫りとなりました。特に、最も連携が取りにくい相手についてケアマネは「医師」、医療関係者は「ケアマネジャー」と、キーパーソンといえる職業を回答しています。在宅医療・介護連携をより一層推進していくためには、この課題を解決することが重要と思われます。一方で、課題については、介護・医療ともに互いの能力のばらつきに不安を感じていることが共通しており、双方の立脚点を理解し合うことが連携推進に求められていることも明らかとなりました。

【調査概要(抜粋)】

Q1. 在宅医療・介護連携を進める上で、課題と感じていることは何ですか?(複数回答)
調査結果1.ケアマネは「人によって連携の取りやすさに違いがある」が最多となり、医療関係者は半数以上が「職種間の専門性の理解が乏しい」と回答

ケアマネ、医療関係者で課題認識に違いがあることがわかった。特に、ケアマネは医療側が人によって連携が取りやすい場合とそうでない場合があることをあげており、医療側にケアマネの役割や専門性が十分に浸透していない可能性があると思われる。医療側は、お互いの職種の専門性への理解が乏しいことをあげており、QOL*3や自立支援といった生活支援を優先する介護側と治療優先とする医療側とで、互いの立脚点による認識の違いが浮き彫りとなった。
*3 QOL(Quality Of Life):生活の質。人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送っているか、ということを尺度としてとらえる概念

Q2. 医療・介護連携が特に必要と思われる場面は、どの場面だと思いますか?(複数回答)
調査結果2.ケアマネ、医療関係者ともに「病院の入院・退院時」。次いで多かったのはケアマネが「自宅などでの看取り・ケア」であるのに対し、医療関係者は「介護施設の入所時・退所時」だった

ケアマネ、医療関係者ともに「病院の入院・退院時」が最多となり、在宅と医療機関を行き来する際には双方が密な連携を必要としていることがわかった。次いで多かったのが、ケアマネは「自宅などでの看取り・ケア」であるのに対し、医療関係者は「介護施設の入所時・退所時」となっており、ケアマネとの意識の違いが見られた。

Q3. 在宅医療・介護連携に関して、自治体や業界団体の支援は十分にあると思いますか?
調査結果3.ケアマネの4割、医療関係者の6割が「いいえ」と回答

「はい」と回答した人が少ない点は共通しているものの、ケアマネは「どちらともいえない」、医療関係者は「いいえ」が最多となり意識の違いが見られた。普段接している行政機関が都道府県と市区町村で異なり、接触する時間の長さも違うため、それぞれの行政の対応力や期待度の高さの違いが反映されたとも考えられる。

Q4. 在宅医療・介護連携を進める上で、具体的にどんな支援があればいいと思いますか?(複数回答)
調査結果4.ケアマネ、医療関係者ともに「医療・介護関係者の情報共有の支援」が最多

介護側・医療側ともに連携のきっかけやサービス情報提供といったバックアップを求めていることがうかがえる。

Q5.医療(または介護)関係者と連携を取る際、どんな相手との関わりが最も連携を取りにくいですか?
調査結果5.ケアマネは圧倒的多数で「医師」、医療関係者は「ケアマネジャー」が最多

ケアマネは「医師」が圧倒的多数となり、自由回答には「アポを取りたくても取れない。取っても忙しすぎて会えないこともある」や「近寄りがたい」「怖い」といった心理的な理由も多く見られた。医療関係者は「ケアマネジャー」「介護事業所の管理者」の順に多く、自由回答には「知識が乏しいことが多く明確に状況を説明できない」「普段接点がないので何をしているのかが分かりづらい」など、ケアマネの医療知識が十分でないことを指摘する一方で、ケアマネの役割や専門性を十分に理解していないとも取れるコメントが見られた。

Q6. 在宅医療・介護連携を進める上で、もっと活躍してほしいと思う職種は何ですか?(複数回答)
調査結果6.ケアマネは「病院勤務医」、医療関係者は「ケアマネジャー」が最多

ケアマネは「病院勤務医」が最多となり、次点の「診療所などの医師」と合わせると4割弱が「医師」と回答。理由として「医療・介護連携の要は医師であるから」「入院前や退院後の生活についてもっと目を向けてほしい」など、医師の存在が重要であるといった声もありつつも、在宅生活への理解を求める声も見られた。一方、医療関係者は半数近くが「ケアマネジャー」と回答。理由として「これから一番必要な人たちだから」「利用者の身近な存在だから」など、今後在宅医療が進むにつれケアマネが欠かせない役割だと考えていることがうかがえる。

Q7.在宅医療・介護連携を進める上で、介護側と医療側、どちらの支援をより期待していますか?
調査結果7.ケアマネ、医療関係者ともに「医療側からの支援」に期待

ケアマネ、医療関係者ともに「介護側からの支援」よりも「医療側からの支援」を期待している人が多いことがわかった。介護側だけでなく医療関係者も医療側からの支援を期待していることが印象的だが、双方が「医療が源流である」と認識していることが反映されたとも思われる。業界・関連団体の規模など鑑みても、医療側が介護側に歩み寄り、連携推進を後押ししていくことが近道とも考えられる。


【調査概要】
対象:「ケアマネドットコム」に会員登録しているケアマネおよび「CBnews」に会員登録している医療関係者
期間:ケアマネドットコム 2017年4月19日~4月28日、CBnews 2017年5月8日~5月29日
方法:インターネット調査
有効回答数:ケアマネ538名、医療関係者302名

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