2017年9月 混雑環境におけるスマートフォン動画視聴品質調査 

2017年09月06日
ICT総研は、混雑環境におけるスマートフォン動画視聴品質調査の結果をまとめた。当社では定期的に、さまざまなシーンでスマートフォンの通信速度、つながりやすさの調査を実施してきたが、今回の調査は、同時接続によるネットワーク混雑状況における動画視聴品質および通信速度の実態を把握することを目的とした。

 ネットワークが混雑している状況という点を重視すべく、東京、名古屋、大阪の主要な待ち合わせ場所30地点を測定地点とし、測定時間を昼の混雑時間帯(11:30~13:30)、夕方の混雑時間帯(17:00~19:00)に限定した。測定の際は、1事業者あたり10台の端末を同時に接続した。
 
 調査対象は、NTTドコモ、au (KDDI)、ソフトバンクのMNO 3事業者および楽天モバイル、OCNモバイルONE、IIJmio、mineo、BIGLOBE SIMのMVNO 5事業者とし、各社のSIMをiPhone7に挿す形とした。調査に使った動画は、当社が調査用に作成したもの(4Kの解像度で120秒間)であり、通信速度については通信速度測定アプリ「RBB SPEED TEST」を利用した。調査期間は、8月3日から17日まで。

【調査結果サマリー】

~ 混雑した場所で動画は快適に視聴できるのか? ~
■ 再生中に動画が停止した割合は、MNO平均2.0%に対し、MVNO平均は5.2%。
■ 動画のダウンロード所要時間は、MNO平均6.2秒に対し、MVNO平均は33.5秒。
■ 下り速度 中央値は、MNO平均12.5Mbpsに対し、MVNOは2.3Mbpsと大きな差。
■ 下り速度 中央値エリア別では、東京、大阪はソフトバンクが優位。名古屋はドコモ優位。

【調査結果】

■ 再生中に動画が停止した割合は、MNO平均2.0%に対し、MVNO平均は5.2%。
 動画視聴品質の実態については、「動画再生可否割合」、「動画再生停止時間割合」、「動画再生開始待機時間」、「動画ダウンロード所要時間」の4つの指標で結果をまとめた。調査の結果、「動画再生可否割合」については、MNO 3事業者は全ての地点、全ての端末で動画の再生に成功し、動画再生成功率100%を記録した。一方で、MVNO 5事業者は、mineoが動画再生成功率100%を記録したものの、OCNモバイルONEが成功率83%に留まったことなどが影響し、平均96.0%となった。

 次に、動画再生ボタンを押してから実際に動画の再生が開始されるまでの待機時間と、動画再生中に停止していた時間を「動画再生停止時間」と定義し、全体に占めるその割合を調べた。すると、MNO 3事業者は平均2.0%であったのに対し、MVNO 5事業者は5.2%と約2.6倍を記録した。こちらも、MNO 3事業者間では差が見られないが、MVNOでは、OCNモバイルONEが8.4%、BIGLOBE 5.4%、IIJmio 5.1%など、事業者によって差が見られた。

■ 動画のダウンロード所要時間は、MNO平均6.2秒に対し、MVNO平均は33.5秒。
 次に、動画再生ボタンを押してから動画が実際に再生開始するまでの所要秒数を、「動画再生開始待機時間」として示した。この結果、MNO 3事業者の平均が2.4秒であるのに対し、MVNO 5事業者の平均は5.7秒と、約2.4倍の差が見られた。MVNOの中では、mineo (3.8 秒)、IIJmio (4.6秒)が、比較的良好なスコアを記録している。

 最後に、実際に動画再生が開始されてから、ダウンロードバーが完了の位置まで移動するまでの所要秒数を「動画ダウンロード所要時間」として示した。この結果、MNO 3事業者の平均が6.2秒であるのに対し、MVNO 5事業者の平均は33.5秒と大きな差がついた。特にMVNOでは、BIGLOBEが56.4秒、OCNモバイルONEが49.7秒など、事業者ごとの差が目立った。

 ちなみに、「動画再生停止時間割合」、「動画再生開始待機時間」、「動画ダウンロード所要時間」については、集計の都合上、再生不可だったものを除外して計算しているため、MVNOの実態はこの結果よりもさらに悪いと推定される。

 上記のとおり4つの指標で見た動画視聴品質の実態を、東京、名古屋、大阪の各エリア別に見ても、MNOの優位は変わらない。MNO 3事業者の中では大きな差は見られないが、東京エリアでは、4つの指標いずれもトップであるソフトバンクがやや優位である。名古屋、大阪については、4つの指標いずれもトップである事業者はないため、MNO 3事業者が拮抗している状態と言えそうだ。ソフトバンクは、1基地局あたりの収容ユーザー数を増やすことで、混雑時の実効速度を改善する「Massive MIMO」サービスを1年前より開始しており、東京での好結果は、この影響を受けた可能性がある。

 MVNO 5事業者の中では、OCNモバイルONEの東京での「動画再生開始待機時間」、「動画ダウンロード所要時間」のスコアが目立って悪く、全体の結果に影響している。

■ 下り速度 中央値は、MNO平均12.5Mbpsに対し、MVNOは2.3Mbpsと大きな差。
 次に、通信速度を測定した。この結果、下り(ダウンロード)の通信速度は、MNO 3事業者の平均が12.5Mbpsであるのに対し、MVNO 5事業者の平均は2.3Mbpsと、明確な差が見られた。2016年9月に、都内100地点でMNO 3事業者を対象に通信速度調査をした際には、3事業者の下り通信速度は平均49.7Mbpsと、50Mbpsに迫る結果であった。今回の調査で下り通信速度が約1/4になったのは、やはり混雑時間帯に限定したことと、1事業者あたり10台同時接続したという条件の厳しさの影響だと考えられる。

■ 下り速度 中央値エリア別では、東京、大阪はソフトバンクが優位。名古屋はドコモ優位。
 下りの通信速度をエリア別に見ると、スコアが総じて高いMNO 3事業者の中でも、東京エリア、大阪エリアでは、特にソフトバンクが優位、名古屋エリアではNTTドコモが優位となった。MVNOでは、BIGLOBEが大阪エリアで6.6Mbpsと、他のMVNOと比べて良好な結果を記録している。

 上りの通信速度については、MNO 3社平均 5.3Mbpsに対して、MVNO 5社平均が6.3Mbpsと、MVNOが上回る結果となった。混雑時間帯のMVNOでは、上り通信速度が下り通信速度を大きく上回る結果が頻発するが、その実態を表す結果となっている。

 今回の調査ではMNO 3事業者、MVNO 5事業者を対象としたが、動画視聴品質についても、通信速度についても、MNOとMVNOで結果に大きな差異が見られた。もともと人通りの多い主要な待ち合わせ場所を調査地点とし、混雑時間帯に限定している上に、さらに1事業者あたり10台同時に接続しているため、特にMVNOには過酷な条件だったと考えられる。主に料金の割安さを背景に、MVNO市場は右肩上がりに拡大しているが、ネットワーク品質という点では、やはりMNOの利点は確実にあると言えるだろう。

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