アニメ産業レポート2018 サマリー 

2018年12月10日

日本動画協会は、2018年度版「アニメ産業レポート」を発売。「アニメ産業レポート」は、アニメ産業の調査及び統計・分析を行いその調査結果を内外に広く発信することを目的に、2009年より刊行しております。

調査結果サマリー


2017年も108.0%アップ最高値更新、海外収入増により初の2兆円突破

初の2兆円突破、アニメ産業市場2兆1,527億円をジャンル別に見ると、伸びたのはテレビ(100.9%)、配信(113%)、ライブ(116%)、逆に映画(61.7%)、ビデオ(97.1%)、商品化権(93.0%)、音楽(91.6%)、遊興(95.4%)の5ジャンルがマイナスとなったが、全体で大きく伸びたのは海外収入によるもの(129.6%)

日本のアニメ産業市場初の2兆円突破

2017年は昨年の統計数値に誤差があったため初めて2兆円の大台を突破した年となった[図表1]。8年連続売上増、5年連続最高値更新も達成したアニメ産業市場2兆1,527億円をジャンル別に見ると昨年より伸びたのは、テレビ(100.9%)、配信(113%)、ライブ(116%)、海外(129.6%)であるのに対し、映画(61.7%)、ビデオ(97.1%)、商品化権(93.0%)、音楽(91.6%)、遊興(95.4%)の5ジャンルがマイナスとなった。それを大きく補ったのが海外(129.6%)であるが、今回で10周年を迎えたアニメ産業レポートが刊行された当時と比べるとこれらジャンルを盛衰が明らかになる。

10年前(2007年)との現在比ではテレビは115.7%だが、2015年をピークとして横ばい状態。映画は193.4%で年々上昇しつつある。ビデオは59.9%と明確な下降トレンド。配信は551%と大上昇トレンド。商品化は87.6%で2014年をピークとして徐々に下降しているが、スマホゲーム(パッケージゲームは商品化に含まれている)やデジタル商品化など、統計値外の領域も仮に含めるとかなりの上昇トレンドとなることが予測される。音楽は99.2%で2009年をピークとしながらその後横ばい状況。ビデオのことを考えるとパッケージ商品の領域としては驚異的な推移である。海外は比226.6%、2000年代中盤に一度ピークを迎え、その後大幅に縮小を見せたものの、2015年から急激に上昇、最大のジャンルとなった。遊興は9年前に生まれたジャンルで現在比175.9%、2014年にピークを迎えたが、その後緩やかに下降トレンドに入る。ライブエンタテイメントは4年前誕生で251%という急速な上昇トレンドとなっている。

2016 年〜2017 年アニメ産業界トピックス

〈接近する国内市場と海外市場〉
国内外の市場対比を見ると、2015年から急激に数字を伸ばした海外市場が国内を追い越す寸前であるということが分かる[図表2]。それに対し、国内市場は2014年をピークとして3年連続で後退しているのは、主に商品化権と遊興といった金額的に大きな市場の売上減のためであるが、先に述べたように、未統計値であるスマホゲームやデジタル商品化の加算が可能であれば、おそらくはプラスに転じているものの、現有数値だと海外頼みの感が拭えない。
国内の市場減を補って余りある海外市場の成長は大歓迎だが、政治状況によってビジネスの様相が一変する「チャイナリスク」や、米国配信プラットフォームによる流通独占の危険といった懸念要因も多く、自主流通網を持たない日本に取っては海外売上に多くを依拠するのは正直怖い面がある。また、毎年史上最高値を更新し続けているにも関わらず、アニメ業界(実際に製作・制作に携わっている業界)に高揚感がないのも、海外売上の多くを占める
と予測される配信やスマホゲームに関して恩恵にあずかる機会が少ないといった事情もあるだろう。日本アニメ産業界、業界の両方にとっても、ウィンドウが大きく組み替わりつつある国内市場の早期の安定化が望まれるところである。

〈アニメ由来のスマホゲーム市場〉
昨年も述べたアニメとゲームにおける産業連携、シナジーは今後のアニメビジネスにおける一大テーマである。
2015年から2017年にかけて、まさしく昇竜の如き躍進を遂げたアニプレックスの動きはアニメ産業に新たなウィンドウが誕生しつつあることを告げている。それがアニメ由来のスマホゲームであり(後先を問わずアニメ化されたゲームが対象)、既に無視できない規模になっていると予測されるものの、現段階でそのデータを確定するにはまだ至っていない。国内では数千億、海外でも同等の域に達するという見方もあるが、アニメ原作でゲーム化された場合の市場数値はアニメサイドで補足可能なので数値がアニメ市場に反映されるのに対し、逆の場合は類推が難しいため、アニメサイドとしてはゲームの業界団体や業界誌などが算出する売上データが登場するのを待ち、その中からアニメ化されたものを抽出するのが現段階ではベストではないかと考えている。

〈アニメの制作分数と「働き方改革」〉
2017年、日本のアニメ産業の“主食”とも言えるテレビアニメ制作分数は116,409分となり、5年連続で11万分台となった[図表3]。ほぼ5年に渡って横ばい状況となったテレビアニメの制作分数の中にはNetflixに見られるようなネットオリジナルアニメは含まれていないが、その種のネットオリジナルアニメもそれほど本数が多いわけではない。重ねて、地デジ以後、劇場アニメへのシフトも見られたが、こちらもここ3年間ほど横ばい状況となっている。したがって、テレビアニメを中心とする日本の総体のアニメ制作分数もそれほど伸びていないものと思われる(昨年言及したショートアニメの増加はひと段落した模様)。そうした状況下で、現在かなりの勢いで推進されている働き方改革によってアニメ産業界も否応もなく生産性を引き上げなければならない状況になりつつある。どのスタジオにおいても確実に作業時間を短縮せざるを得ない中において、現在と同様の制作レベルを維持するためには、デジタル技術を活用した制作手法の見直しによる生産性アップしか道は残されていない。「働き方改革」はイコール「デジタル改革」でもあり、これが成し遂げられた時に日本のアニメ業界は次のステージに移行できるはずである。

〈オトナアニメの国、日本〉
2015年にキッズ・ファミリーアニメ(KF)と深夜帯アニメ=オトナアニメの比率が逆転したが、その傾向は定着しつつあるように見える[図表4]。日本は世界に先駆けてオトナアニメが出現した国であるが、世界中で増えつつあるオトナアニメ世代にとって、そのニーズを万全に満たせるのは現時点で日本のアニメしかないと言える。この点について非常に大きなアドバンテージを持っていると自覚すべきであろう。海外ではテレビ放送枠がなく、ビデオ市場も崩壊していた状況にあって、日本のオトナアニメは海賊版サイトを賑わすだけの存在であったのが、3~4年前からはそのネットによってマネタイズできるビジネスとなった。最後尾から一挙に最前列へ押し上げられたオトナアニメの可能性は、そのまま日本のアニメの未来でもある。一方で懸念されるのがキッズアニメの減少傾向である。特に近年の新作においてそれが顕著である。2001年には36,337分あったキッズ新作アニメが2016年には14,368分となり、2017年には遂に一万分を切り9,790分となってしまった。キッズ作品の場合、サザエさんやドラえもんのように継続する作品が主流だが、そのように長年に渡ってロングラン出来る確率は非常に少ない。そのためには数多くの新作の挑戦が必要である。キッズアニメ減少の要因は少子化を基本として、今まで頂点に君臨していたテレビメディアの揺らぎがあるが、そろそろネットメディア発の大ヒットキッズアニメが出てきてもいいタイミングなのかも知れない。

〈上昇傾向にある制作費〉
制作に関しては上昇傾向に入っているのは、日本動画協会がアニメスタジオに対して行っているアンケートの回答でも確認できた。
「制作本数増加により、出資元の制作予算も上昇傾向にある」
「アニメーション制作において、ここ数年、予算に対してハイクオリティの内容を求められる傾向にあったが、徐々に制作予算のアップが認められるようになっている」
「他業界からの新規参入者が増えたせいか、制作単価が上昇気配にある」
といった声であるが、その大きな要因のひとつは今までの制作費では求められるクオリティに対応できないということがある。それだけアニメのクオリティアップに対する要望が大きいということであるが、現行の制作費では如何ともし難いという認知が進んでいる証拠であろう。ただし、先ほど述べた働き方改革という局面の中で、生産性アップに対する取り組みが遅れた場合、クオリティアップに付いて行けず脱落するスタジオが出てくる可能性もある。一方で、国内のゲーム事業者やNetflix、Amazon、中国のプレーヤーなどの参入で一部作品の制作費が上がっていと聞くが、こちらは通常のクオリティ対応とは桁が違うレベルの制作費となっているようだ。いずれにせよ、今まで日本製アニメが海外で競争力を維持できた大きな要因のひとつに安い制作費があったのは確かである。市場の水準からすると、かなり格安であったが、これからは制作費上昇傾向の中でいかに競争力を維持できるかということがポイントになるであろう。

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[日本動画協会]
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